細胞密度の計算のしかたをゆっくり考える
細胞を血球計算盤で数えた結果に「10の4乗」を掛けると、細胞密度 [cells/ml] に換算できます。なぜ「10の4乗」なのか?を、順を追ってゆっくり考えてみましょう。
この記事を読んでほしい人はこんな人
細胞密度の計算方法をよく理解している人には、この記事は役に立ちません。
この記事は、血球計算盤の使い方を教わる時に、
「はい、数えてみて!いくつだった?160?じゃあ、それに10の4乗かけて、1.6×10の6乗 cells/ml ね。わかった?」
とかサクサク説明されて、
「え?え?ついていけない~」
ってなっちゃった人向けに書いています。
なぜ血球計算盤を使うのか?
本題に入る前に、
そもそも、なぜ血球計算盤が必要なのか?
を考えてみましょう。
細胞の密度は、
「1ミリリットルの中に細胞がいくつあるか」
で表します。
単位は “cells/ml”。
「セルズ パー ミリリットル」って読みます。
そして、実際の細胞の密度って、
6.8 × 10の5乗 cells/ml とか、
3.1 × 10の6乗 cells/ml とか、
ぐらいな感じが多いと思います。
でも、
10の5乗 = 10万
10の6乗 = 100万
・・・
こんなにたくさん数えるなんてムリ・・・
では、どうするか?
細胞を、とても狭い空間に閉じ込めればいいんですね。
とても狭い空間の中なら、細胞は少ししかいませんから、
「これなら数えられるかも!」
って思えるわけです。
つまり、あの
血球計算盤(けっきゅうけいさんばん)
っていう、憎たらしい小さなガラス製の道具の役目は、
細胞を、
体積が正確に分かっているとても小さな空間
に閉じ込めること。
だと思っとけばいいと思います。
例えば・・・
ある学校にいる子供たちを全部数えるのは大変だけど、ひとつの教室にいる子供たちの数ぐらいなら数えられそうでしょう?そしてその学校にクラスがいくつあるか分かっていれば、ひとクラスにいる子供たちの数にクラスの数をかけて、全校生徒の数がそこそこ正確に分かる、というわけです。
血球計算盤に描かれている四角いマス目が、学校のひとつのクラスだと思ってみてください。
高さは100倍
では、具体的な計算です。
細胞の密度、“cells/ml” は
「1ミリリットルの中に細胞がいくつあるか」
を表すのでした。
では、血球計算盤で数えた細胞の数を、何倍すれば "cells/ml" になるんでしょう?
言い換えると、血球計算盤の中で細胞が閉じ込められている体積を何倍すると、1ミリリットルになるんでしょうか?
1ミリリットルは、
縦 x 横 x 高さ = 10 mm x 10 mm x 10 mm
です。
一方、血球計算盤の表面には、深さ 0.1 mm の「くぼみ」があります。このくぼみにカバーガラスを乗せると、カバーガラスが屋根になって、その下に空間ができます。この空間の高さが、正確に0.1 mmになるわけです。
0.1 mm x 100 = 10 mm
なので、
「高さ」については
「1ミリリットル」は「血球計算盤」の 100倍
というわけです。
縦と横は10倍
次に、血球計算盤の「くぼみ」の部分を顕微鏡で見てみます。
すると、正方形のマス目が見えますね?
細胞を数える時は、くぼみに細胞を流し込んで、このマス目の中にいる細胞を数えます。
このマス目の大きさは、正確に 1 mm x 1 mm なのです。
1 mm x 10 = 10 mm
なので、
「縦」については
「1ミリリットル」は「血球計算盤」の 10倍
「横」についても
「1ミリリットル」は「血球計算盤」の 10倍
というわけです。
全部で10000倍!
まとめると、
血球計算盤の
縦 x 横 x 高さ = 1 mm x 1 mm x 0.1 mm
の空間を、
縦 の方向に 10倍
横 の方向に 10倍
高さ の方向に 100倍
すれば、1ミリリットルになる、というわけです。
10倍 x 10倍 x 100倍 = 10000倍
ですから、
「血球計算盤で数えた細胞の数」 × 10000
= 「1ミリリットルあたりの細胞の数 (cells/ml)」
というわけですね!
10000 にはゼロが4つありますから、
10000倍 = 10の4乗倍
とも書けます。
というわけで、
「血球計算盤で数えた結果に10の4乗を掛けたら、cells/mlになるから!」
とヒトコトで教えられちゃうんですね。
ヒトコトで言うのはとてもカンタンなんですけど・・・
自分で考えてみると、そこそこ時間かかりますよね?
これをヒトコトで言われて、スラっと理解できる人は、実はあまり多くないと思うんですけどね。
まとめ
1ミリリットルは
10 mm x 10 mm x 10 mm
血球計算盤の中の空間は
1 mm x 1 mm x 0.1 mm
10倍 x 10倍 x 100倍 = 10000倍 = 10の4乗倍
だから、血球計算盤で数えた結果に 10の4乗 を掛けると、
cells/ml になる!
というわけですね。