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細胞の核はなぜできたのかを知りたくて、イントロンについての論文を読んでみる(その1)

細胞の核はなぜできたのか?
を知りたくて、論文をひとつ読んでいる。

論文のリンクはこれ(↓)。無料で読める。

アメリカ国立衛生研究所 (NIH) の Eugene V. Koonin 博士らのグループによる論文だ。

論文のタイトルは、
"Remarkable Interkingdom Conservation of Intron Positions and Massive, Lineage-Specific Intron Loss and Gain in Eukaryotic Evolution."
という。

ものすごく意訳しちゃうと、
「真核生物の進化の過程で、
 イントロンの位置は、広く真核生物全体にわたって、驚くほどしっかりと保存されている。
 でも、イントロンの消失と獲得のプロセスには生物の系統ごとに異なった特徴もある。」
っていう感じ?

タイトルに、「保存」って言葉が使われてる。
この「保存」の説明が難しいなぁ・・・と思って、
前回はつい、「保存」について長々と書いてしまった。

あと、タイトルに「イントロン」っていう言葉も入ってる。

遺伝子はタンパク質の設計図だけど、イントロンというのは遺伝子配列の中に入ってる「設計図ではない部分」のことだ。
ちなみに、設計図となる配列は、エキソンという。

真核生物の遺伝子(DNA)がこう、ひとつあるとすると、

100_イントロンとエキソン

エキソンの間に、イントロンがいくつか入っている。

このエキソンとイントロンが混ざったままの状態で、DNAからメッセンジャーRNAへ転写される。

101_DNAからmRNAへの転写

このままだと、正常なタンパク質が作れないんだけど、この長いメッセンジャーRNAから、イントロンが切り取られて、エキソンだけがつながったメッセンジャーRNAができる。

102_イントロンの切り出し

この、完成型のメッセンジャーRNAが、リボソームに送られて、正常なタンパク質ができるんだ。

前回の投稿では、
 遺伝子の配列が保存されてる、とはどういうことか?
について書いたんだけど、

今回紹介したい論文では、配列ではなくて、
 遺伝子の中のイントロンの位置が、真核生物で広く保存されてる
ということが書かれてる。

この論文では、8種類の真核生物(ヒト、ハエ、蚊、線虫、シロイヌナズナという草、マラリア原虫、2種類の酵母)のイントロンを比較してる。

その結果、ヒトのイントロンの24%が、シロイヌナズナのイントロンと、遺伝子内の同じ場所に入っていた、というんだ。
一方で、ヒトのイントロンの位置は、ハエ、蚊、線虫と比較すると、入っている場所が 12% ~ 17% ぐらいしか一致しない。
ヒトは、植物であるシロイヌナズナよりも、動物であるハエ、蚊、線虫に種としてははるかに近い。

103_系統樹

なのに、イントロンについては、シロイヌナズナの方により似ているんだ。

これは驚くべき結果だろう。

ヒトと、種としては遠く離れている草とで、イントロンが似てる。

これは、(途中の詳細な議論をすっ飛ばして結論だけ書くと)
 あらゆる真核生物の共通の祖先の遺伝子にイントロンが入り込んで、
 それらのイントロン達がそのまま現代の真核生物に受け継がれてる。
ということを強く示唆してる。

・・・示唆してる、のはいいけど、
それが、核の誕生とどう関係あるのか?

引き続き読んでいきたい。

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