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ミトコンドリアの祖先は、太古の昔にバクテリアに侵入したバクテリアだった?
ATPは、生命のエネルギー源だ。
僕たち真核生物は、ミトコンドリアでATPを作っている。
ミトコンドリアで何が起きているかを、最近何回かに分けて書いてみた。
ATPが作られる仕組みをざっくりと書いてみたし、
この仕組みがなんでこんなに回りくどいのかも書いてみた。
軽く振り返ってみると、ミトコンドリアの内膜の上には、電子伝達系と、ATP合成酵素があって、
まず、電子伝達系がプロトン(水素イオン)を膜の外に汲み出して、
プロトンが内側へ戻ろうとするエネルギーを使って、ATP合成酵素がATPを作る。
・・・というわけだった。
ところで、僕たちのような真核生物の細胞はミトコンドリアでATPを作るけど、原核生物(バクテリア)にはミトコンドリアがない。
でも、バクテリアだって生き物だから、ATPは必要だ。
どこで、ATPを作っているのだろう?
というか、バクテリアのATP合成酵素はどこにあるのだろう?
実は、バクテリアのATP合成酵素や電子伝達系は、細胞の表面(細胞膜)にある。
まあ、この図はATP合成酵素や電子伝達系を大きく描きすぎだけど、イメージとしてはこんな感じ。
つまりバクテリアは・・・
細胞の外にプロトンを汲み出して、
細胞の中より外の方がプロトンが濃い状態にして、
外から中にプロトンが流れ込んで来る勢いを利用してATPを作っている。
ところで、真核細胞は、細胞の中にミトコンドリアがあって・・・
ミトコンドリアは、膜が二重になっている。
そしてこの、波打った内側の膜(内膜)に、電子伝達系とATP合成酵素がある。
というわけで、真核細胞とバクテリアを、大きさの違いを無視して並べてみると、こうなる。
(実は真核細胞の方が、直径がひとケタ大きいんだけど・・・)
どうだろう?!
違うけど、なんか似てる!!
これはなんだろうか?
これを見て、僕たちは何を思いつくべきなのか?
ポイントは、ミトコンドリアの膜が二重になっているところだ。
どうやったら、膜が二重になる?
今のところ、こう考えられている。
20億年ぐらい前、
あるバクテリアに、
別のバクテリアがこう、
やってきて・・・
中に入っていって・・・
入って行って・・・
プチッとちぎれると・・・
ミトコンドリアのできあがり!!
・・・ってわけだ!
ミトコンドリアの、
内膜は、入ってきたバクテリアの細胞膜で、
外膜は、それを受け入れた方のバクテリアの細胞膜、
だったんだね!
つまり、20億年ほど前、バクテリアに別のバクテリアが入り込み、「共生」という状態になった。
そして、中に入ったバクテリアはエネルギー生産(ATPの合成)に特化するようになり、それを受け入れた大きい方の細胞は自身の表面でATPを作るのをやめてしまった。
この奇跡のような共生関係から真核細胞が生まれて、僕たちの祖先となったらしい。
この驚くべき仮説は、細胞内共生説といって、真核細胞の誕生について今のところ定説になってる。
もちろんこの仮説には、いくつもの根拠がある。
たとえば真核細胞には核があって、核の中にはゲノムDNAが入ってる。
ところで、実はミトコンドリアも内部にゲノムDNAを持っていて、細胞の中で自ら分裂し、増えていく。
自分で増えてくあたりが、いかにも「元バクテリア」っぽい。
その他にも多くの研究成果がこの仮説を裏付けている。
けど、僕は「かたち」に興味があるので、この、
ん?
違うけど・・・
なんか似てるぞ?!
っていう感じが好きなんだな。
そしてこの、
「かたち」から、細胞内共生説が類推できちゃう!
っていうところが、とてもおもしろいと思うんだ。