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力を出すタンパク質、ミオシンの何がそんなにすごいのか?
筋肉の中で力を出しているのは、ミオシンというタンパク質だ。
僕たちの体は細胞でできていて、
筋肉も細胞でできていて、
筋肉の細胞は力を出す。
タンパク質は細胞の部品で、
力を出す細胞には、力を出す部品が必要で、
その部品がミオシンなのだ。
大学院にいた頃、例えばラボの見学に来た年下の学生とかに、
「なんでミオシンの研究をしてるんですか?」
とストレートに聞かれることがよくあった。
そんな時、
「だってミオシンって、タンパク質だけど、分子としてはめっちゃでかいサイズだけど、でも分子だよ?」
「分子が力を出してんだよ?すごくね?」
って感じで必死で説明してたけど、イマイチ伝わった感がなかった・・・
「ミオシンは「エンジン」なんだ!」って伝えればよかったかな。
この「エンジン」ってのは比喩だけど、かなり深い意味での比喩だ。
単に「力を出すなにか」っていう程度の比喩じゃない。
ミオシンはATPのエネルギーを力に変えている。
ATPを分解してADPに変えて、その時に出るエネルギーを力に変えている。
これは、ATPという分子がもつ化学的エネルギーを、力に変えているといってもいい。
分子がもつ化学的エネルギーを力に変える。
人間がこれをやろうとしたら、
ガソリンがもつ化学的エネルギーを力に変える、
「エンジン」
という装置が必要だ。
実用的なレベルで、ひとつの装置の中で分子がもつ化学的なポテンシャルを力に変換しようと思ったら、その分子を燃焼させるしか手がないだろう。
ところがエンジンのサイズときたら!
例えば模型飛行機用のすごく小さいエンジンでも、大人の握りこぶし程のサイズはあるだろう。
でもミオシンは、このエンジンと本質的に同じはたらきを、ひとつの分子の中で完結させているのだ。
すごいポイントはたぶんふたつあって、
まずミオシンがとても小さいということと、
燃焼を伴っていない、ということだろう。
ともかく、とても不思議だ。
そういう不思議さに惹かれて、僕たちは研究してるんだよ、と伝えればよかったかなぁ・・・