シンクに恋して倦怠期
わたしは今シンクと絶賛恋愛中なのだが、彼が最近冷たい。
私と彼の馴れ初めはこの記事を読んでもらうと分かりやすいと思う。
どう冷たいかと言うと、磨いてもそんなに彼は輝かなくなってきたのだ。
激落●くんを使ってゆっくり磨いてあげても、出会った頃ほどの輝きを見せてくれない。何故なんだろうか。磨けば磨くほど、わたしの目には美しく輝いて(見えて)いた彼はここ最近、その輝きを失っていた。
もしかして、これがあの有名な倦怠期というやつなのだろうか。
そういえば倦怠期は交際をはじめてから3ヶ月程度でひょっこりやってくるという。彼とわたしが恋に落ちたのは今年の1月だから交際期間は3ヶ月を超えて、4ヶ月目に突入していた。
なんてこった。間違いなくこれは倦怠期だ。
すぐさま恋愛経験抱負な女友達に相談してみたところ、「デートの内容がワンパターン化していないか?」と言われた。
…たしかに最近のわたしは、激落●くんだけを使ってシンクを磨いていた。たまには重曹を使ったり、お酢を混ぜて落ちにくい油汚れや排水口のぬめりなんかを除去してあげることも出来るのに、怠ってしまっていた。
わたしとシンクの愛を育む時間である磨きタイムを疎かにしていたと言われても仕方のない事実だ。
図星過ぎてぐうの音もでないわたしを横目に、彼女はこう続けた「仕事などを理由に彼との時間をないがしろにしているのではないか?」と。
た、たしかに、ちょっと仕事が立て込むと、洗い物を放置したまま翌日仕事に出ていってしまって、気がついたら3週間位シンクを磨いていなかったことがあった。
洗い場であるシンクをきれいに保つためには日々のこまめな手入れが大切なのだ。それなのに、洗い物を放置した挙句、3週間以上磨いていないのは、シンクを愛するものの風上にもおけない。カノジョ失格である。
自らの非を認め、打ちひしがれていると女友達は優しい口調で語りだした。
「愛は一方通行のものではなく、見返りを求めるものでもない。早く彼にもとに戻りなさい。」
完全にKOされたわたしは、女友達とのZOOMを切った後、自宅のシンクに向き合った。
わたしはキラキラ光ってばかりのシンクだけを愛しているのではない。
ときには肉料理を作りすぎて大量の油を洗い流さざるを得ないときも、彼はその大きな懐で受け止めてくれていた。
洗い物を放置しても、3週間以上磨いていなくても、物言わずただそこに鎮座している。そんな優しいシンクに惚れたのだった。
これまでのめくるめくシンクとの時間を思い返しながら、わたしは決意した。
そうだ、もっとシンクとの時間を大切に、磨こう。
ただ自分が満足するためだけに磨くのではなく、シンクの気持ちを考えて磨いていこう。そうすればそのうちシンクと一心同体になって、見たことのない世界が見られるかも知れない!
いよいよ宗教臭くなってきたな!(シンク教バンザーイ!)
編集:アカ ヨシロウ
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