なんとなく写経をつづけたら、人生観が変わった
小さい頃からなんでも模写することが好きで、気に入った絵や文章をそのまままそっくり書き写して遊んでいました。
そんなわたしがなんちゃって写経を始めたのは、今から5年前、大学生のころ。
写経とは仏教の経典を書写することで、元々はお坊さんの修行の一環や伝承で行われていたものです。一般的に、現代の日本で写経と言えば「般若心経」の書写を指すことが多いようですが、わたしはキリストの名言集「心身の神癒」という本を書き写し始めました。
なぜ仏典を選ばなかったのかというと、教会保育園に通っていたことが大きいと思います。実家は無宗教で信心深さとは程遠い家庭でしたが、私立で勉強も早くから教えてくれる保育園らしいから試しに…という安易な理由で入園させたのだそう。
おかげでわたしは3歳から6歳までほぼ毎日、お祈りをして聖書を読む生活をしていました。なので、仏典より教会っぽい感じが身に馴染んだのかもしれません。
卒園してからのわたしは宗教や経典に触れる機会は皆無でしたが、両親としても娘の教会通いは一瞬のきまぐれだったので、我が子に神様への信仰心を持ってほしいわけでもなかったようです。
そのまま成長して、大学生になったとき、スピリチュアルなゼミを卒論ゼミとは別にほそぼそとやっていたのですが、そこでたまたま目にした本が「心身の神癒」でした。それも内容に感動したとかではなく、読んでもよくわからないからとりあえず書き写せば理解できるかも?と思い立ったのがきっかけでした。
そもそも写経という感覚でやっていなかったので、100円のB6ノートを買って、家にあるボールペンで書き写すことから始めました。このスタイルは今も変わっていません。写経のタイミングは1日の終わり、たいてい就寝直前です。そのまま寝てもいいように、場所はベッドの上。体育座りをしながら、膝にノートと本を載せて書き写しています。
いざ書き始めると、写経は自分と向き合う時間になりました。
本に書いてある内容を理解しようとすると、書くのを嫌がってやめようとする自分がいたり、気がついたら今日1日を振り返って雑念がいっぱい流れてきたり。それでもやめずに書いていると、だんだん心と頭の中が整理されて、頭が冴えるのがわかります。
この不思議な感覚がクセになって、不定期に写経を続けるようになりました。
続けるといっても、思いついたらやる、という程度のもので、3日続けるときもあれば1ヶ月以上間が開くときもあります。
そうやって続けていると、面白いことに日によって字体が変わっていることに気が付きます。更に細かく観察していると、書き写しているときの感情や心の持ちようでも変化していきます。
「今日の字、汚いな……。よしもっときれいに書こう」
きれいに書こうとすると余計に乱れた文字になったりして、その変化もだんだん楽しめるようになりました。
その変化がさらに別の変化になって発見が増えるだろうと思うと、これから先が素直に楽しみになります。
せっかくなので、これまでの経験を踏まえてざっくりやり方をまとめました。
書く内容はなんでもいい
わたしはキリスト教の本でしたが、書くという作業を通じて自分と向き合うことが目的なので、そんなに内容は関係ありません。個人的には淡々とした文章がよいと思います。紀行文や随筆とか、古典もいいかもしれません。
書き方もなんでもいい
一般的な写経は筆と墨を用意したり、最低でも筆ペンを使用することを勧めていますが、大丈夫です。文字がかける紙と鉛筆があれば写経は成り立ちます。お寺さんにお参りするときのように手と口をゆすいで合掌……という儀式もいりません。それこそベットの上で体育座りのままでできちゃいます。
どれだけ間が空いてもいい、続けることが重要
続けることで大なり小なり変化を感じることができるので、ここはとても重要です。でも毎日絶対やるという決まりを作ると続かないので、やりたい時にやるというくらいで十分です。
わたしも1ヶ月以上間が空いたときは、前回までの感覚を思い出したりして楽しんでいますが、その摩擦を感じるのも醍醐味だなあと思っています。
自分のことだけじゃない、色々なことを深く考えるきっかけになる
これが一番大事な気づきだと思っていますが、自分の内面と向き合うと、自然と自分に関わる周囲の人や出来事にも意識を向けるようになります。
そこからまた自分自身の考察へ戻って外側だけの判断ではわからなかった、深い何かを感じることができるような気がします。
こんな風にゆるーく写経を続けて気がついたことは、人生大体でいいということ。ときには深刻に考えてしまうときもあるけれど、大体でも人間生きていけるんだなぁと思うと、足取りが軽くなります。
秋で夜も長くなったことだし、あなたも寝る前になんとなく写経、はじめてみませんか?
編集:円(えん)(https://note.mu/en_ichikawa)