『ずっと男の子だと思ってたんだ』
「ずっと男の子だと思ってたんだ」
今からもう10年近く前になる成人式で、久しぶりに小学校の同級生だった男の子と会ったとき、言われた一言だった。
まずは小学校時代の話をしよう。
小学生のわたしを一言で表すなら、「勝ち気で男勝り」。
授業では誰よりも早く手を挙げて問題に答えることが一日の達成感を支えていたし、給食で残ったパンを一番多く食べることでクラス一の食いしん坊の称号をほしいままにし、帰りの会で発表するクラスに伝えたいことではドッチボールの授業で男子チームに混ざって大暴れしたあげく数人の男子を泣かせて勝ったことを報告して、一部の折り合いの悪い男子が言い返してくるのでまた喧嘩が始まる・・・・・・というハードな小学校生活に全身全霊を注いでいた。
休み時間も授業中も放課後もすべての時間において自己主張が強く、良くも悪くも印象に残りやすい子どもだっただろう。
同じ小学校に通っていた物静かで当時から落ち着いてた弟は、ねぇさんのせいで高学年に絡まれることもあったので迷惑だったと、かなり後で言われたことがある。ブラコンのねぇさんはちょっと悲しかった。
話が脱線したが、つまり小学校の友達が抱くわたしのイメージも、これに大きく違うことはなかっただろう。
わたしは中学入学の時に受験をし、地元から離れた中学校へ通っていた。一貫校だったので高校もエスカレーター式で同じ学校に通い、大学で東京へ上京したので、小学校の友人に会うのは言葉通り小学校卒業以来であった。
だから、性別を間違われていても仕方が無いのかも知れない・・・・・・訳はない。どれだけ男勝りだったとしても普通、6年も同じ学校で過ごした相手の性別を間違えるだろうか。だいたい、わたしの下の名前は「さちこ」なのだ。その時代、「子」がつく名前は女の子だと相場が決まっていたはずだ。
驚きのあまり、わたしは衝撃発言をした相手に「は?」と聞き返した。
相手も自分が発した言葉に混乱しているように見えたが、一生懸命弁明していた。細かくは覚えていないが、「女らしくなっていて驚いたよ・・・・・・」という趣旨の発言をしていたので、小学校のわたしと二十歳のわたしに大きなギャップを感じた末の発言だったようだ。
短髪でズボンばかり履いていた小学生のわたしはなぜ自分は女なのだろう、男の子に生まれたかったと思っていた。だから男女が分かれる授業は女子チームに入ることが許せなかったし、スカートが嫌いだった。
でもその違和感は時間がたてば消えた。大人になるにつれて、はっきりと意識しはじめたのは高校生くらいから。友達がするようにスカートをはいて、女らしさを意識したメイクをするようになった。
その日も母が選んでくれた赤色の振り袖を着て、長い髪を美容室でセットしてもらっていた。二十歳のわたしは正真正銘の女であった。
わたしだけではない。誰もが子どもの頃に同じような違和感を感じたのではないか。
何者でもない自分を少しずつ決めていく。
その過程のむずがゆさを。
だから小学生のわたしは男の子だったのかもしれない。
今になって、成人式で聞いた言葉にすこしだけ納得をするのだ。
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