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植木園子さんと田部井剛さんによる「二台ピアノの夕べ」_2024年12月27日

年末年始は小説「湖面にたゆたう」の執筆に没頭していたため感想を書けていなかったのですが、2024年12月27日に、植木園子さんと田部井剛さんによる「二台ピアノの夕べ」を聴いてきました。

光の洪水のようなミハイル・グリンカ「歌劇 ルスランとリュドミラ 序曲」に続き、2曲目に演奏されたホルスト「ジュピター」。
植木さんによると静岡県では、万葉集にある山部赤人の歌一首「富士の山を望る歌」の、「天地(あめつち)の 分れし時ゆ  神さびて 高く貴き駿河なる(後略)」という詩を、「ジュピター」に乗せて合唱することがあるそう。

3曲目に演奏されたサン=サーンス「組曲 動物の謝肉」は、ソプラノ武藤弘子さんのやさしい朗読をガイドに、様々な動物たちが登場しました。
どれも透明な音色で楽しかった!
とくに5曲めの「かめのじいさま」では、森の奥に広がる透明な水面が見え、その中央にぽっかり浮かんだ丸い岩の上でひなたぼっこをしている、亀の姿が浮かびました。
うっとりと目を閉じている亀のじい様。風がごくごく小さなさざ波を立てる度に光がキラキラと反射するーー。

音楽を聴きながらその風景を眺めていると、子どもの頃にお風呂の中で気が付いた(?)、水面を真横から見たときのごくごくわずかな幅の中には世界が広がっていて、そこで日々物語が生まれているというイメージに心が躍ったことを思い出しました。

来場者にワインなどが振る舞われた和やかな休憩を挟んで、後半はJ.ブラームス「交響曲第1番 Op.68 ハ短調」。
植木さんは少女時代にこの曲に魅了されて以来、弾き続けてきた特別な曲だとおっしゃいました。
年月を重ね、色々な経験をすることで実感をともなって理解が深まるのだと。

慈愛に満ちた音色に包まれながら演奏を聴いていると、第2楽章でステージの奥にある細く縦長の窓から光が射して、二人のピアニストが浮かび上がるのが見えました。
曲の移り変わりに沿うように背の高い針葉樹に日がかげり、第4楽章で再び先ほどよりも強い光がステージを包んだのです。
とてもやさしく、それは美しい体験でした。

壁には曲に合わせて、ゆうきよしなりさんのイラストが投影される演奏会。そして、私には指揮者のイメージが強かった田部井さんの、立体的な演奏にも魅了されました。

写真は、ピアニストの植木園子さんと田部井剛さん、松本記念音楽迎賓館の横田堯さんと♪


【ききみみ日記】
★今回で投稿183回目になりました★
オペラ・クラシック演奏会の感想をUPしています。是非お越しいただけますとうれしいです。
現在未UPの、2023年分もこつこつ追加してまいります。
(2022年10月10日~2023年1月15日まで101回分を毎日投稿していました)


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