コピコ
ここに、コピコという小さなぬいぐるみがいます。コピコは過去に持ち主に捨てられた経験から、人間不信に陥っていました。長い間、梱包用のダンボールに閉じ込められ、孤独と絶望の中で生きてきたのです。
ある日、久しぶりにダンボールを開かれたコピコは、新しい持ち主となる優しい少女、マリの元へとやってきます。彼女はコピコを捨てたり乱暴に扱うこともことなく、ぬいぐるみとしてコピコを大切に扱ってくれました。しかし、コピコの心はまだ傷ついていて、彼女に心を開くことができませんでした。
マリはコピコに特別なプレゼントを用意してくれました。彼女はコピコの心を癒そうと、手作りの小さなクッキーを持ってきました。しかし、コピコはまだ過去の傷を忘れることができず、彼女の善意に対しても心を開けませんでした。
マリは少しがっかりした表情を見せながらも、諦めずにクッキーをコピコの前に置いて去って行きました。その後も、マリは何度かコピコに話しかけようとしましたが、コピコは彼女に対して警戒心を抱いたままでした。
ある日、マリの家に仲良しの男の子、リオが遊びに来ました。リオは初対面のコピコに友好的な態度を装っていましたが、マリがあんまりにもコピコのことを気にかけるので、内心では嫉妬と利己的な気持ちが渦巻いていました。
そこでリオはマリに「コピコなんてただの古びたぬいぐるみだろう?そんなの放っておいて、新しいおもちゃを買ってもらいなよ」と冷酷な言葉を吐き、コピコを傷つけることを計画しました。リオは、コピコがマリに大切にされていることに嫉妬し、コピコを意図的に挑発したのです。
それだけに止まらず、リオはマリの目を盗んでコピコを壊そうとしました。コピコはそれに気づきました。彼は過去の傷を思い出し、やはり人間は裏切るのだなと思いました。
コピコはリオの姿を見て、恐れと怒りが心の中で渦巻きました。そしてコピコはリオに向かって馬乗りになり、怒りを込めてリオにふわふわの拳を叩きつけるのでした。
後日、マリの家にとあるセールスマンがやってきました。セールスマンは上品な態度で接してきましたが、実は自分勝手で冷酷な人でした。セールスマンはコピコを見るなり「これは何だい?古くて汚いものは捨てた方がいいよ」と冷たく言い放ち、コピコを見下す態度を見せました。
そしてセールスマンは、すかさず新しいおもちゃを押し売りし、その商品のすばらしさを熱心にアピールしました。コピコは過去のトラウマから、人間の興味関心は簡単に移り変わると知っていました。
居ても立っても居られなくなったコピコは、セールスマンの整えられた髪の毛をめちゃくちゃに引っ張ってやりました。コピコは怒りと悲しみを込めて、自分が抱える感情をぶつけました。しかし、その行動は一時的な満足感を得るだけで、心の傷は癒えませんでした。
マリは諦めませんでした。彼女は毎日コピコのそばに小さな贈り物を置き、優しく話しかけ続けました。それでもコピコは距離を取ってしまいましたが、彼女の愛情に触れる度に、心の奥底で何かが変わっていくのを感じていました。
それである日、コピコは気まぐれに、小さなお花をつんで持っていくことにしたのです。
マリはコピコが準備した小さなお花を見つけ、嬉しそうに微笑みました。
その微笑みを見たコピコは、自分の心がほんわりと暖かくなるのを感じました。コピコはマリが自分に対して何も求めず、ただ優しく寄り添ってくれることに安心感を抱いたのです。
そんなある日、マリが体調を崩して寝込んでしまいました。コピコは心配して彼女のベッドのそばに座り、寄り添いました。マリは無意識の中でもコピコの手を握ることがありました。コピコがそっと握り返すと、マリが弱々しく微笑みます。コピコは、マリにとって自分が本当に大切な存在であることに今更ながらに気がつきました。
その夜、マリが目を覚ましたときのために、コピコはずっと傍にいることにしました。マリが少しでも元気になることを祈りながら、コピコはふと自分の過去を思い出しました。長い間、孤独で絶望的な気持ちを抱えていた彼が、マリの家で暖かさや愛情を感じられたことが、彼の心を変えるきっかけであったと気づきます。
彼女の熱っぽい手を優しく包み込むと、コピコの胸の中には以前感じたことのない温かな感触が広がりました。マリが苦しそうに眠っている姿を見て、コピコは心が痛みました。彼女が辛い思いをしているのを見るのは、彼にとっても辛いことでした。コピコは自分が何もできないことに悔しさを感じながらも、ただ彼女のそばにいることで彼女を支えようと決心しました。
夜が更けるにつれ、マリの熱は少しずつ下がっていきました。コピコはそのまま彼女の寝顔を見守り続けました。
翌朝、マリが目を覚ましたとき、コピコは心の底からほっとしました。マリは微笑みながらコピコに声をかけました。
「ありがとう、コピコ。そばにいてくれて、本当に嬉しいよ」
その言葉に、コピコの胸が熱くなりました。彼は初めて感じる喜びと幸せが溢れてきました。コピコはマリが自分を大切にしてくれていることを確信しました。過去の傷や不信はまだ完全に消えていなかったかもしれないけれど、彼はマリの愛情に包まれて心が温かくなっていくのを感じました。
その後も、マリはコピコに寄り添い、コピコのペースに合わせて接してくれました。そしてある日、マリはコピコに小さなプレゼントを持ってきました。それは、彼女が自分の手で編んだ温かなマフラーでした。彼女はコピコに笑顔で差し出し、「寒い冬に備えてね。これからもずっと一緒にいようね」と言いました。
コピコは感動の涙を流しながら、彼女の手作りのマフラーを受け取りました。彼は彼女の愛情が詰まったそのプレゼントを大切に抱きしめました。彼は自分が孤独で絶望的だった過去とは違う、温かな家族のような絆を感じていました。
コピコとマリの絆はますます深まり、お互いを支え合いながら成長していきました。コピコは過去の傷を持ちつつも、マリとの暖かな関係を通じて新しい希望と幸せを見出しました。そして、コピコは過去の孤独と絶望を乗り越え、マリとの共に歩む未来へと胸を躍らせるのでした。