ジコチュウな研究者たち
ジコチュウ。自己中心的、は割と標準装備だが、今回は自己注射の話。数年前のあるとき、会社(研究所)で中堅~ベテランの女性達だけでランチをする機会があった。たまたま全員既婚者であった。そこでぽろりと「最近は不妊治療で、あまりに当然のように”じゃあまた明日病院来てください♪”とか言われるのでヤバイですー」とこぼしたところ、なんとその場の8割が不妊治療経験者であった。そんなにか。
(惨敗したフーナーテストについてはこちら)
背景として、研究職は、大学院を経て就職するパターンが大半を占める。就職した時点で24歳 or 27歳プラスアルファ。数年がむしゃらに働いたら気が付けば30代半ば。結果、初産年齢は高めとなる。子どもを持たない夫婦も多い。
不妊治療の程度・経過は様々。60代の先輩は、漢方にはまり学校に通って資格までとった、とのこと。現役は、排卵チェックに通院をやりくりするのが面倒なので自分で見れればいいのに、、とか、排卵誘発の方法論などが飛び交った。
排卵誘発には、経口剤のほか、注射による方法がある。注射のための連日の通院が必要な場合に、その段階で仕事を辞める人も多いだろう。
しかしそこは日頃、薬剤に関する話や、マウスやラットへの注射など見慣れている女性たち。「そこはジコチュウっしょ」の一言でみんなうんうん、と頷いていた。ジコチュウ=自己注射。そうなのか。中には、「わたし会社来てからトイレで打ってる~」という猛者がいた。おいおい、いいのかそれは。
その後、自分も経口の排卵誘発剤を使った周期が不発続きで、注射を提案されることになった。どうやっても、就業時間外に病院で、というのは不可能だ。そこで、「自分で打ってもいいですか?」と聞くと、看護師さんにめちゃくちゃ驚かれた。あんまりそういう方いらっしゃらないんですけど、、と渋られたが、背に腹はかえられぬ。「大丈夫です~!」と見得を切る。
ここで私は自分の思い違いを知った。ジコチュウ、てっきり、ペン型の器具とかで簡単に、えいっと出来るものだと思ってました・・・。
渡されたのは、思いっきり普通の注射器と、薬剤の入った小瓶であった。うへぇ、、わたし、マウスには経口投与しかやった事ないよ・・・!!みんなスゴイわ!
後日、後には引けないのでチューっと薬剤をシリンジに満たし、えいっと自分の太ももにブスッとさし、ぎゅーっと薬剤を打ち込む作業を連日やった。痛みはほとんどなかった。結果その周期もいまいちだったし、薬が合わないのかしんどかったので、私のジコチュウは1周期で終わった。
その後フレックス勤務が可能となったので、今では社内にジコチュウの人は減っているかもしれない。
しかし、社風は急には変わらない。フレックス勤務が可能となっても、ほとんどの人が旧業務開始時間を頑なに守っている。フレックスをとるひとは、聞かれてもいないのに、いやあ こういう理由で、、と言いがちだ。もしくは、遅れてくる時はわざわざ、遠回りしてでも人目につきづらい入口から入ったり。
私はといえば、その後子どもを授かり、優先順位を「子どもを機嫌よく保育園へ送り出す」>>>「旧業務開始時間までに会社に着く」に定めた。大幅に遅くなった日でも、全く気にしない顔をして行く。快く思わない人もいるだろう。しかし、前例がないと踏み出せない人、周囲の目を気にして個人的事情を後回しにしている人、声なき人が多くいるのを今では知っているので、こんな人もいますよ、をやっている。
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不妊治療ユーザー向けに、ホルモン剤のペン型のデバイスとか、マイクロニードル*とか、開発してください・・・!!インスリンの自己投与のために、マイクロニードルを開発しているベンチャーの経営者にお会いしたときにはつい力説してしまった。需要ありますよ!
*マイクロニードル・・・ごく微小な針がばんそうこうについていて、貼ることで痛くない注射ができる、みたいなイメージ。美容分野での実用化(ヒアルロン酸注入)のほか、インフルエンザワクチンの臨床試験が進んでいる。