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ニューヨークほど、運命が動く街はないかもしれない。
ある日のこと。NYで出会った高校の先輩から連絡があり、大学院を終えて、母国に帰るからお茶をしよう、と誘われました。
高校時代はお互い知らなかったものの、その先輩とは友人を通して知り合い、共通の知り合いや話題も多かったからすぐに打ち解け、NYにいる友人たちと、グループで旅行に行くまでになっていました。
二つ返事で誘いに乗ったその日の午後、流れでその共通の友人たちの近況の話になると、先輩は「実は…」と突然歯切れが悪くなり、顔を曇らせました。
聞くと、そのメンバーの1人は誕生日を迎えたその日に、突然会社から解雇通告を受けたこと。
また別のメンバー2人はそれぞれの企業で、集団でのレイオフ(解雇)が始まり、自分たちも条件的には解雇の対象になっていること。
もう1人は母国での就職は決まっているものの、本当はアメリカに残りたいということ。
終始ショックで驚いていた私が思ったのは、この2つ。
この街、いや、この世界では自分の実力や努力に関係なく「安定」した人はもういないのだということ。
そのグループのメンバーは皆、アメリカトップクラスの大学、大学院を卒業し、世界でも一流と言われる企業で働く人たちばかりでした。皆話していて頭も切れ、とても気さくで賢く努力家ばかりで、本当に尊敬するし、一緒にいると「私がもっと安定した職についていたら…もっと賢かったら…」と卑屈にならずにはいられなかったくらいでした。
そんなどこにいても「成功」しそうな人でも、突然組織から外されたり、生活が保証されなくなる可能性と隣合わせで生活しないといけない。その怖さに、改めて背筋がひやっとなりました。
もう1つは、人には人の運命が突然動く瞬間があり、何気ない日常から一転して、否が応でも自分の人生に向き合わないといけない時があるということ。そして、それが自分を予期せぬ方向に連れて行ってくれる転機になりえるということ。
現地のWebサイトやメディアの記事を読んでいると、企業から解雇されたことがきっかけで新しい事業を立ち上げ、それが大成功した、という新時代的アメリカンドリームのような逸話も少なからずあります。
一見悪いことのように見えることが、捉え方や動き方によって、良いことになる。あるいは、本当はもっとやりたかったことに近づけるチャンスになるかもしれない。
常に人生が動く可能性があるからこそ、ニューヨークに住んでいる人とキャリアの相談をすると、「どんな時も絶対にあきらめてはいけないし、時には流れに乗ることが大事だったりする」と口を揃えて皆言います。
もしも自分の身に降りかかったらそうは簡単は思えないし、不安や気分が落ち込んだりすると思います。「何で自分が…」と思ってしまうと思うけれども、そんなニューヨークに住む人の強さ、しなやかさはすごく見習いたい。
何気ないお茶から生まれた会話だったのですが、ふと「日本にいたらこんな状況に立ち会っていただろうか」と思わずにはいられない出来事。とっても強く賢い友人たちなので、きっと何かしら道を見つけると思うし、私も全く人ごとではないので、ちゃんと自分がどうしたいか真剣に考えようと思った、ちょっとした転機でした。