デザインを学んでから見えてくる、前とはちょっと違う日本
パーソンズで授業を受けていると、必ずデザインのいい事例として、日本のデザインが挙がってきます。周りのクラスメイトや先生の中でも、日本のデザインのファンがとても多くて、中には全く聞いたことなかったり、見たことないようなマニアックなデザインも「知ってる?」と聞かれたりします。日本人と私からすると嬉しいけど、「日本に住んでいたときはそんなこと意識もしなかったけどなあ」とちょっとむずがゆい気持ちになったりしていました。
なんで日本のデザインってアメリカにいる人たちから見て、こんなにもユニークで、かつかっこいいものとして映るんだろう。授業を受けている間はずっと疑問でした。他の国のものも当然かっこいい。けれども日本のデザインの良さを語る人があまりにも多いのです。
その答えが少しわかった気がするのは、少し前に日本に帰国した時のこと。
街中の看板やポスター、パッケージも、去年までは見慣れていたものだったはずなのに、「あれ?なんか気になる。」「え、これは…笑」と新鮮なものとして視界に飛び込んでくる。その中には確かに欧米のデザインの考え方からは確かに考えられないもの、かっこいいものもたくさんありました。
気になったものたち
パチスロ店の看板
赤の背景にいろんなサイズのゴツい字体の文字が並んでいる、渋谷109の近くに昔からあるパチスロ店。
授業中先生に口すっぱく言われたのは、「行間を空けろ、キツすぎるぞ」ということ。
よく東洋と西洋の文字組みのデザインは違うと言われるのですが、確かにこう見るとどれが強調したい文字なのか分かりづらいなあ、と納得したりしていました。あとは、行間や文字と文字の間のスペースが行ごとに違うのが気になります。
オレオレ詐欺防止のポスター
これはデザインとは関係ないかもしれませんが、たまにこういうシュールなポスターあるなあと思うもの。明らかにコロッケの2人はオレオレ詐欺の対象になりそうなおじいちゃん、おばあちゃんの服装なのに、隣に、「特別防犯支援官」って書いてあって混乱。
文脈がわからない人は誤解するのでは…?
ただ、詐欺というマイナスな体験を生々しく表現するよりは、「詐欺に遭ってもちゃんとサポートしてくれる人がいる」ということを伝えたかったのかなと。。
いやでもやっぱり分かりづらい。
かっこよかったもの
Jack Danielの屋外広告
フル映像はこちら:
ふと見上げた時に目に入ってきた映像。黒の背景に白くて大きい文字が点滅しながら現れたり、Jack Danielのボトルが画角いっぱいに映し出されて、シンプルだけどかっこいい。黒背景だからこそ、ボトルとグラスが当たった時のしぶきが、目立って綺麗だなと思いました。
渋谷の屋外広告
フル映像はこちら:
渋谷のスクランブルスクエアで見かけたこの映像。このアンバランスな形の窓、そもそもどうやって思いついたのかがずっと気になっていたのですが、そこにうまく合わせてデザインを作る作り手の人たちの発想がすごい。そして、1シーンごとの動かし方、モーションの演出がシンプルでかっこいい。梅雨が近い時期だったからか、夏と傘をモチーフにしたカラフルな映像が多くて、とても可愛くてずっと見ていました。
Zoffのパッケージ
白地に色々な字体、言語で「読書用メガネ」と書かれているパッケージ。その下に大きく視力が書かれています。字体とその下の箱の部分の色がマッチしていて、色も2色しか使われていなくてすっきり。ミニマルで都会っぽいデザインだなあと思いました。
全体的に、アメリカの広告やポスターと比べたときに、日本の広告は要素やスタイルが少なくて、ミニマルな表現が多いなと思いました。
例えば文字だと、細かい文字がすごく多いけれども、字体の太さや色などの要素を絞るとスッキリ見える見せ方もある。さらに人や景色の写真が使われているものが多くて、イラストが少ない。あとは、冷静に考えれば当たり前だけれども日本語の広告がほとんどだったなと。
NYだとスペイン語、中国語が併記されているポスターも見かけるので、
街に住む誰に対して伝えようとしているのかによって、表現も変わってくるんだろうなというのは学びでした。
ちなみに日本はこんなにデザインは海外のものと比べてもすごくかっこいいし、日本人が作流もの、仕上げる仕事のクオリティは高いのに、
なんで海外だとあんまり存在感がない国民なのかが疑問です。
NYに帰ってからその質問を他の国の人にしてみたところ、
「確かにかっこいいんだけど日本の中のことを海外に発信している人って少ないよねえ。だからすごく未知な存在なのかも。」
「他の国と比べたときに、国としてアグレッシブではないよね。海外に出よう、出ないといけないっていうガッツは少ない感じがある」
と言われたのですごい面白いなと思いました。
海外に行きたい、発信したい人はたくさんいるのにね。
声が届きづらい状況だし、そもそもの人数が他の国と比べて少ないのかなあと。
離れてから気づくことってありますね。
私もまだまだ修行中なので、日本のいいところ、ニューヨークで見聞きするもののいいところどちらも吸収できるように頑張ります。