舞台の袖に居られる幸せ①
今日は役に立つかもしれない話ではなく、あくまで個人的な雑感を記録したい。
5月28日(土)は、私が所属するフラメンコスタジオの発表会だった。東京からアーティストさんたちに来てもらって、席数1000のでっかいハコで、フラメンコを披露するのだ。
プログラムも15曲ほどあり、私が踊るのは1曲だけで8人のうちの群舞の一人である。
たった9分ぐらいである。
それでもここまで来るのはとても大変だった。
フラメンコを始めたきっかけ
リバーダンスの仙台公演を見たことだった。リバーダンス自体はアイリッシュステップダンスをストーリー仕立てでショーにしたものだ。上半身は動かさずに足で一糸乱れぬステップを踏んで踊るダンスだ。ただアイリッスダンス自体は迫力はあるのだが私の好みではなかった。公演はアイルランド移民たちがたどってきた道をストーリー仕立てで追うものであり、そのプログラムの中に「ファイヤーダンス」というフラメンコのシーンがある。それが何ともいえず素敵だった。
仙台公演の記録を調べると、2003年、2005年、2008年と3回あり、この中で私が見たのはおそらく2005年だろうと思う。フラメンコ素敵だなと思ってからしばらくして、フラメンコのライブを見る機会があり、ただその時に踊り手によって全く違う踊りであり、かなり好みがあるんだなと感じた。
やがて家から徒歩10分のところにフラメンコスタジオが出来、見学に行って通うようになった。しばらくして実家からその2005年のプログラムを発掘し、あの時の踊り手がロシオ・モントーヤというバイラオーラ(フラメンコを踊る人のこと)であることを知った。調べてみるとユーチューブでいくつか動画が出てくる。リバーダンスはDVDも販売されているが、彼女がファイヤーダンスを踊っている公演ではないようだ。
フラメンコを続けてきて、自分の原点である彼女のファイヤーダンスをもう一度見てみたいと、最近特に切望するようになった。音楽でも踊りでもなんでもそうだが、どっぷりはまって深く掘れば彫るほど分からなくなっていくような気がするのだ。
今年、アメリカで行われるリバーダンスの25周年記念公演では、彼女がキャストに入っていたのを一度確認したが、さすがにアメリカまで行くのは無理があるなあと思った。
人前で踊る機会のこと
普段はスタジオに大体週1通い、90分のグループレッスンを受けている。受けるクラスと時間帯によって、習う曲が決まっており大体1年から1年半ぐらいかけて、一つの曲をマスターする。私は子持ち・仕事持ちなので、平日夜は難しく土曜日のお昼時間帯のレッスンを受けている。発表会で一旦区切りがついて新しい曲になるが、ずっと習いたかった曲が一つ前の時間帯のクラスでやるので、6月からは時間を移動することにした。
普段のレッスンはそんな感じで、人前で踊るのは発表会と、それから小規模なライブである。発表会は1年半~2年に一回、ライブは大体多い時は年5~6回あったが、コロナになってからは、ライブもぐっと減ってしまった。
人前で踊る機会というのは実は希少である。基本的に発表会もライブもうちのスタジオは強制ではない。自分でやると言わなければ、人前で踊る機会はない。ただレッスンを受けているだけではなかなか上達しない。本番があるために負荷をかけて練習をするし、失敗も糧になる。
踊ることこと、女であるということ
結婚してももちろんフラメンコは続けていたが、震災を機に仕事が忙しくなり、おまけに不妊治療をすることになり、お金がかかってしまうので、しばらく発表会にもライブにも出なかった。レッスンは受けているものの本番がない日々の消化不良感は否めなかった。
一緒にレッスンを受けている仲間が発表会の準備をしている中、出ない自分はポツンな気分だったが、もちろん自分で選んだことなので誰に文句を言うでもない。フラメンコは年をとってからでも踊れるけど、子供を産むのはもうタイムリミットが近かった。不妊治療は割と上手くいった方で、一人目も治療を本格的に始めてから10か月ぐらいで授かった。つわりのひどさには悩まされ、またお腹の子供に何かあったらという恐怖が大きくてレッスンは休んだ。体調の激変と仕事の引継ぎと引っ越しに翻弄され、やっとレッスンに復帰できたのは一人目を産んでまもなく1年になる頃で、都合1年半以上休んでしまった。体の動かし方の勘を取り戻すのにもしばらくかかった。
そして、仕事・育児のコンボの辛さが和らぐまでに都合3年かかり、やっとこさ二人目目指して、凍結胚の移植に踏み切った。不妊治療のことはまたの機会に書こうと思ってしばらく寝かせているうちに忘れそうだが、何とか上手い事二人目も妊娠でき、やっぱり3カ月ほどのつわりがあったが、これも何とか経験値で乗り越えた。妊娠中もレッスン来ても大丈夫だよと先生には言われていたので、ウエストがめっちゃ伸びる素材のスカートを購入して、さすがにつわりの間は休んでいたが、体調が落ち着いてからは、普通にレッスンを受けていた。というか一人目の時のブランクがきつくて、もうレッスンを休みたくなかったし、骨盤ベルトの助けと二人目の余裕があった。予定日が10月24日で、9月いっぱいぐらいまでレッスン行こうかと思っていたら、9月頭の検診で「子宮頚管が25mmでちょっと短いから安静」と通達され、さすがにレッスンへ行くのは諦めた。その後、無事10月20日に出産して、11月末にレッスンに復帰した。
で、翌年から発表会、ライブ2回と割と踊る機会をもらって色々勉強させてもらい、今回の発表会ももちろん参加した。本番ができなかった期間が長かったのをようやく取り戻している感じがする。
スタジオには色んな人がいる。どちらか言えば、結婚していない、結婚していても子供いないという面子の方が断然多い。じゃなきゃもう子育てがとっくに終わった世代か。ただ、私が発表会に出ないことなどに関して、執拗に誘われたり出ない理由を訊かれたりしなかったので、本番がなくてもフラメンコを何とか続けてこられたのかなと思う。みんな色々あるよね、でも踊る時は関係ないよっていう空気感が心地よくて、自分にとっては本当に大切な場所だ。
今回noteに発表会のことを書こうかなと思ったのは、発表会ってリハーサルを含めて、普段のレッスンよりもメンバーと一緒にいる待ち時間が長い。その過程で何か普段出来ないような話をしたり、聞いたりして、何となくもやっとすることがあったからだ。
⇒ ②に続く