改めて「わたし」とは。
私はね、女性になりたいとか、
自分は女性だとか思えない。
でもかと言って男性だとも思えない。
昔から。
でも男性なら男性らしくしなきゃ、
って思わざるを得なかったし、
そういう努力もしてきた。
男性として女性から好かれたりもした。
もちろん私も女性が好きだったから
その時はそれでも良かった。
でも好きと自分のありたいカタチは違う。
そんな中で興味を惹きつけられた本があった。
はるな愛さんの『素晴らしき、この人生』と
椿彩奈さんの『わたし、男子校出身です。』
これらを読んで初めて
トランスの世界を垣間見れた。
でもすぐに自分は何者なのかは考えられなかった。
長年男性として当たり前と思っていた自分。
むしろ、昔の同級生の中にも言わないだけで
もしかしたらいたのかな?とか他人事だった。
もし身近にいるなら
自分は差別しないようにしなきゃ。
そうやってセクマイのことを調べだしたのは
先述の本を読んで数年経った頃だった。
衝撃だった。
LGBTだけじゃないの?
え、まだまだたくさんあるじゃん!
え…これ自分も当てはまる気がする…
でも分からない、確証がない。
そんな中始めたTwitter。
その中でセクマイ界隈の人たちと
繋がりを広げていった。
そうして最初にたどり着いたのが
「Q:クエスチョニング」。
自分が何者なのか改めて考える日々。
しかし幼少期から凝り固まった価値観は
なかなか厄介なもので、私は変化に臆病だった。
男性としての至極一般的な生活を送っていた。
妻がいて子供がいて。
そうしてやっと見えてきた「Xジェンダー」。
自分はこれだという自認がクリアになってきた。
でも性表現も男性らしくしたくない。
メイクもしたい。柔らかい雰囲気がいい。
依然続けていたTwitterや
ネットで調べていた情報から、
自分は「ノンバイナリージェンダー」だ。
という〝確信〟に変わった。
私は男性でも女性でもない。
それでいいんだ。
それが私なんだ。
しかし、
生きるというのはそんなに簡単なものじゃない。
体は男性、身に纏うもので
安々と印象が変わるわけじゃない。
トランスの人が使う「パス度」というものだ。
世間には「男」か「女」か、しかない。
男じゃないと自負したとて女には見えないし、
先に述べたように自分は女じゃない。
当たり前だ。
でも男に思われたくない。
それから一つの救いに興味が湧いた。
ホルモン剤だ。
生得的男性である以上、体から男性の根源が
コンコンと湧き出ている。
これを破壊したい。
しかし、今病院に通い注射をしてもらうには
家庭環境や仕事の状況から極めて困難を要した。
Twitterで個人輸入という方法があることを知った。
しかしホルモン剤というのは
「不可逆的」な作用をもたらすものだ。
そう、一度始めて得た変化は元には戻らないし、
しかも体への負担やリスクも大いにある。
私はそこに迷いは無かった。
まずは体への負荷を鑑みつつ、個人差がある
効果を見定めようと低量を服用し始めた。
約半年続けたが、男性の源泉は
一向に減った気がしなかった。
そこでさらに効果の強いものに変えることにした。
驚いた。
これは効果がてきめんだった。
性欲はパタリと無くなり、
2ヶ月ほど経ったある日試しに出そうとしてみたが、
子作りの原料も全く出なくなった。
やっと男性の呪縛から解放された気分だった。
とても清々しかった。
これで早死にするとしても後悔はない。
自分のあるべき状態に近づけたのだ。
そしてこれまで秘匿にしていた
ジェンダー問題が家庭で露呈した。
それまでも夫婦仲は破綻していたと
言っても過言では無いが、
改めて溝は大きくなった。
妻は理解を示さなかった。
まだ決まってない事は多いが
これからまた別の人生が待っている。
今はまだ曇り空。
きっと晴れる事を信じてる。