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PERCHの聖月曜日 9日目

幻滅した芸術家

或一群の芸術家は幻滅の世界に住している。彼等は愛を信じない。良心なるものをも信じない。唯昔の苦行者のように無何有の砂漠を家としている。その点は成程気の毒かも知れない。しかし美しい蜃気楼は砂漠の天にのみ生ずるものである。百般の人事に幻滅した彼等も大抵芸術には幻滅していない。いや、芸術と云いさえすれば、常人の知らない金色の夢は忽空中に出現するのである。彼等も実は思いの外、幸福な瞬間を持たぬ訣ではない。

––––芥川龍之介「侏儒の言葉」1923-25年

Sulking
Edgar Degas
ca. 1870


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