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PERCHの聖月曜日 21日目

イサム・ノグチ
「それはもう度々のことで、彼の母国アルメニア、それに彼の母についての話は何度も聞かされました。彼にとって少年時代は、とても大切だったと思います。彼の持つイメージは、この時代に創られたものでしょう。
たとえば1941年に私はニューヨークにいや気がさして荷物をまとめ、ゴーキーに一緒にニューヨークを出ようと話しました。アメリカを横断ドライブしてカリフォルニアへ行ったのです。この旅行中、彼はよく、空に農民の女性の姿が見えると言っていました。そう、雲を指して言っているのです。
ドライブ中、このことでずいぶん口論しました。つまり、私が「あれはただの雲だ」と言うのに対し、彼は「いや、そうではない。あそこに貧しい農民の女性の姿が見えないのか」。これから始まって、アルメニアの子ども時代の思い出に入り、これが雲と女性をいっしょにしたのでしょう。後年、彼が自然をスケッチし、絵を描き始めた時に、他の人たちには見えない自然の姿となって絵に表れてきたのだと思います。つまり、彼は他の人とまったく違った感覚で自然を見たのだと思います。
これは、単なる植物や樹木を超えて、彼の芸術の中にミステリアスなものとして表現された。彼の芸術は、アルメニアのイメージと、実際に彼の目で見た自然が織り込まれてできた、レースのように美しく素晴らしい芸術だと思います。」

––––カーレン・ムラディアン『アーシル・ゴーキー ある異邦人との対話』岡田隆彦訳、PARCO出版、1982年

The Fallen Tree
Alexander Cozens
ca. 1785



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