02 呼ばれていたのは本当か?
2022年1月某日、シェアハウスの内見のために京都に来た。
前の月に申し込んだのは、以下の4軒。
①七条
②西陣
③二条
④一乗寺
Facebookにこの4つのエリアの物件を見ると投稿したら、ぞくぞくとコメントがあった。例えば
「左京区(④)の濃さ、面倒見の良さはすごいなとも感じておりますよ。何事もそうだけど、不便、寂しいに関しては誰とどんな関係を築くかで変わるのでは?」
「いま二条近く住んでます。JRと地下鉄に2アクセスできることと、頑張って大宮まで歩けば阪急と嵐電も乗れるので便利。三条商店街もごはん屋さん結構あります。左京区にも住みましたが、一乗寺は確かに叡電とバスしかないので夜の帰り道は暗そうです。転勤族情報だと京都は北に行くほど治安はよいと聞いたこともあります。」
「人によって意見が違うと思うけど、南下限は七条通りまで、北は北大路まで。西は嵐山方面に向かうので、ちょっとざわつく。東は白川通より東側が落ち着いていて好き。高瀬川や鴨川に近いところは散歩(散策)するのに最適。京都は歴史ある土地柄、花街は多く、そこはあまり気にしなくていいかも。下賀茂あたりはアクセスも環境も良く、いいのでは。」
「あなたの普段の行動を考えると①がオススメだと思うよ。今は結構住みやすい地域になってる」
「五条から七条あたりは確かに治安の不安はなくはないですが、ここ最近は店が増えてる印象です。家賃が安いからでしょうか。街が変わるよくあるパターンかも。2023年には京都市立芸術大学も移転してきます。役所も土地のイメージを刷新したいようです。二条はアクセス良くて、全国転勤のサラリーマンが住むイメージ。近くの三条商店街は充実してますし、飲食店も多く一番充実してるかも。一乗寺は面白いエリアですが県外への移動が多いならしんどいかも。西陣も基本バスなのでアクセスが悪いです。」
ネットでは探しきれない、実に有益な情報がありがたかった。友人たちに感謝している。
内見をキャンセルした結果
年明け、③の物件が埋まったという連絡があり、内見できるのは3軒となった。
初日は14時から①を内見した。3週間くらい、この物件を繰り返し見ていたが、リビングダイニングも個室も屋上も、想像以上によかった。普通は写真で見ていたときより狭く感じるものだが、ここの場合は「思ったより広い!」だった。京間だから?(同じ6畳でも、京間は10.94㎡、江戸間は9.27㎡となる。)
しかも、6部屋のシェアハウスなのだが、コロナ禍により飲食のバイトがなくなって故郷に帰った人、アメリカへと帰国した人などがいたそうで、なんと5部屋も空いていた。そこで5部屋を二度ずつ見て、写真やビデオも撮って、住むならこの部屋(約7帖、収納含まず)と決めた。
内見後は階下のクラフトビール店「京都ビアラボ」へ。京都に住むと12月に決め、サブスクは中止していたから、久しぶりのビアラボのビール。しかも、つくりたて。サイコーの気分だった。
翌日は午前10時半に、同じ管理会社の②を内見した。
こちらは8部屋中、2部屋が空室。そのうちの1部屋はすでに申し込み済みとのこと。残る1部屋は、8部屋中いちばん広く、南東の二面採光で明るく、レトロな雰囲気も素敵だった。
部屋だけなら、①より②のほうが好みといえば好み。しかも、ここならキッチンや居間に降りずとも、部屋で仕事ができるだろう。
ただ、東京や奈良への出張や祇園の酒場でのアルバイト(あくまで希望)を考えると、西陣はどうにも遠かった。祇園まで自転車で30分はかかる。①なら10分。しかも夜中の2時までやっている「サウナの梅湯」が徒歩3分。
担当のTさんに、「明日も内見があるので、明日の内見後に連絡します」と言って、ホテルに帰ることにした。
しかし、部屋で横になっていると(前日の深酒で眠かった)、「①に住みたい!」という気持ちが抑えられない。それですぐに起き上がって、①の申し込みを完了した。
次にすべきは、翌日見る予定だった④の内見キャンセルの連絡だ。
しかし、④の物件担当者のSさん、私の宿泊先である四条河原町のホテルまで朝の10時にお出迎え→内見→一乗寺周辺案内→ランチでも、という約束までしていたお方。これはケータイのテキストメッセージでは失礼だろう、と思い、電話をかけた。
Sさんは、私が昨日見た物件を気に入って申し込みを決めたこと、明日の内見はキャンセルしたいことを聞いたあと、快活な声でこう言った。
「自分の管理するシェアハウスに入っていただけないのは残念だけど、気に入った物件があったのはなによりです。で、ご提案です。僕、堀さんと会うのを楽しみにしていたんです。なので、物件は見なくていいのですが、明日は予定どおり会いませんか?」
これが20代女性だったら、ある種デートのお誘いだろうし、しかも相手は車なので、即座に断ることをお勧めするが、私は50歳(当時)。怖いもんなし。というか、私もSさんのこれまでの電話応対にはいたく感心していて、声しかしらなかったけれど、京都に住むなら友達になっておきたいと思ったのである。
かくして、Sさんは当初の予定どおり、翌日10時にホテルへと迎えにきてくれたのだった。