男系男子限定継承に固執する劣化した評論家を批判する
DIAMONDO online に「愛子さまと佳子さまの結婚を1人で邪魔している大物政治家の名前とは?」という記事が掲載されている。
https://diamond.jp/articles/-/346454
この記事は評論家の八幡和郎氏が書いた記事だが、皇位継承問題についてある程度の興味を持っている方であれば、これを読んで男系男子限定継承をとなえる論者が安定的な皇位継承をどうすればよいかという問いに対して、まったく解決策とはなっていない自民党の出した二つの案
1.内親王、女王が婚姻後も皇室の身分を確保する
2.皇族には認められていない養子縁組を可能とし皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とする
これを真に受けて同調した意見を述べているにすぎないことがすぐにわかる。
しかし、この問題にあまり興味のない人が読んだ場合、野田佳彦議員が安定的な皇位継承を邪魔しているかのように受け取ってしまう可能性がある悪質な文章なので、これまで漫画家の小林よしのり氏や神道学者の高森明勅氏が言ってきたことと重なる内容になると思うが自分のできる範囲での反論をここに示しておきたい。
記事中に述べられている「単独残留」というのが上記自民党が出した案1のことになるが、女性皇族が結婚後も皇族としての身分を確保することについて、問題となるのは夫の身分は国民のままになるため選挙権もあれば信教の自由などもあるということだ。
皇室という聖域にいる皇族の方には選挙権は存在ないし信教の自由も存在しない、一般的な国民が持つ権利を持っていない。
選挙の際に、皇族の女性と結婚した夫が議員として立候補したある特定の人物を応援しているとしたら、それは問題があるし誰に投票したかという話がリークされる可能性もあるがそれも問題がある。皇族の夫が特定の政党をひいき目で見ていること自体が皇室の聖域性を毀損するものだと理解しなければならない。
宗教にしても同様で、極論かもしれないが危険な新興宗教に入信する可能性もあるが夫が国民で信教の自由が認められている場合、簡単にそれを止めることはできない。
住む場所についても結婚後も女性皇族の身分を保つとしたら警備の関係上、皇居に住むことになる可能性が高いが夫が勤め人の場合、皇居から一般企業に通うということになるのだろうか。一般国民が国民の税金でまかなわれる皇居で生活することには問題がないだろうか。それはなにか法的な整備や仕組みの変更で対応できるではないかという意見があったとして、一般国民が皇居に生活することは皇室の聖域性を毀損するのではないだろうか。
八幡和郎氏は国際結婚した夫婦や親子を例えに出しているが国際結婚とこの話は質がまったく違う。国際結婚の場合は夫婦ともに皇族のように自由が制限されてはいないし、あくまで個人間の問題として解決を図れる種類のものだ。
また、結婚後も女性皇族の身分を確保したとしても、その子供に皇位の継承権が認められなければ結局そこで皇統は断絶するのでまったく安定継承にはつながらない。
もし安定継承に対しての解決策として出すのであれば案1は「夫と二人の間に産まれた子供にも皇位を付与する」という言葉を追加しなければならない。
悠仁さまがいらっしゃるから悠仁さまがまず皇位継承して、男子が産まれなかった場合に女系も道を残しているとも言っているがそれは結局、男系男子限定継承の継続、現状維持を意味するが、それでは意味がない。それに男の子を絶対に産まなければならないところに嫁ぐことを受け入れる女性がいるのだろうか、あまりにも結婚のハードルが高すぎるではないか。今すぐに女系天皇公認までを含めての内容で皇室典範を改正しなければ意味がないのだ。
「旧皇族養子」というのが自民党の掲げる案2にあたるが、こちらは旧宮家系男系男子国民に皇籍を取得させることを意味するが、そもそも皇籍取得希望者がいない。
10年以上現れていないし、今後も現れないだろう。そして愛子さまが成人した現在、それをあてにして待つ時間もない。
八幡和郎氏は成立もしていない制度を前提に「養子になってくれと言われたら受けますか」と質問されても「受けます」と言えないだろうと述べているが、制度の対象になる人間がいないとしたら法律を作っても意味がない。では、制度を作ったら皇籍取得希望者が急に俺も俺も!現れるのだろうか?それはないだろう。100%ないと言っても過言ではない。
週刊新潮2011年12月15日号で旧宮家系男系男子への直接取材が行われているが、当時10歳の愛子さまのお相手になりそうな方がいた賀陽家の賀陽正憲氏は「息子たちはPSPで遊ぶ普通の男の子です。皇室様へのお婿入りなど考えること自体、失礼と思います」と答え、東久邇家の東久邇征彦氏も「そんなお話になってもお断りさせていただきます。息子には普通に生活してほしいと思っていますので」と答えている(小林よしのり著 愛子天皇論P301~P302より)。
男系男子限定での継承をとなえる論者は、このような事実を知らないのだろうか。すでに論破され尽くしたと思っていたが、現時点でまだ「悠仁さま世代の旧皇族男系男子は10人ほどいる」と八幡和郎氏は述べている。それならば皇籍取得希望者を連れて来て国民にむけて紹介してください、としか言えない。
「養子を取る側の常陸宮殿下がご高齢なだけに、早期の決着が望ましい」とも述べているが常陸宮殿下が養子を取る意思があると確認して言っているのだろうか。他人の若い男性が、いきなりご高齢の殿下の養子になることには無理があるのではないだろうか。
常識のある一般的な感覚で判断して自民党案は実現不可能だ。
また、旧宮家系男系男子国民に皇籍を取得させることは憲法14条の門地による差別にも抵触する可能性も指摘されている。また、どこの誰かもわからない一般国民を明日からこの人も皇族ですと国民の前に出されても、その人に敬意をはらうことなどできるわけがない。
このように男系男子限定継承の存続には幾重にも重大な問題が存在して、まったく現実的ではないため野田佳彦議員は自民党案に反対したのであって、立憲民主党がかたくなに自説に拘泥したと責めているがそれは八幡和郎氏の感情論でしかない。
記事の最後の方は「両陛下には、時間に制約されずに物事に取り組むという愛子さまの長所を伸ばしたいというお考えなのだろうが、将来の天皇となる可能性を少しでも念頭に置いておられるならありえないだろう。天皇というのは、何ごとも好き嫌いなく、決められたときに決められたことを要求される仕事だからだ」という聞くに堪えない文言の羅列で締めくくられている。
両陛下に対して個人の憶測でいちゃもんをつけたあげく、天皇は決められたことを要求されたら、好き嫌いなくやりなさいと超上から目線の発言。勘違いも甚だしいのだが自分自身の発言がいかに低レベルで恥知らずなものなのかを自身で認識できのないのであればそれはそれで仕方がない。
上皇上皇后両陛下が各地の被災地に赴いて現地の方々に声をかけて元気づけ、亡くなった方の慰霊をし、先の大戦の戦地を巡って亡くなった方へ慰霊をするなどの活動を通じて象徴天皇とは何かを体現されてきた。それらは誰かに命令されて決められたことをやってきたわけではない。陛下の自らの意思で実行してきたことだ。そして現在、天皇皇后両陛下はその意思を引き継いで、さらに進化させていくことになるだろう。
八幡和郎氏がいつか、自身の書いたこの記事を恥じる日が来るのかどうかはわからないが皇室を敬愛する一国民として言っておかなければ気が済まなかったので強めの口調になってしまったが批判をさせてもらった。
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