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グランドピアノを手放した話

母の形見のグランドピアノを手放した。
私が物心ついた頃から家にあったものだ。

私とピアノ

私も小学校一年生から六年生までの間、ピアノ教室に通っていた。
母が通っていた教室について行った時に「僕も通う!」と言ったらしい。
多分母と離れたくないというだけであって、ピアノを習いたかったわけではなかったんだと思う。
そのため、謙遜などではなく本当に文字通り「練習しなかった」ので一向に上手くはならなかった。
しかし、辞めたいと言ってもなぜか辞めさせてはくれなかった。
その後は音楽に興味を持って、今もギターやベースを弾いているので全くの無駄では無かったのかも知れないけど…

そして、そのグランドピアノは母が亡くなり私が譲り受けた。
時々は弾くし、将来甥っ子や(まだ見ぬ)自分の子供が弾くと言い出すかも知れないのでその時まで預かっていようという気持ちだった。

手放すまで


今年に入ったあたりから、部屋を広く使いたいと思う機会が増えた。(狭い部屋の真ん中に鎮座していたので体感8割くらいはピアノが占めていた)

甥も来年中学生になるがピアノをやる気配はない。

そもそも、もっと弾いてくれる人の手に渡ったほうがこのピアノも幸せなのでは?
調律すら母が亡くなってから一度もしていない。

母の形見ということもあって手放すのは躊躇った。
しかし、手放したくない理由もまた、母の形見であるということくらいしかなかった。

父に相談したところ「買取額と運搬費でマイナスにならないなら良いんじゃない?」という返事だった。
さすがにそこまで安くはないだろうと思ったが、実際運搬費がどのくらいかかるか分からないし、意外と安く買い叩かれるケースもあるのかも知れない。

さて、どこに買い取ってもらおうか、相見積もりとか取った方が良いのかしらと調べてみると、YAMAHAの子会社でYAMAHAのピアノのみを扱ってる会社が見つかった。(母のピアノもYAMAHAである)
とりあえず見積もりを出してもらったら、特に不満もない額だったので即決した。
探せばもっと高く買い取ってくれるところも有りそうではあったが、某中古車販売店のように後から傷があったとかなんとか難癖をつけて値切るような悪〜い業者も無くはないとの話を聞いたので安心が一番である。

決めてから一度、何の問題もなく運び出せそうかの下見(有料)があり、トータル1ヶ月半後くらいに搬出された。

その間に母が夢に出てきたことがあった。
「ピアノ売っちゃうよ」と報告したらめちゃくちゃ怒られた。
どうか夢枕に立ったとかではなく、ただの夢であることを願う…

搬出当日は業者さんにお任せなので特に問題は無かったが、ピアノの周りの荷物を別の部屋に移すのが大変だった。

搬出直前に「弾き納め」として撮った動画をInstagramにアップしたところ、幼馴染3人から連絡があった。
やはり、友人達にとってもあのピアノは思い出深いものだったようだ。

広くなった部屋で

長いこと共に過ごしたピアノがなくなって、心にはぽっかり穴が空いたような気分ではあったものの、物理的には元々ピアノの上や下にも物をたくさん置いていたので結局思ったほどは広くはならなかったなと思った。

兄が泊まりに来る時は、ピアノの横に布団を敷いて寝てもらっていたけど、先日泊まりに来た時に「今まではピアノの下に潜ってるような感覚だったけど、それが無いだけだいぶ快適だった」と言っていたので良かった。

最後に

母は「小さい頃からグランドピアノを持つのが夢だった」と言っていた。
あのピアノがまたどこかで誰かの夢を叶えていてくれていたら嬉しい。

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