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20241225-01 名将迫田監督を偲ぶ

写真は地方局のアナウンサーによる名著。桝本壮志氏による本書の解説を引く。

ある読み手はビジネス書として、ある人は対人関係を豊かにする指南書として、またある人は自己啓発本として読むだろう。それほど本作がもつ表情は多様である。

坂上俊次『83歳最後のマジック』2023 ベースボールマガジン社 p.202

同じことを別の言葉で表したのが二宮清純氏だ。帯にはこうある。

美談と教訓に終始する数多の名将本と本書は一線を画す。生涯現役のロールモデル。比類なき野球への探求心が珠玉の言葉を紡ぐ。

前掲書

そんな言葉は、けっして「売らんがな」の美辞麗句ではないことは読めばわかる。ぐいぐいと迫って来る迫力はない。読み手のこちらが自然とのめり込む。その理由を桝本氏は次のように紐解く。

著者・坂上の、点を線に、線を面に、そして人生や社会の課題へと立体化させていく洞察力、構成力は特筆すべきだろう。

前掲書 p.202

一気にのめり込んで読んだ。あの頃の広商をあこがれの目で見ていた子どもだったからなおのこと。次には線を引きながら読む。「禁・ブックオフ送り」の本棚に並べる。高校野球を見るたびにこの本を、迫田監督を思い出す。時折手に取る。阿久悠さんの『甲子園の詩 敗れざる君たちへ』(2013 幻戯書房)と同じ扱い。そして「人として大切なこと」を忘れないようにと自分を戒める。

これが本書で迫田監督に学んだ私なりの将来計画だ。

高校野球に限らず、スポーツは勝ち負けではなく、それを超えて人として大切なことを学ぶ良質なメディアとしてそこにある。これもまた迫田監督の教えにも通じる本質。「感動をありがとう」といった類のことを言うためにあるのではない。

本質といえば、人生における「出会い」の大切さのことを少し。

先日気がふさぐような所用で帰省をしたときのこと。長時間のドライブの疲れを癒し、ふさぎがちな気を紛らわせるためにと前泊地に選んだのが「ウサギの島 大久野島」だ。島に渡る前に寄った「道の駅たけはら」が運悪く定休日。

翌朝、高速道路に向かう道を遠回りして再度「道の駅たけはら」へ。そこで迫田監督の追悼展をやっていた。一目散に会場に向かった。監督は本を用意して迎えてくださった。

トイレの表示が入らないようにしたら台車が写っていた
それだけ興奮していたんだろうな

遠回りしなきゃこの本に出合うことはなかった。もちろん他の2冊も買った。一気に迫田監督三部作を手にする出会い。これをセレンディピティと言わずして何と言う。

あのころ広商は強かった

3冊の重みが、気持ちを軽やかにしてくれた。本書を読む楽しみが、所用の「気のふさぎ」を和らげてくれた。これもまた本が持ち得る本質的な力なんだろう。

ちょうど1年前の迫田監督の葬儀。出棺時に流れたのは「栄冠は君に輝く」だったことを知った。

ああ栄冠は君に輝く

心の中で歌いながら店を出た。そこで見上げた冬空もまた「雲はわき光あふれて」いた。冷たい風に涙がにじんだ。

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