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20250116-01 不思議なことに

書店減少、読書離れ加速

大晦日の地元紙に載った年末特別記事「2024年末回顧」の見出しだ。
何を今さらの内容だけど、若い人たちに「本は読んでおいた方がいいよ」と何気なく伝える機会もあるだろうとその記事を切り抜いてノートに貼り付けた。

元旦。

何故か知らないけども、本棚からとある本の背表紙が私を手招きしてくれた。パラパラっとめくったページに手が止まり、こんなことをノートに書き出した。

書初めを意識したものでもなく、書初めのような崇高なものではないけどもなぜかこんなことを書きとめた。本当にそうだよなと強く思いながら。

不思議なことに、本の話になると、年齢を超えて語り合うことができます。
不思議なことに、本の話になると、立場や職業を超えて共感しあえます。
不思議なことに、本の話は一気に人々の距離を縮めます。
それが本の力です。
友達、家族、会社の仲間、学校の仲間、誰でもいいです。
もっと本について語ってみませんか。

川上哲也『本屋さんで本当にあった心温まる物語』2012.あさ出版P.30

年始から新しい職場に変わり1週間たった先日のこと。
帰り道で一緒になった同僚が「本がお好きなんですね。私も大好きです。今度一緒に本の話を!」と語りかけてくれた。会話はスマホのYY文字起こしが助けてくれた。

職場のホワイトボードの片隅に貼らせてもらった自己紹介を読んでくれたのだそう。そこには「本が好き」と書き添えていた。この一言だけで、仕事に行くことが楽しくなる出会いにつながるのも言葉がもつ力。

「自分のことを開示する大切さ」と「他者に健全な興味を示すことの大切さ」が相まってのちょっとしたことだけど心温まる会話。この二つのことも、人生をゆたかにするコツだと思って生きてきた。そうやって生きてきてよかったと、おおげさに聞こえるかもしれないけどそんなことさえも思った。

「愛の反対は憎しみではなく、無関心である」というマザーテレサの崇高な名言を持ち出すまでもない。目の前にいる人を大切に思うならば、健全な興味を示すだけのこと。そのためには、まず自分のことを開示しなきゃね。そんなことを若い人たちに伝えてきた。

その延長線上にセレンディピティが待っていてくれたりする。不思議なことに。

私は、人と人との距離のことを若いころにさだまさしさんに教わった。

誰も彼も網棚に笑顔を置き忘れたままで足早に歩く
それもこれもまるで街が悪いと圧しつけているけれど
都会は決して人を変えてはゆかない
人が街を変えていくんだ
人と人との距離が心に垣根を静かに刻み始める

さだまさし「距離(ディスタンス)」

聞こえるときに聞けてよかった歌のひとつ。もう45年も前の歌だ。
「言葉が身体化する」って表現があるけども、まさに私の中で染み入り、それなりに育った言葉たち。私のコミュニケーションを支え続けてくれているフレーズ。「人と人との距離が心に垣根を静かに刻み始める」なんてまさに私の中のアンチテーゼ。

もうそろそろ帰ろう帰らなくちゃいけない
僕が僕でいるうちに
もうそろそろ帰ろう帰らなくちゃいけない
君が君でいるうちに

さだまさし「距離(ディスタンス)」

聞こえなくてコミュニケーションに苦しむ私が帰る場所は決まって本だった。私は本に自分が自分でいることを支えてもらって生きてきた。

昨日の芥川賞のニュースを見てふとこんなことを書き留めた。これもまた私の中のセレンディピティ。

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