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昔は音楽を聴くためには外に出るしかなかったんだぜ?謎の歌手「Nusrat」を探して
オリバー・ストーン監督の映画
『ナチュラル・ボーン・キラーズ』をビデオ屋で借りて視聴していると、主人公がインディアンと会話するシーンで、今まで聴いたことのない曲調の歌が挿入された。
ほんの数秒だが、広漠とした夜の荒野と、主人公の運命を予言させのに充分過ぎる説得力!
一体なんだこの音楽は?!
![](https://assets.st-note.com/img/1738450914-eNkn3mRgQpHOwdbsYIMKWtxq.jpg)
原案はなんとクエンティン・タランティーノ
早速、渋谷のタワレコに向かう。
そう、今から20数年前、ネットはまだ黎明期。
今のように音楽が自由に聴けるなど夢にも思わなかった時代。
お店まで足を運び、試聴コーナーに置いてなければCDを買って聴いてみるしかなかったのである。
音楽を聴くのにも労力と体力とお金が必要だったのだ。
そして買ったはいいが、
「頼む!あの曲、収録していてくれよ!」と願うしかない。
まさにギャンブル。
ちなみに当時1枚だいたい3800円ぐらいはした。
ドキドキしながらサントラをかけ、ブックレットを読むと
サントラのプロデュースにトレント・レズナーとある。
まさかあの「ナイン・インチ・ネイルズ」のレズナー?!
どうりで全体的に尖っている訳だ。
ちなみにこのサントラ、
ゴールド・ディスクとなり、米国だけでなんと50万枚を売り上げている。
サントラ盤ジャケット
![](https://assets.st-note.com/img/1738453659-tHqOzaZDT0rcx7bCBIWfJ3e5.jpg?width=1200)
そしてついにお目当ての曲が流れた!
収録されていたのは
Taboo
Peter Gabriel/Nusrat Fateh Ali Khan
Allah, Mohammed, Char, Yaar
Nusrat Fateh Ali Khan
のたった2曲。
だがこの2曲の為にわざわざ買ったと言っても過言ではない。
(他の曲もめっちゃ良い)
しかし
Nusrat Fateh Ali Khan、名前の読み方がわからない!
ヌスラットファ?アリ?カン?
そもそも何処の国の人よ?
先程も言ったが当時のネットはまだまだ未発達。
欲しい情報がネットには存在しなかったのだ。
今度は単独アルバムを探すためCDショップをハシゴする。
Peter Gabriel(ピーター・ガブリエル)のCDは見つけたが、
Nusrat Fateh Ali KhanのCDはどこに行っても見つからない!
そもそも流通しているのかも怪しい。
目敏い人に先に買われてしまった感もある。
(1枚買われると在庫はもう無し!はよくある事で特にマイナーな民族音楽などは早いもの勝ちの時代だったのだ。)
そんなこんなで、しばらくは情報を得られないまま悶々とする日々が続いたのだが。ある日、深夜の映画情報番組で
『女盗賊プーラン』が紹介される。
!?バックに流れているこれは!
あのNusratに違いない!
その後、Nusratの歌は次々と映画音楽に起用されるようになり、ようやくNusrat Fateh Ali Khanが認知され、単独CDが小規模店舗でも手に入るようになった。
Nusrat推しには実に長かった。
![](https://assets.st-note.com/img/1738451698-N6QYuGcSIrMmx9f1op8CtZvs.jpg)
目を背けたくなる生い立ちの主人公プーラン
ネットの情報もポツポツと公開されてきて、ようやく読み方が最近になって分かった。
(wikiも最初の頃は英語表記のみだったのだ。)
ヌスラト・ファテー・アリー・ハーンと言うらしい。日本人が初見で読むのはどう考えても無理!
パキスタン出身でイスラム教神秘主義スーフィズムの儀礼音楽カッワーリーの歌い手とある。
インディアンのシーンにパキスタン音楽を流してしまうオリバーストーン。
でも嵌っていたからいいか。
カッワーリーとは?
インド,パキスタンおよびバングラデシュのイスラム教徒の宗教賛歌。
この語はqawl(〈証(あかし)の言葉〉)に由来し,イスラム神秘主義の聖者pīrの廟で行われる記念祭にカッワールと呼ばれる音楽家によって歌われるものを指す。
とのこと。
イスラム教など当時も未知の文化。しかも神秘主義と来たら聴いたことあるわけが無い。
彼を発見したピーター・ガブリエルとトレント・レズナーには感謝感激である。
そして、どうやらヌスラトはかなりの大御所で日本で言うところの北島三郎とか細川たかしとか、あのレベルの国民的歌手のようだ。
凄い人なのである。
そういえば、映画公開当時インドとパキスタンはカシミール問題を抱えていなかったか?インド映画にパキスタンの歌手が音楽担当という奇跡。
リアルに「音楽は国境を越える」をやってのけている。
それだけNusratが偉大だったと言うことであろう。
で、どんな音楽なのか?
とにかく、早い!何を言っているのか分からないと思うが単語を繰り返し言うのだが高速。
うん、書いていても意味不明。
そして壮大。
だだっ広い荒野に座り世界の隅々にまで届かせるようなそんな声。
人の運命のような如何ともし難い強い力を感じる。
ここまで書いておいてなんだが、今はネット成熟時代。
聴けば一瞬であった。
サントラ盤 taboo
サントラ盤 Allah, Mohammed, Char, Yaar
Bandit queen 女盗賊プーラン
音楽を聴くために歩き回る、お金を払う。
そんな時代もあったのさ。
タダで世界中の音楽が聴けるなんて、なんて世の中だ!
もし当時の私が知ったら何故もっと遅く産まれなかったと机を叩いて悔しがったであろう。
と言うことで、民族音楽にハマった若かりし私はインドネシアのバリ島に行くことになる。
それはまた別の機会に。
Nusrat Fateh Ali Khan
ヌスラト・ファテー・アリー・ハーン
نصرت فتح علی خان
1997年没(享年48歳)
まだまだ若い、実に惜しまれる。
マーティン・スコセッシ監督
『最後の誘惑』のサウンドトラック
メル・ギブソン監督
『パッション』(原題:The Passion of the Christ)収録曲
ティム・ロビンス監督
『デッド・マン・ウォーキング』収録曲
パール・ジャムのエディ・ヴェダーと共演
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