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雨上がりの鰻重

新年最初の雨が上がり、冷たい空気が街を包む昼下がり。仕事仲間と「奮発しよう」と向かったのは、職場近くの老舗うなぎ屋だ。店内に入ると、炭火の香りが体を温めるように迎えてくれる。注文したのは特上うな重。蓋を開けた瞬間、輝くうなぎと湯気が顔を包んだ。

ふっくら焼き上がったうなぎを一口食べると、香ばしさとタレの甘みが口いっぱいに広がる。「こんな贅沢、年に何度もないな」と仲間と顔を見合わせ、笑いが漏れる。雨上がりの冷えた体を、熱々のうなぎと湯気立つ白ご飯が優しく満たしていく。

最後の一切れを名残惜しく食べ終え、食後のお茶をすすりながら俺は思った。「今年もやったろう!」。外に出ると雨上がりの空に薄日が差し、湿ったアスファルトから白い水蒸気がゆらゆら揺れていた。

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