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探検?遭難?サバイバルアマゾンツアー④

④ 落雷5本、今すぐ脱出せよ!

ピラニアにも噛まれず、カンディルにも食い破られず、這々の体(ほうほうのてい)でキャンプ地に戻った。そこでは奥様たちが、ビール片手にテントを張り、夕食の準備を済ませていた。無鉄砲オヤジたちと長年連れ添えるだけあって、奥様たちもまた異次元にたくましい。ちなみに夕食のメニューは、ランチの残りのピラニアとワニとビールに決定。

初日とは思えぬ疲れで酔いの回りも早く、ひっくり返るようにテントで爆睡した。

目覚めたら爽やかな朝、のはずだった。

しかし、テントの支柱がへし折れるような豪雨と、聞いたことのない雷鳴のアンサンブルで深夜に跳び起きた。恐る恐るテントの外を覗くと、原始の闇と熱帯の本気のスコール! 空を見ると、同時に5、6本の稲妻が蜘蛛の巣のような網目状に走る。

こんな映像、恐怖だ、イカれてる。

稲妻フラッシュのたびに浮かび上がる我らがキャンプ地は、ため池と化し、みるみる水位が上がってくる。当然テントの中の荷物もすでに水没している。

またもやホルヘが、テント設営場所の選定を激しく間違い、落ち着いて考えたら分かることだが、川の近くの低地という最悪の場所に僕らはいるのだ。さすがのおっさんたちも慌てふためき、

「今すぐ荷物を車に乗せろ! 早く脱出しないと、全員死ぬぞ!」

言われるまでもなく、かなりヤバいことだけは分かる。全員で荷物を車にぶち込みエンジンをかける。が、すでに辺り一帯、冠水したぬかるみで、タイヤは「ギャルルルルル~」と空転するばかり。

声が聞き取れないほどの雨音と雷鳴に負けないよう、命懸けでおっさんは叫ぶ。

「車から降りて、全員で押せー! ワイヤーをかけろ、ウインチで引っ張れ! 死にたくなかったら、とにかく押せー!」

パニック状態で絶叫する、全身泥人形となったおっさんとおばさんの上で、人間どもよ参りましたと言えというように雷は落ち続ける。もうマンガだ。笑うしかねえ。

どれくらいの時間押したり引いたりしただろうか。なんとか脱出に成功し、車はどうにか道らしい場所を走り始めた。僕は、トラックの荷台に放心状態で倒れ込み、全身の筋肉はもう一ミリも動かない。

気がつくと夜は明け、雨はぴたりと止み、畏ろしいほどの真紅の太陽と朝焼けが、ジャングルの木々の隙間から見えた。

とりあえず、僕は、生きている。

⑤ワニを食べるのか、ワニに食べられるのか、それが大問題だ に続く。


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