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始まりは、アメリカ横断ウルトラクイズ

南米、その中でも「アンデス山脈、アンデス文明」に魅入られた人生の始まりは何だろうと振り返ると、昭和の伝説的テレビ番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」に行きつくかもしれない。

番組についての以下の記述は、完全なる個人的な記憶に依拠している。ネットで調べれば、いくらでも動画を含め見られるかもしれないが、あえて見ないようにしている。
少年時代に恋焦がれ、かぶりつきで見ていた純度の高い(そして解像度の粗い)記憶を、視覚的で正確な情報で上書きするのが、もったいないのだ。

その番組は、年に数週間だけ、秋ごろの放送だったように思う。全国から集まった選りすぐりのクイズマニアの一般視聴者が、日本を飛び出し、アメリカ合衆国を転戦しながら、生き残りクイズバトルを繰り広げる。決勝戦の舞台はN.Y.。

小学生の僕には、「日本という国を出る手段があること」「世界には想像もつかない景色が山ほどあること」「僕が知らないことを知っている大人へのあこがれ」「大人が喜怒哀楽全開で旅をしてるエネルギッシュさ」などに完全にやられてしまい、大げさではなく命がけで見ていた。ビデオ録画もない時代、数日前から体調を整え、放送当日は宿題も食事も風呂も全て済ませ、テレビの前で正座して待っていた。

ひいきのプレーヤー(会ったこともないただの一般人…)が勝ち上がれば跳び上がって来週も応援できる喜びをかみしめ、負けるとさめざめと涙を流し、自由の女神の前で決着がついた翌日からは、喪失感で腑抜けのように過ごしていた。

そんな変な少年の心臓をわしづかみにしたのが、ある年の(あえて調べない!)北米 VS 南米シリーズ!
あるチェックポイントで、プレーヤーたちは選択肢を突き付けられる。
スマートでゴージャスな北米周りコースか、過酷でワイルドで冒険のにおいがする南米コースか、を自分の意思で選ばないといけない。そして、それぞれのコースを勝ち残った最後の二人がN.Y.で相まみえるのだ。なんとぞくぞくするシナリオだろう。

その時まで僕は、南米はおろか世界地図すらあやしいただの田舎の小学生。
しかし、その年一番応援していたプレーヤーの男性が、快適さをあえて捨て南米コースを選んだ時、心の底から「かっこいい」としびれまくった。

アンデス山脈、チチカカ湖、インカ帝国、高山病、ケチュアの民族衣装などなど、その後の人生を振り回すことになる言葉や景色を胸に刻みながら、プレーヤーと一体化し、脳内南米旅行にはまり込んだ。

この年の番組終了後の虚脱感がえげつなかったことは、言うまでもない。


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