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アンデス高原の太陽の門に立つ②

1990年代末に訪れた、ボリビアのティワナコ遺跡。
当時は世界遺産登録の前で、観光客はまばらだった。伝統的な民族衣装のおばちゃんたちと一緒に地元の路線バスに乗り、茶色のイネ科の植物が生えているだけの、たまにリャマやアルパカらしき動物が遠景に見えるだけの、本当に何もないアンデス高原をひたすら走った。
「わざわざ時間かけてくるほどじゃなかったかな」とうっすら後悔しつつ。

しかし、辿り着いた遺跡はとにかく広大で、石造りの神殿やピラミッド状の小山など見所満載で、いい意味で期待を裏切られた。

数時間歩き回り、「そろそろ帰りのバスの時間だな」と帰り際に通り過ぎようとした遺跡のある一点で、動けなくなった。

巨石を組み合わせ作られた門。サイズもデザインも、特別なものでもない。入り口でもらったパンフレットを見ると「太陽の門」とある。

ここだったんだ。中学生の時切り抜いて、引き出しにしまっていた写真は、絶対にここだ。あの写真はもうどこかに消えたが、デザインも背景も絶対に、絶対にこの場所だ。オレンジ色の太陽を強調したあの時の写真は、「太陽の門」そのままだったんだ。

鼓動が早まり、よくわからない涙が出てくる。
「オカルトだ、前世の記憶だなど信じない程度には、大人になったはずだ。でも、何なんだ、このせつなさは。」

それから一時間くらい「太陽の門」の前から動けなくなり、おかげで帰りのバスを一本乗り過ごした。でも、帰り道すら懐かしい。



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