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探検?遭難?サバイバルアマゾンツアー⑦

⑦カピバラの開き、アルマジロの姿焼き

一泊二日で町に戻るはずだった我らがジャングルツアーズは、あえなく帰り道を見失い、大自然のど真ん中で2回目の夜を迎えた。昼間の天気からするとおそらく頭上には満天の星空が出ているのだろうが、鬱蒼としたごっつい大樹に覆われたこの場所からは、空は拝めない。

昨晩の水没脱出劇から学習した探検隊の一行は、素人目にも周囲よりもやや高まった、川から十分離れた安全な場所にテントを張った。さほど広くもないが、テント数張りと焚火ができる十分なスペースは確保できた。

アマゾンのジャングルで道に迷うという経験は、なかなかのディープなことだと思うのだが、おっちゃんもおばちゃんも僕以外は誰一人慌てる様子も、嘆く素振りもない。
「アマゾンあるある」なのか、まあ何とかなるとの究極の楽観主義なのか、これを何とかできるだけの余裕のスキルがあることへの自信なのか、とにかくタフとしか言いようがない。
もし地球に何かが起きた時、真っ先に滅びるのは先進国の人間で、最後まで生き延びるのは彼らだろう。いち生物として、勝ち目がない。生命力のバロメータースケールが違いすぎる。

燃料の木材は、そこいらじゅうに転がっているので、あっという間に豪快なキャンプファイヤーが燃え盛る。
ワニワニパニックの末ゲットした大量の淡水魚と、ホルヘ&ナンドペアが仕留めた動物たちが、おばちゃんたちによって、次々と食材化していく。

まず、イノシシ大の謎の獣があっというまに下処理され、岩塩をまぶし、「アジの開き」状態で焚火にかざされる。
1990年代の僕は、このネズミの親分、カピバラを知らなかった。
この数年後日本に帰国してから、テレビで温泉につかっている愛くるしい映像を見て、「あ~、あのとき開きにして食べたやつだ」とつぶやき、家族にドン引きされたことがある…。
次はアルマジロ。丸い背中をもつ独特のフォルムのやつだ。こちらは内臓だけ抜かれ、岩塩を塗り込まれ、ひっくり返った亀そのままの形態で、焚火の中にぶち込まれた。おばちゃんたちによると、「この固い背中がそのまま鍋みたいになって、いい感じに火が通るのよ~」ということらしい。

しっかり焦げ目がついたころ、アーミーナイフで肉をそぎ取りながら、ビールと一緒に食す。
「ウマい!」 どちらの肉も、あえて例えるなら、豚トロだろうか。臭みもなく、シンプルな岩塩の旨味と合わさっていくらでも食える。

「因果応報」、「輪廻転生」、「食物連鎖」。どの四文字も、アマゾンの真っただ中では、すごく当たり前のこととして、すんなり食道と脳を通過していくのだなあ。

⑧ 森の精霊コダマ(アマゾン種) に続く。


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