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探検?遭難?サバイバルアマゾンツアー⑥

⑥一泊二日の予定じゃなかったっけ?

命からがら陸地に戻ったとき、時刻は午後2時を回っていた。
ナンドと狩りの感想戦に熱中しているホルヘに、エンジントラブルのせいでどれほどヤバい状況だったかを訴えるが、
「あ~、あのエンジンも年季が入ってるからなあ」ぐらいの返しで、僕らの話なんか聞いちゃいない。
二人が森で仕留めた獲物はトラックの荷台に積み上げられている。射撃の腕前だけは確からしい。
「さあ、明るいうちに町に戻って、夜はバーベキューだ!」
ホルヘの一声で、再び探検隊は動き出す。

気力も体力も使い果たした僕は、頼み込んで4WDの後部座席に座らせてもらった。もう荷台生活は無理だ…。
鬱蒼としたジャングルに、か細く走る林道を探検隊の車列は走る。
「1時間もありゃ森を出られる。あとは町までぶっ飛ばしていくぜ!」

しかし、1時間を過ぎても、周りの景色に全く変化はなく、360度完全なる熱帯雨林。助手席のホルヘと、ドライバーのおっさんは、ちょいちょい首を傾げながら小声で何か言葉を交わしている。

嫌な予感しかしないが、聞くのも恐ろしく後部座席で黙っていたが、2時間を過ぎても全く景色は変わらず、日は傾き、辺りに夕方の気配が漂う。さすがに我慢の限界だ。

「ホルヘ、まさかと思うけど道に迷ってないよね。」
彼はニカッと笑いながら振り向いて言った。「大丈夫だ、こんなこともあろうかと、水もガソリンもまだたっぷりある。」

迷ってんじゃん!  やっぱり遭難してるんじゃん!

ホルヘは道幅がやや広くなった所で車列を止めた。車から降りたおっさんらは集まり話し合いを始めたが、その全員がNO PLANであることが傍目にも、手に取るようにわかる。わずか5分の会議後、ホルヘは宣言した。
「帰り道が分からなくなったが、もうすぐ暗くなる。今日はここでキャンプだ。バーベキューの準備だ!」

繰り返しになるが、スマホも無線もGPSもない時代で、地図もない。なのに僕以外は誰一人慌てることなく、日常モードで下草を切り払い、テントを張り、焚き火の準備をしているのが逆に怖い。
救いは、昨晩の経験から深く学習した探検隊は、水辺から離れた、相対的に高まった場所をキャンプ地に選んだ、ということだけだ。

一泊二日の予定はどこまで延びるのか? 僕は、人間社会に戻れるのか?
ほんの一瞬、夕焼け色に染まったジャングルに、あっという間に2回目の夜闇がやってきた。

⑦カピバラの開き、アルマジロの姿焼き に続く。


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