フリーター女の四国放浪記 その4:外に出るといいことある
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友人たちとあんなに楽しい時間を過ごしたのにも関わらず、憂鬱な気持ちで目が覚めた。
狭い空間にいるのも辛いのでいそいそとシャワールームに向かう。
泊まったカプセルホテルは他のお客さんがほとんど外国人で、
その中に混じって朝の支度をするのは異国にいるようで少し面白かった。
その日は夕方から知人とご飯にいく約束をしており、それ以外は何も予定を立てていなかった。
カプセルホテルの夜があまりに辛く、かなり滅入っていた私は『なんか色々怖くなってきた。夕方まで引きこもるか…むしろ夕方出かけるのも恐怖…』などと本気で考え出す。
引きこもるということは、あらゆる外の刺激から身を守るということである。
楽しいことも、嫌なことも、とにかくシャットアウト。それで心の安寧を保つのである。
しかしカプセルホテル、快適に引きこもれる場所ではない。
部屋は狭くて、ラウンジも一応あるが閉塞感がすごい。
このカプセルホテルに引きこもれば、むしろ私にとって悪い刺激になる!
外に出て何か気を紛らわせたほうがマシだ…と思い直せたことは本当に良かった。
というのも、一応、東京で行きたいところをいくつかピックアップしておいたのだ。
一つ目は昨日訪れた村上春樹ライブラリー、
二つ目は大久保にあるスパイスカレー屋さんの「spicy curry 魯珈 ~ろか~」、
三つ目は西国分寺にある「クルミドコーヒー」。
残りの二つも攻略するぞ!となんとか外に出てみると、一気に気分が晴れて行くのが意外だった。
外にはスーツをきた人たちが忙しなく歩くなか、外国人観光客らも混じってなかなかに「東京の雑踏」を感じる。
そこに混じって歩き出してしまえば、凝り固まっためんどくさい自我みたいなものが大人しくなるような感覚があった。恐怖感もすーっと消えていった。
思えばこの旅はこんなことの繰り返しだった。
挑戦することへの恐怖から、やるかやらないかで一応迷って、でも思い切ってやってみる。
そしてその先に、挑戦を避けていたら得られなかった経験と達成感があった。
spicy curry 魯珈 ~ろか~
まずspicy curry 魯珈 ~ろか~へ。
このカレー屋さんを一人で営む女店主の齋藤さんは、スパイスの女神と呼ばれ様々なメディアに出たり、
大手企業とコラボカレーを出したりしているとにかくすごい人だ。
以前から彼女とそのカレーに憧れがあり、いつか絶対食べたい!と思っていた。
超人気店ゆえに、かなり特殊な方法で受付しないといけない。
お昼にカレーを食べたいなら、午前中(9時半スタートだったかな)にお店まで行って、記帳する必要がある。
枠がいくつか設けられていて、食べたい枠に名前を書き店を一旦離れ、記帳した時間に再来店する!
パッときてパッと食べるができないのだ。しかしこの手間をかける価値はある…
詳しい攻略法は調べれば出てくるので要チェックだ。
朝早く行ったが記帳の列ができており、齋藤さん自身がにこやかに対応してくれた。
常連さんらしき人たちと朗らかに言葉を交わす姿に、ああこれがこのカレー屋さんの日常の風景なんだなあ、
としみじみ感じ入ってっしまった。
彼女は見た目がとてもギャルで、そこも素敵だ。譲れない芯のようなものをひしひしと感じる。
それはスパイスカレーに向き合う姿勢に通じるものがあるんだろうなあ。
記帳したのち、自分の枠まで3時間くらい空くので近くのチェーン店カフェに入り、諸々の宿泊施設の予約をしまくった。
最初に泊まる高知のゲストハウスの宿泊予約は済んでいたのだが、その次の四万十川周辺の宿、
その後の檮原という高知の山奥の宿、そして徳島の大歩危の宿…
宿泊施設の予約、めちゃくちゃめんどい。
宿を決めることイコール、旅程を決めることなのだ。
そこに行くまでの交通手段も調べながら、さらに周辺の観光にどれだけの日数があれば良いのか、もっと安い宿はないのか、その宿のレビューはどうか…
ここまで調べないと安心できない。
当初は、もう行き当たりばったりで当日に宿決めるくらいでいいよね!くらいに思っていたのだが
結局、きっちり宿は全て数日前に予約したところに泊まる旅となった。
(これで良かったと思いつつ、今日泊まる宿がない!と困るような旅もそれはそれで面白そう。)
そして時間に間に合うように魯珈に戻って、ずっと食べたかったカレーにありつく。
注文を取り、人数分のカレーを作り…と全てを一人でキビキビとこなす様にうっとりしてしまった。
ラベンダー入りの限定カレーを頼み、とにかく複雑で繊細なスパイスのハーモニーを感じた。とっても美味しかった。
「ずっと来たかったんです、とても美味しかったです」と伝えることもできた。齋藤さんはにっこり笑ってくれた。
下は満足して店を出た際に撮った写真。
夜中〜朝は憂鬱な気分だったけど思い切って外に出て食べたいもの食べて、勝利。という気分で。
クルミドコーヒーでの出会い
次は西国分寺のクルミドコーヒーへ。
このカフェの店主である影山さんの著書『ゆっくり、いそげ』を読んで、いつか行く!と決めていた。
資本主義経済に一石を投じるというか、効率や成長だけが良いものとして扱われる世の中で、
少し立ち止まってお金や仕事について考えてみませんか、のような内容。
その頃には私もカフェでアルバイトをしていたのもあり、とても興味深かったのである。
カレーを食べたすぐ後に向かったので、お腹いっぱい。
カフェは見つけたものの周りをうろうろしつつ時間を潰していた。
西国分寺には初めて行ったが、東京らしからぬのどかな雰囲気で、住みやすそう!!と感じた。自然が多い。
散歩していると、小学生が5人くらい歩いてきて、近くのマンションからおじいちゃんが
「おーい、〇〇さん。気をつけて帰ってな〜」と声をかけて、女の子がそれに笑顔で応えるという場面を目撃した。
何気ない日常の一コマ…だが、こんな平和な近所付き合いがここにはあるのか…!と感動した。
少なくとも私の実家周辺には皆無である…はるかに田舎なのに…
そんなこんなでクルミドコーヒーに。
角っこの落ち着く席に案内してもらった。かなり賑わっているものの、雰囲気が良かった。
小さい女の子とそのお母さんが絵本の読み聞かせをしていて、さらに店員さんも和やかに加わり…。
地域に根差している!まさしく本の通りのカフェ…!とまた感動。
そして四国のガイドブックとひたすら睨めっこしていた私は、隣の席の男性から「四国行くんですか?」と話しかけられた。
そうなんです、とても不安なんですけど、2週間ほど…と返すと面白がってくれたようで、店主さんの本を読んで来たことなど色々と話した。
彼は本にも登場する地域通貨「ぶんじ」創設メンバーで、カフェの店員さん達とも旧知の仲のようだった。
「隣の席の人に脈絡なく話しかけてみる」というミッションを地域通貨「ぶんじ」に記すにあたって、まずは自分が…とチャレンジしてみたらしい。まさかこんなことになるなんてね、何が起きるかわかんないね、と笑っていた。
西国分寺、いい街ですね!と心の底から思ったことを伝えると、「じゃあここに住みなよ!」と屈託なく返してくれるその朗らかさというか、地に足がついている感というか、とにかくいいなあ…としみじみ感じた。
その後、影山さんや店員さん達も交えて旅の激励をしてもらった。
「行ってらっしゃい!」と笑顔で送り出してもらったのだ、初対面の人間なのに。
不安で心細くてどうにかなりそう…と苦しんでいた私は、思わぬ出会いによって信じられないくらいあったかい気持ちでクルミドコーヒーを後にした。
この出会いがかなり大きかった。
何かあったらここにくれば受け入れてくれるかも、私の次の居場所になるかも、と。
実際どうなるかはわからないまでも、もしもの時に思い浮かぶ場所というか。
地元からなんとなく離れたいと思っている私にとって非常に心強く、ありがたい出会いだった。
Tさんありがとう
そして知人Tさんの営むコーヒーショップに向かう。
その人との出会いはフィリピン語学留学であった。
時折発揮される自分の並外れた行動力は、思いもよらない縁につながる…。
彼は旅好きで色んな名店や名スポットを知っており、私が赴く四国の地についてアドバイスしてくれた。
そして旅の最終地点、高松の完全予約古本屋「なタ書」の店主藤井さんにコーヒー豆のお土産を託され、別れる。
これまた、絶対に渡さなくてはいけない「お土産」を託された私は、旅を完遂する決意を新たにした。
完全予約の古本屋でね、店主さんが変わっててね、店もなんかすごい改造してあって…と
なんだそのファンタジーみたいな古本屋は…どうやって生計を立てているのか…!?
と興味を惹かれた私は、高松までしっかりとコーヒー豆を護衛しながら旅をすることになる。
この「なタ書」での出会いも物凄かった。本当に。繋げてくれたTさんに感謝しきりである。
次回から高知入りです。読んでくださりありがとうございました。