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「動きにくい」を1年かけて解消してみた~高齢母への簡単バリアフリー実践録~

こんにちは。暮らしと住まいのアドバイザー、さまゆうです。

家の中で、なんだか「動きにくい」問題を抱えていませんか?

「片付けているつもりなのにスムーズじゃない。
ここがもうちょっとこうだったら暮らしやすいのに」......など。

年齢関係なく、誰もが一度は思うところでしょう。
高齢者であればなおさら切実な問題です。
できることなら、今すぐに改善したいところです。

そこで今回は、わたしが実家で体験した簡単バリアフリー術を部分的にではありますが、各事例ごとにご紹介したいと思います。


■よくある「動きにくい」問題


家の中の動線が悪くて日々ストレスを感じる。
動作を邪魔するものがあると動きたくなくなる。

👇👇👇👇👇👇👇👇👇👇

高齢者のお宅は、コレ危険です。
なぜなら、普段積み重ねられる不満要素のせいで、どんどん行動範囲が狭くなり、なるべく動きたくなくなりますから。

動く→ストレス→面倒くさい→じゃあ動かない→筋力・精神的活力の衰え→生活力の低下

こういった恐ろしい図式が出来上がってしまう危険性が大でしょう。

可能な限り、手を尽くして避けたいものです。
誰だって、なるべく長くイキイキと快適に暮らしたいのですから。

では、どうしたらいいの?


■高齢女子のひとり暮らし問題

わたしの母は、去年までひとりで暮らしていました。
実質4年近く。
少し、軽度の認知症にもかかっています。

《母の当時の状況》
・82歳、数年前に父が他界してからひとり暮らし
・小型犬がいる
・介護度レベル:要介護Ⅰ
        料理・身の回りの支度などに補助が必要
・認知症高齢者の日常生活自立度(ADL):Ⅱb
            買い物、散歩など家庭外の活動は介助が必要

「そんな状態でどうやってひとり暮らしを?」
大抵の方に眉をひそめられ、心配されました。

でも心配はご無用なのです。
兄とわたしとケアマネージャーさんで、当時わたしたち全員にとって最適な暮らし方を考えて、実践していたのですから。

わたしたち兄妹がタッグを組んで、母の生活を支えた方法はこちらになります。


1、週に2回、わたしと兄が交代で訪問(日帰り、泊りは臨機応変に)
2、家事補助の訪問ヘルパーさんに、時間対応で支援をしてもらう
3、デイサービスを週2回利用、1と2は施設利用以外の日にスケジュール

この組み合わせで、なんとか高齢女子悠々自適ライフを送ってもらうつもりでした。

そう、つもり・・・

なんとか生活が形にはなっているけれど、実は問題が山積みなのです。
悩ましさの最たるもの、それは生活の核となる「動きにくい」こと。
狭い、高い、つまずく、加えてモノが溢れている。
高齢者の住まいで多くみられる特徴が、実家ではすべて当てはまるのでした。


当時のリビング


他にもまた別次元の問題は抱えていますが、まずはすぐ着手できる改善点から手を付けてみました。


【着手したこと・優先順位】

1、手すりを設置
2、段差をなくす
3、家具を減らして動線を確保

兄とわたしの共同製作プラン


では、優先順位からご紹介しますね。


1、手すりを設置した!


優先順位ナンバーワン!
まず、母が座ったり立ったり、部屋から部屋へ移動する拠点にはすべて手すりを設置しました。


『簡単床置き式手すり』~安定重視で、両サイドに脚があるタイプを選びました


ポイントは、手すりの種類をオールマイティに選んで設置したこと。

手すりは、なにも壁に付けるだけではありません。
上の画像のような自立型で、使い方(設置場所など)が自由な手すりがあるのです。

このタイプの製品は、転倒防止のために土台パネルに鉄芯を内蔵した構造になっているので、そのまま置いてもぐらつき・転倒など安全面で問題なく使用できます。

わが家の場合は念のため、脚のパネル四隅にドリルで(工夫して)ビス打ちしました。(兄が)

「簡単床置き式手すり」~こちらは脚が片側のみ


母の定位置のソファひじ掛け部分にも手すりを置いています。
この場所は、奥の和室へと頻繁に出入りするので、設置が必要な箇所でした。
長ソファの重みを利用しているので、安全対策はより万全です。

また、この奥の和室を寝室として利用しているので、ベッド脇にも自立型手すりを1台置いています。


・もちろんリビング以外にも

次に、リビングから廊下と移動する動線の壁にはすべて手すりを設置。
設置するまでは、ツルツル滑る板壁に手をついて移動していました。
そのままツルっといっちゃっていたらと思うと……。
考えただけで怖くなります。

トイレ内も手すり。ここは横型だけではなく、縦型も便座近くのドア枠側へ取り付けています。横型の手すりは動きに合わせて、高さもそれぞれ変えてみました。

二階建ての家なので、階段にも両サイドに手すりをつけました。
でも、現在は一階のみが母の生活圏で収まっているので、それ以上「わが家の手すり設置運動」は進めていません。


2、段差を解消!


早くやっておけばよかったと、ミッション完了してからつくづく思いました。
なぜなら、非常に簡単だったから!

実家は築45年くらいになる木造住宅。建具の寸法は一律決まっています。
当時の建て方で、建具の下枠(下框ともいう)や敷居(引戸の下枠のこと)と床の段差は約3cmです。
この3cmの段差をスロープ(傾斜)で解消する部材があるはず!
ホームセンターにあった!


ドア枠の形状に合わせて加工というひと手間はありました

便利な世の中です。
バリアフリーが叫ばれている今の時代だからこそ、登場したありがたい製品です。ひと昔前でしたら、大工さんや業者の方に造ってもらわないと手に入らないものでしょう。

このスロープ、設置してみてかなり使い勝手がよい製品です。
素材は発泡EVA材といって、ビニルと樹脂の合成加工品になります。
適度な硬さもありながら弾力もあるうえに、幅広で傾斜もゆるやかなので足裏や歩行にも違和感なく歩けました。
しかも、木材と違って軽量なのです!(重要👍)


一方...…

段差をなくす方法は、下框や敷居を取り除くというやり方もあります。
そうなると、完全にリフォームですね。
程度にもよりますが、お金もたいそうかかります。
(介護保険制度内にある住宅改修制度の登場となるでしょう)



3、家具を減らして動線確保!


正直、一番難儀したのは動線を確保をすることでした。

ただスペースを開けるだけなのに、たったそれだけのことがこうもはかどらないとは……。
なにせ、動線問題を完了させるのに1年かかったのですから。

それこそが、本記事のメインとなるテーマでした。


「動線とはなにか」

生活するうえで当たり前に行き来する通り道。
1日に何度も必ず通る場所に、つねにモノがある。それもよくわからないものばかり。

牛乳パックで作ったスツール、床置きした民芸品らしき三段の小物箱。
腰掛けたら後ろへひっくり返るほど重心の悪い背もたれなし椅子(新聞置き化している)、妙な位置の観葉植物、あちこちある犬かまくらとご飯の皿(小型犬がお供にいます)、犬のゲージ(これはいる)…etc…

どれもこれも、なくても困らないものばかり(犬のドームとゲージはいる)。

でも、母本人には必要なのです。

どんなに動きを邪魔されようが、ぶつかってあざをこさえたり、倒して掃除が必要になろうが、「そこにあるもの」を無くしてしまおうという考えにはならないのです。
兄とわたしがどう説得しようと、片づけを頑固に承知しませんでした。

兄は途中から匙を投げかけましたが、わたしは悪だくみを考えました。
本人の目の前でいきなりやろうとするから抵抗にあうのだ、と。
いない時に、少しずつ少しずつ変えていけばうまくいくのではなかろうか?

時間をかけてゆっくりと手を加えていけば、母も受け入れられるかもしれない。
まず、妙な位置に鎮座しているいくつかの観葉植物を、正しい位置へ少しずつ、そっとずらすことから始め......。

母の様子を観察しながら、お試しのように行なったやり方は大成功でした。
半年を過ぎた頃から、あれほど雑然としていたリビングにスペースが空くようになり。
今や、母も犬もけつまずくこともなく、スムーズに家の中を動き回っています。


《ビフォ―》

歩く場所どこにあるの??


《アフター》

歩くスペースができた / 床が見えているよ(⊙o⊙)



■介護保険制度をどこまで利用したか


ここまでお読みになられて、介護保険制度を利用しなかったのか? 
と、疑問に思われたと思います。

わが家では、一部利用するという方法を取りました。

《介護保険制度の利用内容》
・手すり → 自立型手すりは電動ベッドと一緒にレンタル
       壁取付け型手すりは住宅改修制度利用なし
       すべて自費で取り付けまで行った
 
 ※玄関に置いた自立型手すりだけは、リサイクルショップで購入
  (衝撃価格4000円でした → 兄が急遽買ってきた)
  

壁取り付け型手すりに関しては、住宅改修制度の利用をしませんでした。
理由は、急いで取り付ける必要があったからです。
当時、母が足腰を痛めており、動作の助けとなるためになるべく早く設置 が必要となっておりました。

介護保険制度は限度額20万円内で住宅改修制度という、バリアフリー改修を利用できます。
ただ、壁手すり取り付け工事が実現するまでには、手続き・打ち合わせなどを含めた諸々もろもろの段取りに時間がかかるため、利用は選びませんでした。

段差解消スロープ → 一部加工が必要だっため、レンタルなし 


幸い、兄はDIYを得意とした器用な人であることに加え、一応わたし自身がリフォーム会社員としてある程度知識もあります。
2人タッグを組めたからこそ、セルフ設置を選択できたというわけです。

通常、壁手すりは取り付け工事まで一貫して住宅改修制度を利用するのが一般的です。
担当するケアマネージャーさんに相談されて、綿密な打ち合わせをされることをお勧めします。



■全面バリアフリー化をしなかった理由


わが家の場合は、最初全面バリアフリー化のリフォームを検討しましたが、取りやめました。

・構造的に、全面バリアフリー化は住宅改修制度の限度額をはるかに超える
 大工事になること
・仮に大工事になった場合、母や私たちの生活にさまざまな障害があること
・母自身の身体能力を考えて、現状に手を加える改善の方が適していると
 判断したこと

そういうわけで、現状を少し改善してみようか。
という、ゆる~い快適化を選んだのです。


■まとめ:改善をするにあたって


誰でも、自分の生活スタイルを急に矯正されるのは受け入れがたいことでしょう。
高齢者ともなると、なおさら苦痛ですし、拒絶反応がでてしまうのも当然です。
だって、歳を重ねながらずっと自分に合った生活をしてきたわけですから。

なので、正しいことでも無理に押し通さず、決して無理強いせず、本人の時間の流れに極力合わせながらゆっくりと進めていく。
そうした方が変化を受け入れやすい。
短気でせっかちなわたしですが、多くを勉強させてもらいました。


現在はといいますと......。

母は高齢女子ひとり暮らしにサヨナラをして、兄家族と一緒に住んでいます。

同居といっても、母はまだまだ体が丈夫です。
なるべく自立した生活を送れるよう、1階を母の生活スペースにする区分けを徹底しているそう。
母の生活の邪魔をしない。それが母本人の希望でもあるので。

ざっくりお手軽にバリアフリー改善した住まいで、ゆる~く快適に今のところ暮らせているようです。

どうでしょう?
状況によると思いますが、とりあえず工夫次第で出来るところから動きやすさの改善をできそうにありませんか?

家の中を見回してみて……。
まずは、できるところから手を加えてみる。
時間はいくらかかってもよいし、ゆっくりでよい。

ご自身のことでも、ご家族やご友人のことでも、「動きにくい」で困っていたら、まずはその「動きにくい」ものをひとつ改善してみましょう。
時間をかけて、ゆっくりと......がおすすめです。

利用できる介護保険制度は迷わず利用する。
お願いできるところには、ためらわずにどんなことでも相談する。

とても肝心です


最後に…

ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
この記事があなたのお役に立てれば、と願いをこめてしたためました。

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