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マンションの足音防音対策の正解って?
こんにちは。暮らしと住まいのアドバイザー、さまゆうです。
先日、こんなご相談を受けました。
「住んでいるマンション全体が、ここ最近「騒音」について敏感になってきているようだ。
成長盛りの小さな子供がいるので、室内の足音などで迷惑をかけているのではと不安になる」
マンション住まいの方であれば、誰しもが気に病む内容です。
音の問題。
集合住宅に住んでいる以上、避けても通れぬ、知らんぷりもできない、悩ましいテーマです。
それぞれネットで調べたりなど、各自で防音対策を実践されている方も多いはず。
ですが、適切な防音とは何かを正しく知っていますか?
今回は、マンションの床面に対する防音の相談をひとつの事例として、ご自分にあった防音対策法をご紹介しようと思います。
■あなたは防音をどこまで求めていますか?
今回の相談内容の一大テーマは、足音を防ぐことでした。
つまり、床面への防音対策をどうしたらいいか? ということです。
相談者様の状況を簡単にご説明します。
・住まいは鉄筋コンクリート造のマンション
・小学校低学年の男の子とそのご両親の三人家族
・活発な育ちざかりなので、家の中を走る
・厚さ2cmのジョイントマットをリビングだけに敷き、
足音対策をしている
さて、大事なのはここからです。
防音対策について、どこの場所に、どの程度までで考えているのか。
これをある程度、最初の時点で決めておくことが重要です。
なぜなら、防音対策は手をかけようと思えばいくらでも大掛かりにできるものですから。
費用をかけてリフォーム工事をするのか。
それとも、自分たちの手で出来うる限りの対策をするのか。
自分たちの手で対策をするにしても、どこまで予算をかけて行うのか。
それを判断するには、防音の知識を正しく知っておく必要があります。
幸いにも、相談者様は求めておられる方向がはっきり決まっていました。
・自分たちの手で出来る範囲の防音対策
・なるべく費用をかけずにできる方法
その方法を探していらしてたので、私は以下のポイントを重視して提案をさせていただきました。
☆ポイント☆
・お金をかけない → 大掛かりなリフォームなし
・自分たちでできる範囲内 = 業者に頼まない
・お金がかかったとしても、なるべく安価で
【結論】床面への防音は衝撃音を遮ることにつきる
【まず先に知っておくべきこと】
遮音性能のない(基準値表記のないもの)製品を単体で使用しても、防音効果ナシ。
前提として💡💡
すでに2cm厚のジョイントマットを現在使用されているとのことです。
買い替えを検討されているようですが、次回同じような「厚手でクッション性のある」低反発ラグ、プレイマット、ジョイントマット、または置き畳(厚さ2.5cm以上)を単体で敷いても、残念ながら効果的な防音は期待できません(T_T)
ここでもう一度...…
遮音性能のない(基準値表記のないもの)製品を単体で使用しても、防音効果はナシ
床に伝わる音は固体伝播音といって、構造材料=躯体(床・壁・天井・針・柱)の中を通って伝播した振動が別の場所で空気を震わせて響き渡る衝撃音になります。
空気を伝って伝播する空気伝播音とは違って、音に衝撃が加わって密度が大きい躯体へ振動する仕組みです。
ですから、建物のうんと離れた遠い所にまでびっくりするくらい、音は衝撃となって響き渡ります。
それを防ぐには、音だけではなく床に直接伝わる衝撃も出来るかぎり抑えなければなりません。
【床材の遮音性能で知っておくべきこと】
「L値」指標とは、床の遮音等級のことです。
そのL値にも2種類あり、LL(軽量衝撃音)とLH(重量衝撃音)となります。
防音性能のある床材は、このLL表記されたものになります。
LL(軽量衝撃音)……スプーンを落とした、子供の足音、椅子を引きずる程度の音が該当するでしょう。
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相談者様には、ご家庭でできる床の防音対策をグレード順でご紹介していきました。
(※1→3と数字が大きくなるにつれて、防音効果が高いと捉えてください)
■ご提案内容
対策グレード1
防音タイルカーペット、防音フロアマット → これを単体で同じようにリビング だけに敷く。
《防音効果》
・椅子を引きずる、足音の軽量衝撃音はかなり軽減すると思われる
【防音タイルカーペット参考製品・その1】
東リ「ファブリックフロア」
・アタック350NE リップルパレットネオ 400角 全厚9.3mm
◢LL-4(LL45~LL40等級) ※遮音性能保有製品
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床材、カーペット、壁紙、カーテンを取り扱う東リの情報サイト
アタック350NE リップルパレットネオ | フロア総合カタログ | 東リ 住まいとインテリア
【防音タイルカーペット参考製品・その2】
東リ「ファブリックフロア」
・アタック8000 サウンドカット 400角 全厚10.5mm
◢LL-5(LL40等級) ※遮音性能保有製品
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床材、カーペット、壁紙、カーテンを取り扱う東リの情報サイト
アタック8000 サウンドカット | フロア総合カタログ | 東リ 住まいとインテリア
※タイルカーペットは角タイルなので、部分的に剥がして洗える製品です。
※LL-1 → LL-6へと、等級が高いほど性能に優れています。
【防音タイルカーペット参考製品・その3】
・MUTE 防音タイルカーペット「防音専科」 500角 全厚1.75cm
◢LL-6(LL35等級) ※遮音性能保有製品
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これら上記3つの製品は、あくまで防音床材の一例としてご紹介しました。一般の方でも手に入れられる「住宅用防音タイルカーペット材」です。
他メーカーでも様々な防音タイルカーペットがありますので、遮音性能を確認しながら探してみてください。
(防音・遮音性能をうたう製品は、等級表示がされているか確認必須)
対策グレード2
防音床材とジョイントマットの重ね敷き
●部屋全体に防音タイルカーペット or 防音カーペット(角タイルではなく巻物)を敷き、必要なところにだけ厚手のジョイントマットを重ね置く。
(※遮音性能表示製品に限る)
(point 👍)
手持ちのジョイントマットも活用できるうえに(もしくは同等品の買換
え)、二重敷きなど防音効果が期待できる。
二重に敷くところは子供が一番活動量が多いところだけ……など、自由に場所を決められるのも嬉しいです。
(注意点)
・二重に敷くところだけ段差ができる → つまずき、転倒の心配あり
・部分的に重ねおくのなら、ずれ防止対策が必要
(対策)
・防音タイルカーペットとの間に滑り止めシートを敷く
・遊ぶ場所はルールを決めて「ココ」と定めて敷く
・廊下からリビングまでが走る&ジャンプの活動範囲であれば、動線すべ
てに敷く。それにより、なるべく段差ができる箇所を減らす
・段差ができる場所には、専用見切り材などを設置して、段差をカバーする
なお、防音タイルカーペットを二重に敷くと、遮音性能はさらに高まり、防音効果がより増します。
対策グレード3
遮音材、または専用下地材と防音タイルカーペットの重ね敷き ← より完全な防音対策ピカイチ方法
(point👍)
1、下地に、制振・遮音両方の機能を備えた遮音材を敷く
2、あるいは、専用下地材を敷く
【下地遮音・制振材参考製品・その1】
・ゼオン化成のサンダムE-45 床用遮音・制振マット
910mm角 厚さ4.0mm(4cm)
質量が重く、高い弾力性がある。
*計算例* 10帖→4ケース (※12帖同じ) 1帖0.91×1.82=1.65㎡
(問題点)高い遮音・制振性能を誇るだけあって、かなり値が張ります.…..。
(使い方の具体例)
遮音シート「サンダムE-45」を下地材とし、上に防音タイルカーペットを
敷く。
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Sandam>防音床材>遮音二重床・浮き床システムより
【専用下地材参考製品・その2】
・東リ FF用アンダーレイシート(ファブリックフロア下地用シート)
全厚6mm 950mm幅×10m/1巻
対策グレード1でご紹介した、「東リ ファブリックフロア」専用の下地材として使用できます。
転倒時の衝撃をやわらげる効果があり、防音床材のファブリックフロアと併用することで、遮音性能が増すという効果が期待できるでしょう。
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床材、カーペット、壁紙、カーテンを取り扱う東リの情報サイト
FF用アンダーレイシート | フロア総合カタログ | 東リ 住まいとインテリア
■まとめ
【ポイント1】 どこまで防音対策をするのか、上限(予算)を決めよう
1、なるべく安価で.…..
1、 厚手のフロアマットやカーペット(※遮音性能表示なし)
+ 厚手のジョイントマット
2、 防音タイルカーペットの単体使い(遮音性能表示製品に限る)
3、 防音タイルカーペット + 厚手のジョイントマットの
二重敷き。
2、値が張る(費用が嵩む)けど.…..
1、防音タイルカーペットの二重敷き
2、専用下地材 + 防音タイルカーペットの組み合わせ
3、遮音・制振シート + 防音タイルカーペットの組み合わせ
【ポイント2】 防音は部分的より、全体的に行った方がより効果が増す
1、床の振動音対策は、部分的な防音材を敷くより、床全面を覆うように
適正な防音材料を敷いた方が、より効果が増すことを認識しておいた
ほうがよいです。
2、床の振動音は躯体を通しての固体伝播音であることを理解しておく
と、様々な防音の対策に役立ちます。
3、完璧な防音対策をするのなら、空気伝播音対策も必要です。
→天井・壁・ドアや窓などの開口部への防音対策といったもの。
(楽器演奏や音楽鑑賞、人の集まりが多いなどといった場合ですね)
【ポイント3】 お子様の活動範囲を制御する
一例ですが、お子様がよく動き回るお部屋の動線の途中に障害物(小型の家具)を置く.…..という方法もあります。
活発に動き回るお子様の行動の流れをいったん区切ることで、足音問題をある程度抑える効果が期待できそうです。
住居内すべてに防音対策をするのは、状況によりけりで、現実的になかなか難しい場合もあると思います。ご自分の生活スタイルに合った方法で、部分的に対策をされるといったやり方が一番ベストかもしれません。
■相談者様が選んだ対策は……
対策グレード2の、「防音床材と厚手のジョイントマットの重ね使い」を選ばれたようです。
どの製品にするかは、これからご夫婦でゆっくり話し合って決められるそうですが、現状に照らし合わせて一番取り入れやすい対策法であるとのことでした。
今回の提案に対して、相談者様からこのようなご感想もいただいております。
(※掲載許可済)
知ることができてよかったポイントを3つまとめてみました。
1、「遮音性能」初めて知る
2、「防音対策」はいろいろな方法がるのを知る
3、「対策後」の気を付けるべき点を知る
”ただ安価にする”のではなく、防音対策をグレード1〜3にして「防音レベル」「予算感」を詳細に(写真&商品例で)教えてくださったので、実際の生活に取り入れるイメージがしやすかったです。メリット・デメリットもあり検討しやすいと感じました!
日頃から「住まいの悩み」はネット情報頼みでした。今回アドバイザーのさまゆうさんに相談したことで、これまで全く意識してなかった点に気づき、解決策を知ることができたので、本当に良かったです!自分で調べていたら「難しくてよく分からない」と思うようなことも、さまゆうさんがひとつずつステップを踏んで分かりやすく教えてくださいました。「防音対策やってみよう!」と前向きになれました。アドバイスいただいた内容、さっそく家族と相談し実践したいと思います。
■おわりに
防音対策を検討する際は、願望の洗い出しをしましょう。
1、何を防ぎたいのか
2、どこまでやりたいのか
3、それは本当に必要か
とことん考えてみると、必要なものと不必要なものが見えてくると思います。
本記事が、なにかしらあなたのお役に立てれば幸いです。
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