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贈られて嬉しい洋服

プレゼント難易度Sクラス(と感じている)の品物「洋服」
服を作っていながらなんですが、洋服をプレゼントするというのはよっぽどのことがない限りしません。

アクセサリーにも共通しますが、身につけてもらえなかったら悲しいからです。
例え贈る相手の好みをバッチリ把握していても、サイズが合わなければあまり着ない服になってしまいます。そうなると、贈った自分が悲しいのはもちろん、せっかくもらったのに着なくなってしまったという申し訳なさを相手に抱かせることにも繋がってしまいます。
(メルカリで売るから大丈夫!なんて笑顔で言わないでください。泣笑)

でも、それが絶対に身につけてもらえる確信が持てていたらどうでしょう。

あるとき、友人夫妻の奥様の方から「シャツを作って欲しい」とご連絡をいただきました。
聞けば、ご自分のではなく旦那様の。
その旦那様は、以前シャツをオーダーしてくださっており、気に入っていることをわかった上で、2着目をプレゼントとして贈りたいという嬉しい依頼でした。

オーダーという業態のブランド・お店は、お客様のオーダーがどんな内容だったか保管しているものなので、それをベースに次はどうしようかと考えることができるのが強みです。

通常は以前オーダーしたご本人と「次はどうしましょうか」とご相談するのですが、今回は本人をよく知る奥様と「どんなのがいいですかね〜」と想像を膨らませながらシャツのディテールを決める作業。それはそれは楽しい時間でした!

後日、「自分では選ばなかったかもしれないけど、とても気に入ってる!」と旦那様の方からご連絡いただき、胸を撫で下ろすとともに、その「自分では選ばなかったかもしれない」という部分にプレゼントの醍醐味が感じられて二重に嬉しい気持ちになりました。

「喜んでくれるかな…」というドキドキの中に、少しの安心感が添えられる
作るこちらとしても「これは喜んでもらえそうだ」という確信を持ってお手伝いができる。
オーダーという業態でシャツを作っていて本当によかったなと思える一つの瞬間でした。


そんなことを思い出しながら、ふと、こんな風に「ちょっと安心して」喜んでもらえるプレゼントを贈りたい人は他にもいるのではないか、そのためにブランド・お店の側が準備しておく事はなんだろうと考えました。

今回のケースのように、お互いのことをよく知る友人夫妻だったから成り立ったことなのでしょうか?
もしかしたら、贈りたい相手が自分に合う何かを作った経験があるということがわかっていれば、誰にでもできることなのではないかと思いました。

ただし、それにはいくつかのハードルがあります。

・贈りたい相手がどこで何をオーダーしたかを普段の会話で伝えてくれていること
・それを気に入っているということに確信が持てていること
・そもそもオーダーという経験をしている方なのか(振り出しに戻してすみません)

これは、こちらが立ち入れる部分ではない。
そう諦めそうにもなりましたが、何かをオーダーするということが「どうにも人に喋りたくなってしまうほど魅力的な体験」であれば、話題に挙がる確率は高められる。そう思い直しました。

接客体験を含めた、そのブランドのものを買うという行為をどれだけ楽しんでいただけるか。
なんだかどの小売にも共通するような当たり前のことになってしまいましたが、そういうことなんだと思います。

ホーローシャツでは対面のみでの販売を続けています。
それは「ここがこうなっているから自分に合うのか!」「このディテールはそんな印象を作るのか」といった発見を一つでも持ち帰っていただくことで、他の色々な服を見る目が変わる=買い物が上手に楽しくなるといいなと思っているからです。

そんな「発見」も、喋りたくなる要素の一つだと思いますし、何より役に立ちます。なので、似合うシャツを見つけられる人が増えたらいいなという願いも込めて、これからも惜しみなく知識をお伝えしようと思っています。

他にも、品物が手元に届くときの包装、アフターサービス、もちろんその物の品質など「いいオーダーができたな」と思っていただくために努力すべき事はたくさんあります。

「プレゼントとして選んでもらえる服」になるための道のりは険しいですが、十分に可能性はあると思っていますので、これからも気付いたことを記していければと思います。

今回は、洋服が贈られて嬉しいプレゼントになるにはどうしたらいいんだろうという考えのスタート地点といて書きました。言い切れるハウツーでなくて申し訳ないのですが、この気付きが皆様の思考のトリガーになれば嬉しいです。

 

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窪田健吾 / holo shirts.
オーダーという業態を選んだ時点で「無駄なものを作らない」が頭にありました。これまでもこれからも、ちゃんと袖を通して着倒してもらえるシャツ作りを続けていきたいと思います。