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【実例紹介】打撃向上の秘密は「プロが実践する」見て速く反応する練習



元広島東洋カープ一軍トレーニングコーチ
元ボストンレッドソックストレーニングコーチ

こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。

今回は、プロ野球の一流バッターの視覚トレーニングと、反応速度向上のための具体的な事例について解説します。

豪快なホームランが打てるバッティング力を養いたい。それは、全ての選手、そして全ての親の願いだと思います。

しかし、少年野球や中学野球の選手の場合、思うようにバッティングが上達していないというお悩みを聞きます。

毎日のようにバッティング練習に付き合っているけど、なかなか上達しない…

他の子はドンドンうまくなっているのに、うちの子は…

そんなお悩みを耳にしています。

バッティングは、目で見た情報を的確に全身に伝達し、バットを振るという動作です。専門的には、視覚反応と言いますが、見て反応するスピードと正確さが求められます。

今では、YouTubeなどで簡単に、バッティングの情報が入手できますが、「視覚反応」について詳しく解説しているものは少ないと思います。

さらに、実際にプロ野球の一流選手が行って結果を出している方法となると、ごく限られてしまうと思います。

実際に、「色々と試しているけど、効果のある練習方法が見つからず、遠回りさせてしまっているんじゃないか?」と考えている親がたくさんいます。

もちろん、闇雲に素振りの回数を増やしたとしても、ボールをみる力をつけなければ、結果に繋がりません。

ですから、球界の名伯楽として知られる、内田順三コーチの打撃理論から、一流バッターのボールの見かたを学ぶことは、価値があるはずです。

ということで、今回は一流打者がどのようにして見る力を高めているのかについて、内田順三コーチの打撃理論をもとに解説をします。

内田順三コーチとは、私が広島東洋カープのコーチ時代にご一緒しました。

その指導を間近で見てきましたが、メジャーで活躍をしている鈴木誠也選手をはじめ、これまでに数々の一流打者を育てたことで知られる名伯楽です。

プロ野球で活躍する一流選手は、それぞれに工夫をして試合に臨んでいます。それを知ることで、お子様のバッティングの上達のヒントが得られるはずです。

また、プロ野球選手ならではという情報もお伝えします。

現状の練習では、お子様のバッティングが向上しないという場合には、とても参考になる内容です。

ぜひ、最後までご覧ください。

今回も参照するのは、「プロ野球選手だけに教えてきたバッティングドリル100:KADOKAWA」です。

それでは、始めていきましょう。


どうして「ボールの見かた」が重要か

野球のバッティングは「ボールを正確にとらえる」ことが求められます。

どんなにスイングスピードを速くしても、パワーを付けても、ボールが見えていなければ意味がありません。

もちろん、プロ野球のバッターは、ただ漠然とボールを見ているのではありません。それぞれの「見かた」で、ボールの軌道や変化を予測しています。

つまり、再現性の高い「ボールの見方」を身につけることが、バッティング上達への最短ルートと言えます。


ボールを長く見る

人間の視線は、追う対象より早く動く傾向があります。

そのため、バッターはピッチャーの手からボールが離れたら、球道の3〜4m先を見ることになります。

ピッチャーが投げるボールは、重力によって放物線を描きながら向かってきます。それは、ストレートと変化球では違った軌道になります。

そこで、ボールが向かってくるときの軌道を予測するために「仮想のライン」をつくるトレーニングが重要です。

それについては、「知らないままで大丈夫?打撃向上のための目からウロコが落ちる7つの秘密」で詳しく解説したので確認してください。

ピッチャーがボールを持ったら、その手から目を離すな」というのは野球の鉄則ですね。そこで、常にピッチャーの手から目を離さず、集中して見続けることを習慣にしましょう。

そして、インパクトまで中心視でボールを見る練習を繰り返してください。


ボールのどこを捉えるのか

プロ野球では、フライボール革命といわれ、ゴロよりもフライを打つ考えが広まっています。

これは、メジャーリーグでは、内野も天然芝の球場が増えたことに伴って考えられるようになりました。それは、ゴロは天然芝の影響で打球の勢いが弱まるため、ヒットゾーンが少なくなることから始まりました。

フライを打つためには、ボールの中心より下を打つ必要があります。ボールを地球に例えると、赤道より下を打てば良いといわれます。

プロのバッターが、投球された球道を予測するために、仮想のラインをつくっていることは説明したとおりです。しかし、プロ野球選手であっても、そこまでしっかり見て打つことはできません。

それが、バッティングの難しいところですね。

もちろん、手元まで引きつけて見ていますが、長打が打てた時は、結果的にボールの赤道より下を打っているということになります。


見て速く反応する

見て反応することを「視覚反応」といいます。

野球のバッターに必要な視覚反応を高めるためには、見て単純に反応すれば良いわけではありません。目で球道をしっかり追って、速く判断して打つことが求められます。

ピッチャーが投げるボールは、実際は放物線を描きながら落ちています。それがイメージできていないと、仮想のラインをつくれません。

そこで内田コーチは、ボールをワンバウンドさせ、あえて山なりのボールを打つ練習を考えました。

一般的なティーバッティングではなく3mから5mほどの距離をとって、ワンバウンドさせたボールを打たせる方法です。

その際、バッターはワンバウンドのボールの勢い、コースを見て判断して打ちます。

例えば、

  • バウンドの勢いが緩いから逆方向へ打つ

  • バウンドの勢いが速いから引っ張って打つ

  • バウンドして来たコースが真ん中だからセンターへ打つ

このように、ボールの勢い、コースを見て、瞬時に判断して打つ練習は、ビジュアルトレーニングとして効果的です。


見て速く反応する力を高めた実例

内田コーチは、多くの名選手を育ててきた名伯楽です。

その名だたる選手の中に、首位打者を二度獲得した正田耕三選手がいます。

正田耕三選手

元広島カープの正田耕三選手は、足の速い選手だったため、内田コーチがスイッチヒッターへの転向を勧めました、

もともと右打者でしたから、左打席でプロのスピードに対応するために、通常より短い距離でマシン打撃を繰り返しました。

左打席では、最初は速いボールにバットが当たりませんでした。それが、1週間するとファールチップが当たるようになり、その後はゴロが打てるようになりました。

その後、本来の距離に戻ったときに、打ちに行くための時間、間合いがつくれるようになり、見て速く反応できるようになったのです。

正田選手は、スイッチヒッター転向後、内田コーチと二人三脚で想像を絶する練習量をこなしました。その結果、良い打者の三要素といわれる「スイングスピード、正確性、再現性」が高まったわけです。

正田選手は、タイトルを獲得してからも、その練習を継続して大活躍を続けました。ただ、これは正田選手だからできたことで、誰でもできることではありません。

特に、打撃マシンとホームベースの間に立って打撃練習を行うというのは、あくまでもプロ野球での話です。子どもには、この練習は真似できません。

ここで小中学生の球児に言いたいことは、課題を克服するためには、色々なアイデアを考えて試すことが必要だということです。

正田選手は、プロの速球に対応するために、マシンを使って「見て反応する力」を養いました。

小中学生の場合は、フリーバッティングやバッティングセンターでは、振り遅れても気にせず、自分の2mから3m先までボールを中心視で見られるように練習してください。

それを繰り返すことにより、正田選手のように確実に成長できるはずです。指導者や親は、子どもでも楽しく取り組めるようにアイデアをたくさん持つことが重要です。

その際に、わからないことがあれば、いつでもご連絡ください


一流プロの工夫

プロ野球選手になると、スタメンで出場する選手の他に、代打で出場する選手、代走で出場する選手といったように役割が分けられています。

投手の場合も、先発投手、リリーフ投手、抑え投手と役割分担されています。

そういった選手それぞれに、試合に順応するための工夫があります。

そういったプロ野球選手の工夫も、小学生、中学生の参考になるはずです。


目を環境に順応させる

プロ野球の試合は、主にナイターで行われますが、グラウンド内とベンチ裏では明るさが違います。

例えば代打の選手は、試合中にベンチ裏でバットスイングなどを行いながら準備して、自分の出番を待ちます。

その時のベンチ裏は、グラウンド内とは明るさが違います。グラウンドの方が明るいので、ベンチ裏からグラウンドに出ると、眼が明るさに慣れるまで少し時間がかかります。

私たちは、暗いところから急に明るいところに移動すると、最初は眩しさを感じます。ですが、しばらく時間が経過すると明るさに慣れます。

これを明順応(めいじゅんのう)といいます。

逆に、明るいところから急に暗いところに移動すると、最初は周りが見えにくいですね。でも、時間が経過すると暗さに慣れます。

これを暗順応(あんじゅんのう)といいます。

これらを、光の強さに対する網膜の感覚順応といいます。


目の順応が気持ちに影響する

プロ野球には、一流の代打専門のバッターがいますね。

彼らは、ベンチ裏での準備を行うと、早めにベンチで照明の明るさに慣れておきます。そして、代打を告げられてからも、バッターボックスに入るまで、あえて少し時間をかけるなどしています。

そうやって、目を環境の明るさに順応させる様々な工夫をしているそうです。

また、時間を使うことは、気持ちを整える意味でも有効です。最近の脳科学の進歩に伴い、見るという行為は脳で行われていると考えられています。

そのため、視覚は精神的なストレスに影響を受けます。

準備がしっかりできず弱気な状態では、「見かた」に影響を与え良いプレーができず、結果が出なくなることがあるのです。

また、明るさの違いで眩しさを感じる、暗さの違いで見えにくく感じるなどの準備不足も同様です。

それらも、精神的にストレスを感じる原因となりプレーに影響が出ることがあります。


少年野球や中学野球でも目の準備が必要

プロ野球も、週末はデーゲームの場合がありますね。

その時に気をつけなければならないのが、太陽の位置、雲の位置です。

小中学生の野球の試合は、基本的に日中に行われます。ですから、太陽の位置や雲の状況、そして風の強さといったことを確認しながらプレーすることが必要です。

フライが太陽に重なってしまうと、眩しさでボールが見えなくなります。また、雲と重なるとボールの白色と重なって見えにくくなります。さらに、風が強い場合では、風にボールが流されるので、さらに見えづらくなります。

また、グラウンドの状況によっては、ベンチに日光が差し込み眩しいこともあれば、ベンチ内が陰になり暗いといったことがあります。

少年野球や中学野球は、屋外でプレーします。目を環境に順応させるためには、グラウンドの周囲の状況や天候を含めた環境を、常に確認する習慣をつけることが大切です。

それぞれの状況に応じて、目の準備をすることが、プレー全体の結果に繋がるということを理解しましょう。


今回のまとめ

いかがでしたか?

今回は、元プロ野球コーチ、内田順三氏の打撃理論をもとに、一流バッターが実践する「ボールの見方」について解説しました。

今回お伝えした重要なポイントは、次の3つでした。

  • 仮想のラインでボールの軌道を予測すること

  • 見て速く反応するトレーニングで実践感覚を磨くこと

  • 目を環境に慣らすことで、常に最適な視覚を保つこと

これらを日頃の練習で実践することで、ボールを正確に捉える「目」が鍛えられます。それが、バッティングのレベルアップに繋がります。

ご紹介したように、プロ野球選手が実践している練習や、試合中の工夫を参考にすることが、さらなる上達への近道となるでしょう。

ぜひ、今回の内容を参考に、お子様と一緒に「ボールの見方」を意識した練習に取り組んでみてください。

そして、今回参照した「プロの選手だけに教えてきたバッティングドリル100」を確認しながら練習することが効果的です。

お手元に一冊おいておくことをおすすめします。

今回は以上です。

次回もまた、野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。

野球の上達に関するお悩みや、疑問点などがありましたら、いつでもご連絡ください。

それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。


参考文献:

内田順三著、プロ野球選手だけに教えてきたバッティングドリル100、 KADOKAWA

監修 内田順三、石橋秀幸、スポーツビジョントレーニング基礎と実践、ブックハウスHD


【石橋秀幸プロフィール】

広島県出身 日本体育大学卒。
慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科スポーツマネジメント専修卒。 1987年から2002年まで15年間、広島東洋カープの一軍トレーニングコーチ。
1997年ボストンレッドソックスへコーチ留学。
現在は、神奈川大学人間科学部非常勤講師、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員。
また、2022年11月からホロス・ベースボールクリニック代表として、球児の成長のサポート事業をスタート。
これまでも、プライベートコーチとして、小学生から大人まで、アスリートはもちろん、プロの演奏家へもトレーニングとコンディショニング指導を行う。
講演実績多数。
著書多数。
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