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【素振りを見直す】誰も教えてくれなかった!プロが実践するスイング強化法
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元広島東洋カープ一軍トレーニングコーチ
元ボストンレッドソックストレーニングコーチ
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
今回のテーマは、「残念な素振りにならないために知っておくべきこと」です。
すべての選手が、日々の自主練で素振りをしていると思います。そして、素振りはひとりでしている小学生、中学生が多いのではないでしょうか?
その素振り、正しくできていますか?
もしも、バッティングの成績が思うように上がっていないようなら、素振りのやり方を見直したほうがいいかもしれません。
そこで今回は、正しい素振りの仕方について解説します。
これからお伝えする内容は、35年の指導実績を持つホロス・ベースボールクリニック代表、石橋秀幸の知見をベースに、海外の最新の研究結果を交えて、科学的根拠に基づいた情報をお届けします。
どのようにすれば、スイングの動きをスムーズにできるのか?
何を意識すれば、スイングが変わるのか?
そのあたりを深掘りしていきます。
スイングは、構えからフォロースルーまで、それぞれの動作で意識したいポイントがあります。まずは、それを「知識」として知ることが、成長のカギになると思いますが、どう思いますか?
スイングのチェックポイントは「バッティングフォーム完全ガイド知らないではすまない11のチェックポイント」も参考にすると、さらに効果が高まります。
以前に、小中学生は筋力が十分でないので、大人と同じスイング動作ができないことを「バッティングフォームを劇的に改善する正しい素振りのチエック法」で説明しました。
もしかすると、お子様がひとりで行っている素振りは、「間違った動作の繰り返し」になっているのかもしれません。
ですから、なおさら慎重に素振りをする必要がありますね。
今回の内容を知ることで、年齢や体力レベルに合わせた効果的な練習方法がわかります。また、プロ野球選手も実践する、効果のあるトレーニングテクニックもわかりやすく説明します。
どれも、今日からすぐにでも実践できる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
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素振りは正しい動作の確認作業
素振りは、単にバットを振る練習ではありません。
もちろん素振りは、単なる筋力トレーニングでもありません。
理想的なバッティング動作を習得するために、動作を確認するプロセスだと言えます。
意識的な確認作業を通して、理想的なバッティング動作を体に染み込ませるために、とても大切な練習です。
ですから、素振りで意識したいことを一緒に理解していきましょう。
体の動きをスムーズにつなげる
正しいバッティングフォームは、体の各部がスムーズに連携することで実現します。
「運動連鎖」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。素振りでは、動作のつながりを意識的に確認します。
そして、同じようにスイングできるように繰り返していきます。
下半身の始動から、体幹の回転、腕のスイング、インパクト、フォロースルーまでの流れを意識的に確認してみましょう。
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その練習法については、後ほど説明しますね。
意識してスイングすると、だんだんと各動作のタイミングやつながる感覚がつかめてきます。
その時、ぜひやってほしいのが、ヘルメットをかぶって素振りをすることです。
試合では、ヘルメットをかぶって打席に入りますね。ですから、素振りでもヘルメットをかぶって、実際の打席と同じ感覚でスイングすると効果が高まります。
ヘルメットがない場合は、帽子をかぶるだけでも効果があります。
ぜひ、やってみてください。
ボールの軌道をイメージする
バッティングは、投球されたボールのスピードと軌道に合わせて、スイングを開始しタイミングをとりますね。
素振りでも、投手のモーションをイメージし、投球動作に合わせてスイングを開始することが大切です。
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その時、ボールの軌道を正確に目で追って、その情報をもとにスイングをすることも重要なポイントです。
仮想のボールであっても、軌道をイメージしながらスイングすることで、視覚と体の協調性を強化することができます。
例えば、スイングを開始する2mから3m先に目標物を設置し、スイング中にその目標物をしっかりと見てスイングすることも有効な方法です。
やはり、ヘルメットや帽子をかぶってスイングするのと、何もかぶらずにスイングするのとでは、視線が変わります。
ですから、ヘルメットや帽子をかぶって素振りをすることをオススメします。
なお、ボールの見かたについては、「知らないままで大丈夫?打撃向上のための目からウロコが落ちる7つの秘密」で詳しく解説しましたので、併せて確認してみてください。
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定期的にスイングを確認する
プロ野球選手は、常に自分のスイングを確認し修正を繰り返しています。
今では、動画も簡単に撮影できますから、定期的にスイングを撮影して確認することをオススメしています。
そうすることで、自分がイメージしているようにスイングができているのかを確認することができますね。
例えば、バットのヘッドが下がっているとか、頭が動いているなどといったことに気づき、修正することもできます。
もちろん、動作を細かく分析するためには、専門の知識が必要です。ですが、自分のイメージと実際のスイングを目で見て確認することに、大きな意味があります。
ちなみに動作分析についてですが、
「動作分析のお陰で,欠点が可視化できたので重点的に修正し、明らかに改善され周囲からも褒められるようになりました」
といった報告もいただいていますので、オススメです。
動作分析について詳しく知りたい場合は、ぜひお問い合わせください。
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効果的なスイング練習
これまでの説明で、効果的な素振りのポイントを理解できたでしょうか?
ここからは、それらの知識を活かす方法を確認していきましょう。
バッティングスキルを向上させるための、実践的で具体的な練習方法について解説します。
よくあるスイングの弱点
バットスイングは、下半身からの運動連鎖で行われることが理想です。
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それは、よく耳にすることだと思います。しかし、それには年齢的な要素が大きく関わります。つまり、特に小学生の子どもは、大人と同じ体の使い方ができないという現実があります。
それは、下半身、体幹、腕といった筋力が十分ではないためです。
そのため、強いスイングをしようとすると、腕に力が入ってしまい肩が上がった構えになる選手を見かけます。
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また、下半身の筋力が十分でない子どものスイングは、体幹を早く回転させる傾向があります。
その特徴は、
構えからテイクバックに入る時、キャッチャー側に体を回して反動をつける
その反動を利用して腕の力でバットを振ろうとしている
反動を使うので頭の位置が動いてしまう
骨盤と体幹がほぼ同時に回転を始めるので体が開いてしまう
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ご存知のとおり、スイングは骨盤と体幹を別々に動かすことで連鎖が生まれます。
しかし、特に11歳以下の子どもは筋力が十分でない場合が多いので、その動きができないことを理解する必要があります。
アメリカの先行研究では、12歳以降になると下半身の力も付いてきて、骨盤と体幹を分離して動かせるようになると記されています。
つまり、効果的なバッティングフォームを身につけるためには、年齢や体力に合わせた練習方法を選ぶことが大切だということになります。
体力レベルに合わせる
先ほどの、「よくあるスイングの弱点」のようにスイングをしている場合は、次の練習をしてみることをオススメします。
それは、丹田を意識したスイングです。
構えでは腕や肩に力が入りすぎないことを意識する
軸足は拇指球だけに体重をかける意識ではなく、MP関節全体に体重をかける
丹田に意識を向け、おへそを固定して胸を先に回転させる
その後を追いかけるように腰を回転させる
ポイントは、構えた時のおへその位置をなるべく変えないようにすることです。最初は難しく感じるはずですが、繰り返していくうちにできるようになります。
この練習は、骨盤と体幹を別々に動かすことが目的ですから、最初はゆっくりした動作で感覚を身につけてください。
この動きができるようになると、体の回転力を効率的にバットに伝え、スイングスピードを上げることができます。
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内田式ウォーキングスイング
先ほど、骨盤と体幹を分離させるスイングについて説明をしました。
ただ、バットスイングは次のステップで、下半身から上半身へ力を効率よく伝えることが求められます。
力まずに構え
テイクバックで軸足に重心を移動し
タイミングを合わせてステップし
割れをつくって
振り出してインパクトし
大きなフォロースルー
その詳しいメカニズムについては、「長打が打てる強打者になるためのバッティング完全ガイド」と「一流のプロを育てた飛距離を生み出すスイングの原理」で解説していますので、ぜひ確認してください。
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実際にスイングをする時には、「リズム」「タイミング」そして「バランス」が求められます。
それを子どもに理論で教えても、理解するのは容易ではないでしょう。
そこでオススメするのが、名伯楽、内田順三さんが名だたる選手たちに取り組ませたという「ウォーキングスイング」です。
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これは、現読売巨人軍監督の阿部慎之助さんをはじめ、プロ野球選手が取り組んでいる練習方法です。
まずはリラックスして構える
「イチ」で投手側の足を軽くステップ
「ニーイ」で歩くように軸足を投手側に移動
軸足を着地して体重を乗せる
「サン」で力強くスイング
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実際に、「イチ・ニーイ・サン」と声に出しながらスイングします。すると、リズムを感じやすくなります。
この時、「イチ・ニ・サン」と間がないスイングをするのではなく、「イチ・ニーイ・サン」と「イ」の部分で間を入れることがポイントです。
また、内田式のウォーキングスイングは、一般的なものと違います。
一般的には、「ニーイ」で、軸足を体の後に回すやり方が多いと思います。しかし、内田式は「ニーイ」の時に、軸足を体の前側に回します。それは、その方が軸足に力をためる感覚がつかみやすいと考えるからです。
そして、軸足を体の前側に回す利点は他にもあります。
前側に踏み出すことで、MP関節を中心とした足裏全体で地面をつかむ感覚が身に付くことです。
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実際にやってみるとわかりますが、軸足を体の後ろ側に回すと、お尻のほうへ体重がかかります。
つまり、「カカト重心」になりやすいわけです。これは、フォーム全体のバランスを崩すことにつながりやすくなります。
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カカト重心のスイングでは、アウトコースに対して力が入らないバットの軌道になり、当てるだけのバッティングになってしまいます。
バッティングは、軸足でためたパワーを前足にぶつけるように体重移動することで、インパクトのパワーを生み出しています。
ですから、今回オススメした方法でウォーキングスイングを行ってください。
なお、回数については、体力レベルに応じて決めてください。
目安は、「少し疲れた」と感じる回数です。疲れてくると、体の使い方が変わってきますから、そのまま続けても悪い動作を繰り返すことになってしまいます。
その点は注意してください。
今回のまとめ
いかがでしたか?
今回は、バッティング上達のための、効果的な素振りの仕方について解説しました。
よくある弱点とその改善策、そして内田式ウォーキングスイングなどの具体的な練習方法について説明しました。
これらのポイントを意識して素振りをすることで、スイングの質を高め、バッティング技術の向上につなげることができます。
今日から実践できる内容ばかりですので、ぜひお試しください。
それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。
次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。
野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡ください。
あなたからのご連絡をお待ちしています。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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参考文献:
内田順三著、打てる、伸びる!逆転の育成法、廣済堂出版
内田順三著、プロ野球選手だけに教えてきたバッティングドリル100、 KADOKAWA
内田順三著、二流が一流を育てる ダメと言わないコーチング、KADOKAWA
石橋秀幸著、レベルアップする!野球 科学・技術・練習、西東社
Tsutsui T, Sakata J, Sakamaki W, Maemichi T, Torii S. Longitudinal changes in youth baseball batting based on body rotation and separation. BMC Sports Sci Med Rehabil. 2023 Nov 28;15(1):162. doi: 10.1186/s13102-023-00774-5. PMID: 38017563; PMCID: PMC10683358.
Szymanski DJ, DeRenne C, Spaniol FJ. Contributing factors for increased bat swing velocity. J Strength Cond Res. 2009 Jul;23(4):1338-52. doi: 10.1519/JSC.0b013e318194e09c. PMID: 19528868.
【石橋秀幸プロフィール】
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広島県出身 日本体育大学卒。
慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科スポーツマネジメント専修卒。 1987年から2002年まで15年間、広島東洋カープの一軍トレーニングコーチ。
1997年ボストンレッドソックスへコーチ留学。
現在は、神奈川大学人間科学部非常勤講師、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員。
また、2022年11月からホロス・ベースボールクリニック代表として、球児の成長のサポート事業をスタート。
これまでも、プライベートコーチとして、小学生から大人まで、アスリートはもちろん、プロの演奏家へもトレーニングとコンディショニング指導を行う。
講演実績多数。
著書多数。
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