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【実践指導】打撃でうまくいかない内外角打ちの具体的な攻略法



元広島東洋カープ一軍トレーニングコーチ
元ボストンレッドソックストレーニングコーチ

こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。

今回は、投球されたコースを、上手に打ち分ける方法について解説します。

内角や外角のボールに対して、コースに逆らわずに打てる打者になりたいですよね。では、広角に打つには、どのようなバッティングフォームが理想的なのでしょうか?

これまで、何度もお伝えしている、インサイドアウトやレベルスイングは、大原則として変わりません。でも、インコースとアウトコースでは、体の使い方が違うのを知っていましたか?

特に少年野球や中学生の選手の場合、インコースに詰まってしまう選手が多いのではないでしょうか。そして、アウトコースだと、強い打球が打ち返せないことが多いと思います。

そもそも、リリースされたボールは、およそ0.5秒でキャッチャーに到達します。ですから、打者がスイングを開始するまでの時間的な余裕は、0.3秒程度しかありません。

その短い時間の中で、コースや球種を判断し、ストライクかボールかを見極めなければならないのです。

やはり、理にかなったスイングを身につけないと、打撃を上達させることはできません。

さらに、内角と外角の違いによって、体の動きを使い分けないと、コースに対応したバッティングが難しくなります

ということで、今回は、内外角を広角に打ち分けるバッティングのメカニズムについて解説をします。

これまで、内外角を上手に打てていない場合には、とても参考になる内容です。

例えば、バッティングで力をもっとも発揮できる「腕の形」がありますが、それを知っているでしょうか?

そのほかにも、プロ野球選手も実践している練習方法を紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。


内外角を打ち分けられない原因

小中学生の選手が、内外角を打ち分けられない原因は、たくさんあります。

それは、技術的な問題はもちろん、メンタル面も影響しています。

例えば、インコース高めのストレートに対しては、恐怖心から腰を引くようなスイングになってしまうことが、あるのではないでしょうか?

アウトコースに関しては、目から遠いボールですから、第一にしっかり中心視でボールを見続けることが難しくなります。

そして、後で説明する「腕の形」も影響してしまいます。

それでは、ひとつずつ解説していきます。


体の開きが早い

内外角を打ち分けられない原因のひとつ目は、体が開いてしまうことです。

これは、野球初心者は特に顕著ですが、多くの小中学生にとってバッティングでの問題点です。

これは、アメリカの先行研究でわかっていることですが、年齢が低くなるほど、バッティング中に骨盤の回転角度が大きく、投手に向かう速度も高いと報告されています。

プロ野球選手のバッティングを見ると、構えから軸足を踏み出す移動段階で、体重を軸足にグッとかけます。そして、体幹をわずかですが、捕手の方に向けます。

これが、いわゆる「割れ」です。

割れを例えるとすると、体全体でバネをつくるようなもので、体全体の力をつなげて、効率よくバットを振る秘訣になります。

ですが、少年野球や中学生選手は、筋力やコーディネーション能力、運動機能が未発達です。

ですから、体重の移動中に、顔を投手に向けたままで、腕と体幹をキャッチャーに向ける、割れや間をつくることがうまくできません。

それが、体の開きが早くなる原因です。

体の開きが早いと、アウトサイドインのスイングになりやすく、内角に対応できず、外角のボールにバットが届きにくくなってしまいます。


下半身の使い方が悪い
内外角を打ち分けられない原因のふたつ目は、下半身にあります。

バッティングは、下半身で生み出した力を、体幹の回転を通じて腕からバットに伝達しています。土台となる下半身が安定することで、強い打球を生み出すことができます。

下半身が安定しないと、軸足の踏ん張りが弱くなり、体幹がブレてしまいます。

体幹がブレると、スイング中にバランスを崩しやすくなります。それは、先ほどお話をした、体の開きや頭が動くといったことに繋がり、安定したスイングができません。

バッティングは、下半身から体幹、そして腕へと力がスムーズに伝わる運動連鎖が重要です。下半身が安定せず、バランスが崩れると、この運動連鎖がうまく機能しません。

では、どうすればいいのかといった点については、後半でお伝えします。


経験不足

内外角を打ち分けられない原因として、経験不足というのは大きなポイントですね。

野球を始めた初心者はもちろん、しばらく経っている場合でも、特に小学生は、試合でコースを打ち分けられた経験が少ないでしょう。また、日頃の練習でも、効果的な方法が見つかっていないかもしれません。

経験が少ないと、やはり打席での緊張が高まります。すると、グリップを握る手が力みすぎていたり、適切な体重移動ができなかったりします。

さらに、経験不足の選手の場合は、カウントやランナの有無などの状況判断が難しいことが多いと思います。

例えば、2ボールノーストライクのような、打者有利なボールカウントでも、思いきって振りにいけない選手を目にしてきました。

これは、練習と試合で、成功体験を重ねていくしかないですが、日頃から、練習の方法を工夫していく必要がありますね。

バッティングの向上については、これまでにたくさんの情報を公開していますので、気になる内容をチェックしてみてください。


内外角を広角に打ち分けるには

内外角のコースを広角に打ち分けるには、先ほどお話をした原因を克服しながら、練習を重ねる必要があります。

小中学生の場合は、これまでも何度もお伝えしているように、基礎体力が十分に備わっていないことが考えられます。ですから、まずは基礎体力を高めるトレーニングをしていきましょう。

なお、基礎体力については、「野球の4大スキルを高める基礎知識」で解説をしていますので、こちらも併せて確認してください。

そして、バッティングの基本的なメカニズムを理解して、インサイドアウトのスイングで、レベルに振れるように練習をしていきましょう。

内外角のを打ち分ける上でも、その基本は変わりませんが、やはりメカニズムがあります。


打ち方のメカニズムを知る

内外角のコースを広角に打ち分けるポイントは、「両腕の形」です。

どういうことか説明します。

ボールをインパクトする時、両腕の力でバットに力を加えています。その時の理想的な形を知ることが、広角に打ち分けるスイングにつながります。

例えば、ド真ん中のボールのインパクトの形を見てみましょう。

両腕のヒジが、軽く曲がっていて、そこからボールを押し込むことができる形になっています。

この形が、最もボールに力を加えることができる、理想的な形といえます。

プロ野球選手のインパクトの形を見ると、このような形になっていることがわかるはずです。

インパクトでヒジが深く曲がりすぎていると、いわゆる「差し込まれた」形になり、力が入りません。

逆に、ヒジが伸び切った形では、「手打ち」になり、投球されたボールの球威に負けてしまいます。

出所:レベルアップする!野球 科学・技術・練習

「もう悩まない!ミート率が上がらない3つ理由と解決法&練習法」でお伝えしたように、インサイドアウトのスイングで、グリップが体の近くを通ることで、理想的なインパクトの形ができます。

インサイドとアウトサイドを打ち分ける時も、強いインパクトの形をつくり、ボールをミートすることがポイントになります。

では、そのためには、どのような体の使い方になるのでしょうか?


内角の体の使い方

内角のボールを打つ時も、真ん中のボールを打つ時と同じ両腕の形で、打つようにしましょう。

実際に、真ん中のインパクトの形のまま、インサイドのミートポイントで、インパクトの形をつくってみてください。

出所:レベルアップする!野球 科学・技術・練習

すると、真ん中よりも体を回転させて、ボールを投手寄りでとらえる形になるはずです。

投手寄りでボールをとらえるということは、その分だけ、鋭く速い回転でスイングする必要があります。つまり、ボールを前でとらえる分だけ、時間的な余裕が少ないことになります。

そのため、下半身からの運動連鎖を、より強く意識する必要があります。その際、より強く回転するために、軸足のカカトを強く蹴り上げて、スイングスピードを上げます。

出所:レベルアップする!野球 科学・技術・練習

また、バットが体の近くを通るようにスイングし、ヘッドをレフト方向に伸ばすイメージで振り抜きましょう。


外角の体の使い方

外角のボールを打つ時も、内角と同様に、真ん中のボールを打つ時と同じ両腕の形で、打つようにしましょう。

内角の時と同様に、真ん中のインパクトの形のまま、アウトサイドのミートポイントで、インパクトの形をつくってみてください。

すると、真ん中よりも体の回転をおさえて、ボールを捕手寄りでとらえる形になるはずです。

出所:レベルアップする!野球 科学・技術・練習

外角のボールは、内角打ちほどは体の回転が使えません。そのため、ボールに力を伝えにくくなります。

小中学生の選手の場合、腕が伸び切った形になってしまうことが多く、弱い打球になることが多いです。また、捕手寄りの肩が下がってしまい、バットのヘッドが下がってしまう傾向があります。

ですから、普段よりも捕手寄りの肩が下がらないように意識する必要があります。例えば、インパクトに向けて、上から叩くようなイメージをすると良いでしょう。

そして、バットのヘッドをライト方向に押し付けるイメージで、フィニッシュに向かいます。

もちろん、外角を打つ時も、下半身からの運動連鎖で打つことは変わりません。

ただ、外角のボールには、軸足のカカトを地面に押し付けるようにして、投手の球威に負けないようにしましょう。

出所:レベルアップする!野球 科学・技術・練習

効果的な練習法

内外角を上手に打ち分ける効果的な練習は、はじめにお話をした「ウイークポイント」を克服することです。

そのためには、繰り返しになりますが、理想的なスイングのメカニズムを習得することが重要です。

それらは、「ヘッドスピードを上げて飛距離アップ!3つの秘訣」「打撃フォーム!弱いスイングを強いスイングに変える3つのカギ」など、以前の情報を併せてご確認ください。

バッティングの上達は、一朝一夕というわけにはいきません。でも、焦る必要はありません。少しずつ、自分の体に動きを覚えさせていきましょう。

適切な練習を繰り返せば、着実に上手くなっていきます。


コース別のミートポイントで打ち分ける

内外角を打ち分けるスキルを身につける第一歩は、それぞれのミートポイントを知ることです。

ミートポイントは、腕の長さなどの身体的特徴によって、それぞれに違ってきます。ですから、自分にとって理想的なミートポイントを確認する作業から始めましょう。

まずは、ド真ん中のインパクトの形を確認します。

その時、ゆっくりと下半身からの動きをつくり、バットを体の近くに通しながらインパクトの形をつくります。
そして、

  • 体が開きすぎていないか

  • 軸足のカカトの動きはうまくできているか

  • 両腕は適度に曲がっているか

  • 捕手寄りの肩が下がりすぎていないか

といった点をチェックしてみましょう。

ど真ん中のインパクトの形がチェックできたら、インサイドとアウトサイドそれぞれに、自分のミートポイントをチェックします。

ミートポイントがチェックできたら、ティースタンドをミートポイントに置いて、実際にボールを打ってみます。

ただ、実際にボールを打つ練習は、自宅でできる人が限られてくるとは思います。ボールを打つことが難しい場合は、ティースタンドだけを置いて素振りをしてみましょう。

また、バッティングセンターによっては、ティーバッティングができるケージが借りられることがあります。

一度、チェックしてみてはいかがでしょうか?

ティースタンドを使ってボールを実際に打つ時は、ボールの飛んでいる方向を確認することも忘れずに行いましょう。


動くボールを打ち分ける

ティースタンドを使った練習で、それぞれのミートポイントがつかめてきたら、動くボールでも練習をしていきましょう。

ただし、この練習は、普段行っているティーバッティングとは違うので、自宅でできる人は限られると思います。ですから、基本的にはチーム練習で行うようになるかと思います。

具体的には、斜め手前からトスするのではなく、防球ネットを利用して、できる限り投手方向からトスをします。

トスする人は、コースを投げ分けます。最初は、「インコース行くよ」などと、インコースかアウトコースかを指示して行うのも良い方法でしょう。

やはり、スイングの基本をチェックしつつ、体の動きを感じながら練習することが、上達のポイントです。

親や指導者が、口で説明することも必要でしょうが、教えられたことは、忘れてしまうことが多いのが子どもです。

うまく打てた時の体の使い方を再現できるように、「意識しなくてもできる」ように、動きを体にインプットしていきましょう。

その時に、バッティングフォームを動画で撮影できると、フォームをチェックしながら練習ができ、すぐに改善も可能です。

そして、最後はチーム練習でのフリーバッティングです。

ピッチャーの投げたコースに応じて、打ち分けてみましょう。


基本は素振りから

小中学生が日常的にできる練習は、やはり素振りだと思います。

「もう悩まない!ミート率が上がらない3つ理由と解決法&練習法」でもお伝えしましたが、試合で結果を出すためには、普段の素振りで「イメージ」することです。

試合を想定し、マウンドにいる投手をイメージしましょう。そして、球種やコースを打ち分けるように素振りをします。
以前に「運動オンチを克服して野球スキルを高める最新情報」でお伝えしましたが、運動技能習得の仕組みは、次のとおりです。

  1. わからないからできない

  2. わかっているができない

  3. 意識すればできる

  4. 意識しなくてもできる

初心者なら「わからないからできない」でしょうし、なかなか上達を感じていないようなら、「わかっているができない」のかもしれません。

今のレベルを知り、段階に応じた練習をすることで、子どもも楽しみながら上達できるはずです。

平日は、子どもの練習に付き合えないかもしれません。そうなると、子どもの自主性に委ねることになります。

少なくとも、イメージをしながら素振りをすることは、忘れないように伝え続けましょう。


今回のまとめ

いかがでしたか?

今回は、内外角を上手に打ち分ける、バッティングの秘訣をお伝えしました。

小中学生は、体の開きが早い、下半身の使い方が悪い、経験不足といった原因があることをお話ししました。

それらを克服しつつ、バッティングを向上させるには、両腕の理想の形を身につけることが大切です。

内角は体の回転を速く、外角では回転を抑えるなど、コースに応じた体の使い方を意識しましょう。

その効果的な練習法として、ティースタンドを使ったミートポイント確認の方法や、動くボールを使った練習、そしてイメージを伴う素振りといった練習法を紹介しました。

バッティングの上達には時間がかかりますが、焦らず継続的に取り組むことが重要です。

お子様の成長に合わせて、基礎体力を高めながら段階的に練習を進めてください。

適切な練習を繰り返すことで、必ず上達していきます。

それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。

今回は以上です。

次回もまた、野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。

野球の上達に関するお悩みや、疑問点などがありましたら、いつでもご連絡ください。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。


参考文献:

石橋秀幸著、レベルアップする!野球 科学・技術・練習、西東社 

内田順三著、プロ野球選手だけに教えてきたバッティングドリル100、 KADOKAWA

内田順三著、二流が一流を育てる ダメと言わないコーチング、KADOKAWA

内田順三著、打てる、伸びる!逆転の育成法、廣済堂出版

立浪和義著、長打力を高める極意、廣済堂出版

Tsutsui T, Sakata J, Sakamaki W, Maemichi T, Torii S. Longitudinal changes in youth baseball batting based on body rotation and separation. BMC Sports Sci Med Rehabil. 2023 Nov 28;15(1):162. doi: 10.1186/s13102-023-00774-5. PMID: 38017563; PMCID: PMC10683358.


【石橋秀幸プロフィール】

広島県出身 日本体育大学卒。
慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科スポーツマネジメント専修卒。 1987年から2002年まで15年間、広島東洋カープの一軍トレーニングコーチ。
1997年ボストンレッドソックスへコーチ留学。
現在は、神奈川大学人間科学部非常勤講師、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員。
また、2022年11月からホロス・ベースボールクリニック代表として、球児の成長のサポート事業をスタート。
これまでも、プライベートコーチとして、小学生から大人まで、アスリートはもちろん、プロの演奏家へもトレーニングとコンディショニング指導を行う。
講演実績多数。
著書多数。
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■石橋秀幸これまでの業績:
https://holosbc.com/achievements-of-hideyuki-iishibashi/
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