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ホームランを打つための理想的なスイング軌道とは【U字型軌道で飛距離アップ】
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元広島東洋カープ一軍トレーニングコーチ
元ボストンレッドソックストレーニングコーチ
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
今回のテーマは「お子さんがホームランを打つための理想的なスイング習得法」です。
「うちの子にもホームランを打たせてあげたい…」
「バッティング練習は一生懸命やっているのに、なかなか遠くまで飛ばない…」
そんな声をよく耳にします。
指導者の中には、「飛距離が出せるのは天性の素質」だという人もいます。
でも、本当でしょうか?
昨年、中日ドラゴンズの田中幹也選手が、166センチという身長でホームランを2本打っています。
このことからもわかるように、正しいスイング技術があれば、体格に関係なく飛距離は伸ばせるのです。
ところが、小中学生の多くが「アッパースイング」で打とうとしています。打球を遠くまで飛ばそうと、バットを下から振り上げているのです。
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でも、プロ野球選手を分析すると、一流選手に共通する、ある特徴が見えてきました。
そこで今回は、小中学生のために、次の大切なポイントをお伝えします。
ホームランを打つための理想的なスイング軌道とは
小中学生に適した効果的な練習方法
大谷翔平選手に学ぶ、正しい重心移動の習得法
これらは、私の35年以上の研究と指導経験、そしてプロ野球選手の分析から得られた実践的なノウハウです。さらに、海外の最新情報も交えてお伝えしていきます。
今回の内容は、お子さんの飛距離を伸ばしたい方にとって、とても大切な情報です。
小中学生の今は、正しいスイングの基礎を身につける大切な時期です。
そのための大事なポイントをお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
飛距離アップのバッティングテクニック
お子さんがホームランを打つ姿、見たいですよね。
それを叶えるカギになるのは、打点とスイング軌道です。ボールの中心よりも少し下を狙うことで、理想的な打球が生まれます。
この打点で打つことができれば、打球は35度から45度で上がり、より遠くまで飛ばせます。
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そのメカニズムについては、「飛距離UPは”振り出し45度”が一流プロの共通点」で解説しましたので、併せて確認してみてください。
ただし、飛距離を伸ばすスイング理論には、いくつかの考え方がありますね。では、お子さんは、どの理論を取り入れて練習すれば良いのでしょうか?
ズバリ言うと、成長段階に合った方法を選ぶ必要があります。
そこで、これから小中学生に実践できる、具体的な方法を解説していきます。
U字を描くスイング軌道でボールを捉える
ホームランを打つには、U字を描くスイング軌道を身につけることが必要です。
「U字を描くスイング軌道」というのは、初めて聞くかもしれませんね。でも、このスイングなら理想的な打球が生まれます。
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ボールの中心より少し下を打つと、飛距離がアップします。でも、この打点を正確にとらえるのは簡単ではありません。
打点が下すぎればポップフライになり、上すぎればゴロになってしまいます。中心をたたくとライナーになりますが、ホームランの軌道にはなりにくいです。
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硬式球の場合、直径わずか約7.3センチ。狙った所を打ち抜くには、正確なスイング軌道を身につける必要があります。
飛距離を出すために、ボールの下をたたこうとすると、アッパースイングになりがちだと思います。ご存知かもしれませんが、実はアッパースイングを勧める指導者もいますね。
でも、プロ野球選手を分析すると、一流選手に共通するのは、U字を描くスイング軌道です。
インサイドアウトでスイングすることで、バットはU字を描きます。これが理想的な軌道なのです。
トップから振り出す時は、グリップを体の軸に対して45度の角度で入れましょう。すると、グリップは体の近くを通り、バットヘッドが遅れて出てきます。
この時のバットは、次のような軌道を描きます。
まず、トップからグリップが45度の角度で下がってきます
次に、ヘッドが地面とほぼ平行に移動します
そして、インパクトを境にヘッドは上へ抜けていきます
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地面とほぼ平行な部分があることで、ボールを正面から捉えやすくなります。
インパクトの直後に、バットヘッドがグリップを追い越します。この瞬間、トップハンドを押し出しながらヒジを伸ばせば、強い当たりが生まれます。
ちなみにトップハンドは、右打者なら右手、左打者なら左手のことです。
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理想的なフォロースルーは、インパクトの直後に手首を返してヘッドを上げることです。「バットが立っている」という表現を聞いたことはありませんか?
これは、インパクト後にバットが上向きになることで、ボールに角度がついて上に飛んでいくのです。
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でも、これはアッパースイングとは違います。アッパースイングは最初から下から上に向く軌道だからです。
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この理想的なスイングには、他にもコツがあります。それは、「手の力を抜く」ことです。力が入りすぎると、手首が硬くなってしまいます。「バットは柔らかく握って」とよく言われますが、これが理由です。
力を抜いた方が、インパクト後にバットが立ち、強い当たりが生まれます。
プロ野球選手の中には、このバット軌道を特に重視する選手もいます。中には、U字ではなく「V字」に近い鋭い動きを意識する選手もいます。
ただし、こうした鋭角的な動きには、前腕や体全体の強い筋力が必要です。
では具体的に、V字のようなスイングには、どれくらいの体格が必要なのでしょうか。
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参考までに、プロ野球選手を例にお伝えしましょう。
パワーを生む体格とスイングの関係
プロの選手のようなV字に近いスイングは、強靭な体があってこそできる技です。
今回は、このようなスイングを意識しているプロ野球選手がいることを知って欲しいので紹介しました。ただし、現段階で小中学生にはお勧めしません。
なぜなら、筋力が十分に発達していない時期にこのスイングを試みても、バットヘッドが下がりやすくなります。そうすると、いいバット軌道が描けず、ゴロや空振りになってしまうからです。
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将来的に、プロ野球選手のような体になれるように、段階的にトレーニングを積んでいきましょう。
たとえば、プロのホームランバッターの前腕は、ほとんどの選手が35cm以上あります。
実際にお子さんの腕の太さを測ってみてください。ホームランバッターの腕の太さに驚かれるはずです。
二の腕はそれ以上太く、胸囲に至っては110cmを超えるほどです。
このような鍛え上げられた体があるからこそ、V字のようなスイングが可能になるのです。
では、お子さんに今意識してほしいことは何でしょうか?
それは、先ほどお伝えした45度の振り出しです。たとえ今はゴロが多くても、この基本をしっかり身につけましょう。
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将来、体力がついてくれば、打球は自然と上がっていきます。
ここで特に気をつけてほしいのが、アッパースイングです。打球を上げようとして、バットを下から振り上げるのだけは避けましょう。
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本格的な筋力トレーニングは、成長期が終わってから始めれば十分です。
アメリカの研究でも、選手の年齢や熟練度によって適切な練習方法が変ることが示されています。高校生の選手であっても、筋力とスイングスピードは、まだ発達途中なのです。
そのため、小中学生の時期は、基本的な体づくりを重視しましょう。「アニマルトレーニング」など、全身の調和を意識した運動がおすすめです。
スキルアップには順番があります。まずは基本に忠実なフォームをしっかり身につけてほしいと思います。
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そうすれば、将来、大谷翔平選手のようなダイナミックなスイングも夢ではありません。
なお、スイングを全体的に再確認したい方は、「知らないではすまない11のチェックポイント」をご覧ください。
軸足でパワーをボールに伝える
ホームランを打つには、スイングスピードを上げることが大切です。
では、お子さんのスイングスピードを上げるには、どうすれば良いのでしょうか?カギを握るのは、体幹と下半身の筋力です。
アメリカの研究で、スイングのスピードアップには、体幹の回転力が必要だとわかっています。
体幹を鋭く回転させるためには、それを支える下半身の力も重要になってきます。
バッティングの理想的な体重移動は、
始動の時は軸足に体重を乗せます
インパクトに向かう時は、踏み出した足に体重を移します
そして、スイングを終えた時には、再び軸足に戻ってきます。
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大谷翔平選手のスイングを見ると、インパクトの後は、体が少し反るような形になっています。そして注目してほしいのは、軸足のふくらはぎです。しっかり体重を支えています。
つまり、軸足がガンとして動かないことが重要なのです。
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でも、小中学生のスイングを見ると、軸足が浮いたように打っていることが多いです。
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そこで、まずは素振りから意識してみましょう。
振り切った後も軸足が動かないように、気をつけてスイングしてみてください。
軽めのバットで理想のスイングを手に入れる
プロ野球選手のスイングは、一見それぞれに個性があるように見えますね。
でも、基本となる部分は共通しているのです。お子さんに意識してほしいポイントは2つです。
1つは、振り出しでバットを45度の角度に入れること。もう1つは、振り終わった時に軸足を動かさないことです。
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その練習をするときのポイントは何でしょうか?おすすめは、まずは軽めのバットで素振りをすることです。
「強い打球を打つ」「飛距離を伸ばす」。そう考えると、お子さんに重いバットを振らせたくなると思います。
でも、重いバットにこだわる必要はありません。なぜなら、小中学生は、まだスイングが完成していない時期だからです。
今は、インサイドアウトでU字軌道のスイングを身につけることを最優先にしましょう。中学生なら、小学生の時のバットで練習してもOKです。小学生なら、プラスチックのバットでも構いません。
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さらに効果的な練習方法があります。それは、スローモーションでの素振りです。ゆっくりとバットの軌道を確認しながら、体の使い方を覚えていきましょう。
ただ、このスローモーションスイングは、簡単ではありません。でも、体に正しい動きを覚えさせる効果が期待できます。
スローモーションスイングについては、「では、どうすれば初心者の野球スキルは上達するのか?」で練習方法を紹介しています。
ぜひ、試してみてください。
今回のまとめ
いかがでしたか?
今回は、ホームランを打つための理想的なスイングについて解説しました。
ポイントを3つにまとめます。
U字を描くスイング軌道を身につける
まずはトップから45度の角度で振り出すことが基本です。年齢に合った練習方法を選ぶ
小中学生の時期は、重いバットにこだわる必要はありません。軽めのバットで基本フォームをしっかり習得していきましょう。体重移動を意識する
特に、フォロースルーでは、軸足に体重を戻すことが大切です。ふくらはぎで体重をしっかり支えながら素振りをしましょう。
段階的に練習を積み重ねることで、必ずスイングは良くなっていきます。お子さんの成長に合わせて、一緒に楽しみながら取り組んでいきましょう。
それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。
次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。
野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡ください。
あなたからのご連絡をお待ちしています。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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参考文献:
石橋秀幸著、レベルアップする!野球 科学・技術・練習、西東社
石橋秀幸著、野球体をつくる、西東社
内田順三著、プロ野球選手だけに教えてきたバッティングドリル100、 KADOKAWA
Punchihewa NG, Miyazaki S, Chosa E, Yamako G. Efficacy of Inertial Measurement Units in the Evaluation of Trunk and Hand Kinematics in Baseball Hitting. Sensors (Basel). 2020 Dec 20;20(24):7331. doi: 10.3390/s20247331. PMID: 33419341; PMCID: PMC7766213.
Tsuchikane R, Higuchi T, Suga T, Wachi M, Misaki J, Tanaka D, Miyake Y, Isaka T. Relationships between Bat Swing Speed and Muscle Thickness and Asymmetry in Collegiate Baseball Players. Sports (Basel). 2017 Jun 2;5(2):33. doi: 10.3390/sports5020033. PMID: 29910393; PMCID: PMC5968998.
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【石橋秀幸プロフィール】
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広島県出身 日本体育大学卒。
慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科スポーツマネジメント専修卒。 1987年から2002年まで15年間、広島東洋カープの一軍トレーニングコーチ。
1997年ボストンレッドソックスへコーチ留学。
現在は、神奈川大学人間科学部非常勤講師、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員。
また、2022年11月からホロス・ベースボールクリニック代表として、球児の成長のサポート事業をスタート。
これまでも、プライベートコーチとして、小学生から大人まで、アスリートはもちろん、プロの演奏家へもトレーニングとコンディショニング指導を行う。
講演実績多数。
著書多数。
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