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【徹底解説】打撃フォーム!弱いスイングを強いスイングに変える3つのカギ



元広島東洋カープ一軍トレーニングコーチ
元ボストンレッドソックストレーニングコーチ

こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。

今回は、「子どもは、なぜ強いスイングができないのか?」について考えていきたいと思います。

うちの子、バットにボールが当たっても全然飛ばない…
強いスイングって、どうすればできるんだろう?

野球初心者はもちろん、小中学生の選手の親の多くは、このようなお悩みがあるのではないでしょうか?

実際に、少年野球や中学野球の選手を指導していると、スイングが弱いと感じることが多いです。

強いスイングは、野球選手にとっての永遠のテーマですね。ですが、闇雲に練習するだけでは、なかなか効果は得られません。

バッティングは、下半身と上半身がそれぞれに動きながら、全身の力を絡み合わせて行う複雑な回転運動です。

ですから、バッティングには、注意すべきポイントがたくさんあります。

もちろん、それらの注意すべきポイントがわからなければ、強いスイングはできません。ですが、これからお話しする内容がわかり、練習を重ねることで、強いスイングができるようになります。

強いスイングができるようになれば、飛距離のある打球を打つことができます。

ということで、今回は「子どもは、なぜ強いスイングができないのか?」について解説していきます。

うちの子は、スイングスピードが上がらず打球が弱い」と思われている方や、「体の使い方が分からず、自己流で練習している」という方には、とても参考になる内容になっています。

小中学生の選手が、強いスイングができない原因究明から、具体的な解決方法、メンタルのことまで、分かりやすく解説していきます!

ですから、ぜひ最後までご覧ください。


なぜ強く振れないのか?原因を徹底解剖

強いバットスイングをするためには、いくつもの大切なことがあります。

最も重要なポイントは、「体の使い方が間違っていないか?」ということです。

その点がわからずに、ただ「ボールを遠くに飛ばすつもりで思いっ切り振ろう」と、フルスイングをするように指導していませんか?

そうだとしたら、強く振れる理想的なスイングは身につきません。


子どもが強く振れないよくある理由とは?

強いスイングができない一番の理由は、基礎体力が備わっていないことがあげられます。

基礎体力については、「野球のスキルを科学的に伸ばすICT活用例」でわかりやすく解説をしていますので、確認してみてください。

基礎体力には、バランス能力、柔軟性、筋力、そして有酸素性能力の4要素があります。

小中学生の場合は、バットを強く振る「筋力」が不足していることが考えられますね。

また、強いスイングをするためには、フラつかないバランス能力も必要です。そして、股関節や肩まわりであったり、胸の回転に必要な柔軟性も必要です。

これらの、基礎的な要素については、「フィジカル・コンディショニングチェック」で現状を知ることが必要になります。

フィジカル・コンディショニングチェックについては、こちらで詳しく解説をしています。

そのほか、子どもが強くスイングできない理由は、スイングの軌道が間違っているケースがあります。

これも、基礎体力の要素が影響しているのですが、「アウトサイドイン」のスイングになっている選手が多いです。

アウトサイドインのスイングは、スイングスピードが遅くなるだけでなく、ミート率も低下してしまいます。

さらには、タイミングが上手に取れないことも、強いスイングができない原因になります。


強いスイングに欠かせない3つのポイント

強いスイングをして、鋭い打球を飛ばすためには、バットとボールが強いインパクトを起こすことが求められます。

これには、

  1. スイングのスピード

  2. バットの重さ

  3. 運動連鎖

の3つのポイントがあります。

どういうことか説明すると、重いバットを速く振れるようになれば、ボールとバットが当たる衝撃が強くなり、強い打球が打てるということです。

そのためには、先ほど説明した基礎体力に加え、野球の専門体力となる、スイングの運動連鎖を習得する必要があります。

運動連鎖については、後ほど解説をします。

ちなみに、バットの重さについてですが、体に合っていないバットを振っている選手を見かけます。

身長が135センチの選手と160センチの選手では、バットの長さも重さも違って当たり前です。

重さについては、

  • 小学生:650〜700グラム

  • 中学生:720〜800グラム

こちらを、ひとつの目安として考えてください。

できれば、実際にバットを振ってみて、重すぎないバットを選ぶようにしてください。


スイングスピードを劇的に上げる「回転の法則」

バットスイングの運動連鎖を習得するときに、回転の法則をわかっていると、上達が加速します。

回転運動の速度は、回転半径の2乗に反比例して速くなります。

難しいことは覚える必要はありませんが、体の軸とグリップの距離が近いほど、スイングスピードが上がるということを覚えておきましょう。

筋力の弱い小中学生の場合、スイングの際に体の軸からグリップが離れすぎてしまう選手がいます。

それは、体に合わない重いバットを振っていることや、繰り返しになりますが、正しいスイングの仕組みが理解できていないことが原因として考えられます。

スイングの早い段階で、体の軸からグリップが離れるというのは、アウトサイドインのスイングですから、強いスイングができません。

回転の法則は、フィギュアスケートのスピンをイメージするとわかりやすいのではないでしょうか。

速いスピンをする時は、腕を縮めて回転半径を小さくしています。逆に、腕を広げて回転半径を大きくすると、回転スピードが遅くなりますが、一度は目にしたことがあると思います。

このように、スイングスピードも体の軸とグリップの距離によって変化するのです。


小中学生でもできる!強いスイングを身につける方法

少年野球や中学野球の選手が、強いスイングを身につけるためには、スイングスピードを速くする必要があります。

そのためには、回転の法則を理解して、振り出しからのグリップの位置が、体から離れないように意識します。

そして、下半身からの運動連鎖の感覚をつかんでいくことが求められます。

なお、振り出しからのグリップの動きについては、「もう悩まない!ミート率が上がらない3つ理由と解決法&練習法」を参照してください。


体重移動のテクニックでパワーを引き出そう

バッティングでは、強力なスイングを生み出すための「体重移動」が重要な要素です。

具体的には、テイクバックした際に体重を軸足側の骨盤に乗せ、ステップと同時に前側の骨盤へ体重を移動していきます。 

左右の骨盤に乗りステップするというのは、左右交互に骨盤に体重をかけながら移動する「歩く」動作とよく似ています。

 つまり、普段からスムーズに歩けている人であれば、体重移動の感覚は身についていると言えるでしょう。

体重を軸足側から前側に移動しながら、体幹、上半身をスムーズに動かすことで、スピードのあるスイングができます。

この時、体のさまざまな筋肉の動きが連なっていくことを「運動連鎖」と言います。

  • 構え
    両足に均等に体重をかけ、リラックスして広い視野でピッチャーを見る。

  • テイクバック
    タイミングを取るために踏み込み足を上げ、軸足に体重をのせる。

  • トップ
    軸足に乗った体重が、体幹と踏み込み足に戻り始める。踏み込み足が着地したトップでは、グリップの位置は動かない。

  • フォワードスイング
    折り返し点のトップから、バットを振っていく時、まず下半身が回転し、グリップは引っ張られるように移動する。

  • フォワードスイングからインパクト
    両足の土台ができているので、上半身を動かす力が起こる。上半身の回転でバットスピードが最高になる。

  • インパクト
    全身の回転力が両腕とグリップに集中する。

  • フォロースルー
    インパクトに向けて集中された力がフォロースルーの勢いになる。両ヒジが打球方向に向かって伸びていく。

少年野球や中学野球の現場では、強いスイングをしようとする選手が「手打ち」になっていることを目にします。

これは、腕の力に任せたスイングになっている証拠で、下半身からの運動連鎖ができていません。

極端に言えば、「下半身と体幹の動き」だけで、バットが自然と引っ張られているような感覚で振ることが大切です。


「壁をつくる」スイングの極意とは?

強いスイングをする上で「」をつくることも重要な要素です。

運動連鎖を行う過程で、投手に向かう足やヒザ、腰や肩などが早く回転してしまうと、インパクトで全身の回転力を集中させることができません。

集まるはずの力が分散してしまい、スイングが弱くなるのです。

特にヒザは壁をつくる上で重要な役割を果たします。 

ステップ時に前のヒザが曲がらずに踏ん張ることで、その上の腰や肩も連動し、効果的な壁をつくることができます。

強いスイングをするためには、踏み出したつま先、ヒザ、腰、肩、腕が早く動かないように我慢しましょう。


タイミングをつかんで確率を上げるには

タイミングがうまく取れないと、思い切りのいいスイングはできませんね。

名伯楽と呼ばれる内田順三コーチは、著書の中で

根本的にタイミングは教えられない

プロ野球選手だけに教えてきたバッティングドリル100:KADOKAWA

と言っています。ですから、タイミングは親や指導者が教え込むものではなく、選手自身がつかむものだと考えましょう。

ただし親や指導者は、「イチ、二、サン」ではなく、「イチ、ニー、サン」と「ニー」を伸ばすことで「」を取らせるように指導することはできます。

 遅い変化球には、「イチ、ニーノ、サン」と「」を追加するように教えることもできます。

しかし、最終的には、お子様と様々な方法を試しながら、自分に合ったタイミングの取り方を見つけることになります。

小中学生の場合は、先ほどお伝えした、構えからフォロースルーまでの一連の動きができるように意識して、素振りを継続してみてください。

そして、わからないことがあれば、いつでも質問してください。


メンタルの力でスイングが変わる

スイングとメンタルは、直接的には関係ないように思えるかもしれませんね。

でも、実際には密接に関係しています。

選手は、「試合で結果を出さなければ...」というプレッシャーが常に付きまといます。

結果を出すためには、練習で培った技術を信じ、強い気持ちでボールに集中することが必要です。


打席での心構えがパフォーマンスに与える影響

野球のレベルが上がるほど、試合でのバッティングは、求められることが違ってきます。

例えば、

  • 何がなんでも出塁する必要があるのか

  • 走者を進めるバッティングが必要か

  • つなげるのか

  • ランナーをホームに返すのか

といったように、要求されることが変わります。

中学野球の場合は、このようなことが求められるかもしれませんね。ただ、少年野球の場合は、ほとんどのケースで「強いスイングをすること」を指示されると思います。

例えば、ノーアウトランナー三塁でバッターボックスに入るとします。このように、得点のチャンスの場合、力んでしまうことがあるかもしれません。

力んでしまうと、アッパースイングになったり、早く体が開いたりと、スイングが崩れてしまうことに繋がります。

打席に入る前に、場面をしっかり整理して、どんなバッティングをするのか考えるようにしましょう。


「結果」よりも「過程」に集中する重要性

バッティングは、成功よりも失敗の方が多いです。

プロ野球では、3割打者は一流と言われます。しかし、一流と言われるバッターでも、10回のうち7回も失敗しているわけです。

ですから、結果だけにとらわれないことが重要です。

例えば、タイミングが合わず、ボテボテのゴロを打って内野安打になることがあります。一方で、鋭い打球を打っても、野手の正面に行ってしまいアウトになることもありますね。

試合では、プレッシャーや緊張で、思ったようにプレーできないこともあります。それをカバーするのは、やはり練習での成功体験です。

小中学生の場合は、特にセンター返しのバッティングを意識して欲しいと思います。

バッティング練習では、フェアグラウンドの90度に広角に打つ意識ではなく、センター中心に打ち返すタイミングをつかんでいきましょう。

だいたい、ショートとセカンドの定位置の範囲内に打球が飛ぶように練習します。

すると、スイングが安定しますから、試合でも結果が出るようになります。


イメージトレーニングで実践力を高める

イメージトレーニングは、バッティングの実践力を高める有効な手段になります。

例えば、素振りを行う時は、単にバットを振るだけでなく、イメージトレーニングを活用しましょう。

相手ピッチャーの球種や軌道を意識して、スイングすることを習慣にしてください。また、打球の行方を鮮明に描くことで、より実践的な効果を得ることが期待できます。

バッティングの上達は、日々の反復練習によって、体に動きを染み込ませることが重要です。

プロ野球のトップ選手は、自分の動作を様々な角度からイメージすることができると言います。

例えば、バットスイングを横からの映像だけでなく、上からの映像としても視覚化しています。すると、上からの動作の確認に加えて、バットの軌道も確認できるそうです。

小中学生でも、このようなイメージトレーニングをしながら素振りをしてみてください。

イメージトレーニングもまた、反復練習をすることで効果が高まります。

ぜひ、実践してみてください。


今回のまとめ

いかがでしたか?

今回は、子どもが強いスイングをできない理由と、その解決策について解説しました。

強いスイングを手に入れるために、次の3つのポイントを意識して練習に取り組んでください。

  1. 体の使い方:
    基礎体力をつけ、正しいスイングの軌道を習得することが重要。「インサイドアウト」のスイングを身につける。

  2. 運動連鎖の感覚:
    まず、構えからフィニッシュまでの運動連鎖を理解する。反復練習によって運動連鎖の感覚を養う。

  3. メンタルとイメージ:
    プレッシャーに負けず、練習で培った技術を発揮するために、成功体験を積み重ねることが大切。日々の練習でイメージトレーニングを活用する。

一朝一夕に強いスイングは身につきません。でも、正しい方法で継続的に取り組めば、必ず成果は表れます。

「うちの子も、いつかホームランを打ってほしい!」

そんなあなたの夢を叶えるために、引き続き頑張っていきましょう。

今回は以上です。

次回もまた、野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。

野球の上達に関するお悩みや、疑問点などがありましたら、いつでもご連絡ください。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。


参考文献:

石橋秀幸著、レベルアップする!野球 科学・技術・練習、西東社 

内田順三著、プロ野球選手だけに教えてきたバッティングドリル100、 KADOKAWA

内田順三著、二流が一流を育てる ダメと言わないコーチング、KADOKAWA

内田順三著、打てる、伸びる!逆転の育成法、廣済堂出版


【石橋秀幸プロフィール】

広島県出身 日本体育大学卒。
慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科スポーツマネジメント専修卒。 1987年から2002年まで15年間、広島東洋カープの一軍トレーニングコーチ。
1997年ボストンレッドソックスへコーチ留学。
現在は、神奈川大学人間科学部非常勤講師、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員。
また、2022年11月からホロス・ベースボールクリニック代表として、球児の成長のサポート事業をスタート。
これまでも、プライベートコーチとして、小学生から大人まで、アスリートはもちろん、プロの演奏家へもトレーニングとコンディショニング指導を行う。
講演実績多数。
著書多数。
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■石橋秀幸これまでの業績:
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