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患児と親の顕在/潜在ニーズ

おはようございます、こんにちは、こんばんは、多田です。

先週末に「子どものカゼのトリセツ」という本を読んでいました。主に若手小児科医に向けて書かれたものです。僕たちがどんな風に外来に来た「カゼ」の子どもを診るかということが書かれたものなので、特にそれ以外の方々には参考にはならないと思うのですが、若手小児科医でこの「トリセツ」シリーズを読んでなかったらそいつは多分モグリだなって言えるくらいメジャーなシリーズです。

そこで身に染みる一節がありました。

「たとえばアパレルのお店に行ったとき、全然目当てでもないものを、店員からいきなりすすめられたり、さらにその服のディティールを説明されたら、普通にむかつくし、わかってないなって思うよね。でも医者は結構、同じようなことを患者にしちゃう可能性があるんだよ」

昔、こんな記事を書いていた僕ですが、最近は好きな服のブランドも出来て、どちらかというと服が好きな人種になってきました。
確かにただ一方的におススメを押し付けてくる店員さん。こちらの要望や好みを聞いて控えめに、けれども的確なおススメをしてくれる店員さん。比率は9対1くらいですけど、満足感やストレスは天と地の差です。

「なんで、考えればすぐに分かるのに、客を辟易とさせることをするんだろう」と常々思っていました。

けれども自分を省みると同じ事をやっているのだな。そう気づかされました。
「重要なことなのだから、それをしっかり伝えるべき」という姿勢は伝える内容が限りなく真実でも、自分本位です。
カゼはほっといても治るし、ほっとく他に対してやることはないんです。そんなこと言っても誰も何も納得しません。
でも正直に言うと、日々忙しく外来を診ている中で無意識でニーズに寄り添えるほど、僕は器用でも、本質的に利他的でもありません。なのでまずはあるべき意識を言語化して、それを習慣化して、疑似的に無意識にしようと考えました。

まず何を意識して伝えるべきかという問題ですが、僕は患者/親のニーズというものをはっきりさせようと思いました。

ここで顕在/潜在ニーズというものについて少しわき道にそれて説明します。顕在/潜在ニーズとは「付加価値の作り方」という「キーエンスという会社が何故高い付加価値を提供できているか」の解説をした本の中に書かれています。
引用すると、

・顕在ニーズ=明確に意識しているニーズ
ex) 新しいパソコンが欲しい、牛丼が食べたい、おしゃれした、旅行に行きたい
・潜在ニーズ=はっきりと気づいていないニーズ
ex) 痩せたい→痩せることによってモテるようになりたい、周囲から褒められたい、それとも健康になりたい

と、いうことです。これを医療の場であてはめると、この二つにまとめられるのかなと思います。
①医療的な妥当性、正当性で治療をすること=顕在ニーズ
②患者に安心をしてもらうこと=潜在ニーズ

どちらが欠けていても、より良い医療は達成できないとは思います。
医師は①は体系的に学びますが、②は体系的に学ぶことなくon the jobで学びます。いや、対して学べてないのかもしれません。
だからそれを自然にできる人間は優位に立てるのかもしれません。

あるクリニックの院長に対して、先輩が言った失礼かつ適切な言葉を今でもたまには思い出します。
「医療的な診療はあれだけど、患者対応良いんだよな。事実、あんなに儲かってるんだよなー」
ほんと失礼だ(笑)

自然に②を出来ない僕は、まずはそれを意識的にやるしかありません。だから、救急外来に入る前に、外来で患者を招き入れる前に
「潜在ニーズ、潜在ニーズ」
と心の中で来週から唱えようと思います(笑)

因みに「子どものカゼのトリセツ」ではその儀式を
「『内因性カゼコラミン』を分泌しよう」
(カテコラミンという交感神経作動物質をもじっています)
と書いてありました。

うーん、どっちもちょっとダサい(笑)

いかがでしたでしょうか。こんなことまで文章にしているなんてと言われるかもしれませんが、いったん言語化するなりして反芻しないと行動に落とし込めないんです。鳥人間ならぬ牛人間ですかいな。

そして、こうやって性格の悪いまま、医師としてのペルソナを作り上げてくと、前に話した性格の悪い小児科医たちに近づいていくのだろうか、彼らもそうして言語化していたのだろうかとふと考える秋の始まりでした。

ではでは、また。
最後までお読みいただきありがとうございました!

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