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弱虫ペダル(1〜5巻)感想 (795字)

自転車は移動手段である。
レースであってもそれは同じで、一番速く移動し、一番早く目的地に着いた者が勝利する。
僕は20代の頃、5年間ほど全日本実業団に登録してロードレースを走っていたことがあり、誰よりも早く移動するために、トレーニングを続けていた。

主人公の小野田君は、小さい頃から自転車で千葉と秋葉原の数10kmを頻繁に往復していた。
彼が高校で突然自転車部に入り、最初のレースで山岳賞を獲れてしまったのも納得できる。
自転車競技に必要な、ケイデンス(ペダルの回転数)の高さ、心臓の強さ(高心拍の維持)、ある程度のパワー、の3つが既に備わっていたからだ。

漫画の描写は、少年漫画らしい熱血感があるが、レースの駆け引きは非常に巧みに描かれている。
スプリンターは細かいアップダウンに対応できないこと、クライマーが最後に2枚ギアを上げてアタックすることなど、かなりリアルだ。
実際のレース中も瞬間的な判断が求められ、アタックすると決めたら、相手よりもいち早くギアを入れたい。そのために精度の高い機材が必要になる。100万もお金かけて意味あるの?とよく聞かれるが、ここぞという一瞬の判断にマシンが反応してくれるには、軽いフレームと機材の精度が大いに関わってくる。

強いて現実離れしている点を挙げると、ケイデンス200はあり得ないことと、歩道を徐行せずに飛ばしていることくらいか。
当時はまだ、歩行者を跳ねて高額な賠償を払ったという事例が出る前だったせいか、自転車は歩道も可という風潮だったと思われる。
序盤にママチャリで20%の坂を登るシーンがあり、これもあり得ないだろうと思ったが、スピードが出ないようフロントギアを小さいものに変えていたという描写が後にあり、納得できた。

まだ5巻までだが、今後の主人公の成長と、仲間やライバルとの展開に大いに期待する。
「ペダルを回した分だけ強くなる」「坂が呼んでる!」
いい言葉だ!


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