テニス肘:スポーツ医学が解き明かす、その深淵
テニス肘:スポーツ医学が解き明かす、その深淵
テニス肘、すなわち上腕骨外側上顆炎は、スポーツ愛好家のみならず、日常的に手を酷使する方にも広く知られる疾患です。その名の通り、テニス選手に多く見られることから名付けられましたが、そのメカニズムは、単なる反復動作による炎症という単純なものではありません。
テニス肘の病態:深層に潜むメカニズム
スポーツ医学の視点から見たテニス肘は、単一の要因ではなく、複数の要素が複雑に絡み合った結果として生じると考えられています。
繰り返される微細な損傷: 肘の外側にある骨の出っ張り(外側上顆)に付着する筋肉(主に手首を伸ばす筋肉)が、反復運動によって微細な損傷を繰り返し、炎症を起こします。
血流の低下: 長時間の運動や同じ姿勢の継続は、局所の血流を低下させ、組織の修復を妨げます。
神経の過敏性: 炎症によって神経が過敏になり、痛みが増強されることがあります。
腱の変性: 長年の運動によって、腱が変性し、修復能力が低下することもあります。
これらの要因が複合的に作用し、慢性的な痛みへと発展していくのです。
テニス肘の症状:日常に忍び込む不快感
テニス肘の症状は、人によって様々ですが、一般的には以下の様な症状が現れます。
肘の外側、特に骨の出っ張った部分に痛みを感じる
物を握ったり、タオルを絞ったりする動作で痛みが悪化する
痛みのため、日常生活に支障が出る
テニス肘の治療:多角的なアプローチで回復へ
テニス肘の治療は、症状の程度や患者さんの状態に合わせて、様々な方法が選択されます。
保存療法:
安静: 患部に負担をかけない
冷罨法: 炎症を抑える
非ステロイド性抗炎症薬: 痛みと炎症を抑える
物理療法: 筋肉のバランスを整え、機能回復を促す
サポーター: 患部を保護する
注射療法:
ステロイド注射: 炎症を強力に抑える
PRP療法: 患部の修復を促進する
手術療法:
保存療法で改善が見られない場合に検討される
テニス肘の予防:健康な肘を守るために
テニス肘は、予防することが最も大切です。
ウォーミングアップ: 運動前に必ずしっかりと体を温める
ストレッチ: 運動前後のストレッチを習慣化する
適切なフォーム: 正しいフォームで運動を行う
休息: 痛みを感じたら無理せず休む
定期的な運動: 全身的な体力向上を図る
まとめ
テニス肘は、単なるスポーツ障害ではなく、現代人の生活習慣とも深く関わりのある疾患です。スポーツ医学の進歩により、そのメカニズムが解明され、より効果的な治療法が開発されています。早期発見と適切な治療によって、テニス肘から解放され、快適な生活を取り戻すことが可能です。