10年以上ぶりに自転車を漕ぐ
雪のちらつく日、久しぶりに身体が機関車になったような、
ほかほかした体験をした。
彼が、家にこもりがちな私を外にひっぱり出してくれた。
行き先は、いつもの電車だと少しだけ不便な近場の施設。
なんてことのない自転車でのお出かけなのだけれど、
すごくすごく、幸せだった。
10年以上乗る機会のなかった自転車のペダルを踏む。
寒空でも太陽は眩しくて、つめたい風と、音と、匂いと、少しの危うさが、
五感全部に広がる。
冷えた外気が目をうるませて、自然ににじんだ視界が心地よかった。
もともと家にいることがまったく苦ではない私は、
コロナが蔓延してから、嬉々として引きこもるようになった。
外出は、ゴミ出しと徒歩圏にある公民館への図書本の受け取り、週に1度のスーパーへの買い出しだけ。
それで全然へいきだった。
と、思っていた。
実際、そんな風に2年が経過した。
気づかないうちに私の世界には、うすい膜がはっていたみたい。
けれど、久しぶりに感じた季節や風景はとても新鮮で。
自分の視界がひらけていく。
それを見せてくれた彼に、こころから感謝を伝えたい。