元理系大学院生が思うプレゼン資料の作り方
3年の研究室活動が無事終了し、今回は備忘録も兼ねて研究以外のノウハウを蓄積するために元理系大学院生が培ったプレゼン資料の作り方を公開したいと思います。
プレゼン資料の作成方法はこのnoteにもSNSにも既に大量の情報が載っています。私もアイコンの素材や見やすいスライドの作成方法など、度々参考にさせていただいていました。
しかし、ほとんどはUIやUX関係のお洒落なスライドや企画提案時のプレゼン資料など、理系大学生が実際に知りたいプレゼン作成方法と若干分野が異なっていると感じていました。
探せば、研究用の資料や国際学会発表時のプレゼン作成方法などはあると思いますが、折角の機会ですので、ここでは、私流のプレゼン作成方法を載せたいと思います。
1. 研究発表と企画発表は若干異なる
これは持論ですが、会社などで使う企画資料と研究で発表する資料は作成方法が異なります。それこそUI,UXなどを意識した見やすく、シンプルなスライドの方が企画受けすることでしょう。企画書では、相手を説得する必要がありますので、退屈にさせないようにスライド一枚に入れる情報を削り、本当に伝えたい内容だけを入れたりしますね。また、動きや写真を使ったりして、スライドに変化を持たせることで見ている方が飽きずに注目してもらいやすくする工夫などがてんこ盛りです。
自分が企画や説得を目的としたスライドを作成する際は、提案内容に入るまえに「共感」ページを作成します。「確かにそれは...問題だな」「そんな課題があったのか」など相手に同じ問題を共有させてあげることで、その後の提案がスムーズに吸収することができるのです。喧嘩腰で革命を起こす気になり、プレゼンをすると、当然伝えたいことは伝わりませんよね...。
ですが、研究発表やゼミ発表となると、資料の作り方が若干ですが変わってきます。研究の内容は詳細まで伝える必要がありますので、時間内で出来るだけ沢山の情報を伝えて、発表内容に関して質問や改善案などのフィードバックをもらうことが目的となります。まあ、企画と違って研究発表は相手が確実に聞いてくれていることが前提なのです笑
そのため、あまりにもシンプルでお洒落なスライドにしてしまうと、背景と目的くらいは伝わりますが、肝心の研究内容についてあまり突っ込んでもらえなくなり、伝えるだけで終わる可能性が高いです。
大学院生時代には国際学会や研究会などに参加し、他大学の学生の発表や教授陣の発表を幾つか見てきましたが、ほとんどの資料に膨大な情報が詰められており、専門分野の人同士しか分からない発表が大半でした。
その中でも多量の情報を提示しながら、他分野の人でも分かりやすいように意識して作られたプレゼンがありましたので、それらの知見を踏まえて以下にご紹介したいと思います。
研究分野で発表資料を作成する場合は
膨大な情報をいかに要点を絞って伝えることができるか
に繋がってくると思っています。
イメージ的には研究会でよく見るよく分からない資料とお洒落でシンプルな資料のちょうど間が程よい研究資料になるのではないでしょうか?
2. スライドの内容と頭の中で説明したい内容を一致させよ!
研究発表となると、背景,目的,関連研究,手法,...などと段階ごとに伝えたい内容、伝えるべき内容が多くなりますので、それらを全てスライドに叩きつけると自分でも何が書いてあるのか訳がわからなくなります。一番研究を理解しているのは、自分ですから、本当にスライドに書いてある長い文章を毎日頭の中で音読しているのか、一度考えて見てください。
~手法を用いて、〜の段階的な調査を行い、~な結果が出たため、以下の5つの手法を確かめた。
などとスライドに書いてある場合、普段研究しているときに上記のような思考回路で研究を行なっていますか?
少なくとも自分は記憶力もないので、長い文章通りに考えて実験はしていませんでした。
「実験最終ゴールはこんな感じだから、本当に動くのか、この実機を使って検証してみるか... だめならその後考えよう。or HWが動かないのならSWに問題があるかな?」
ぶっちゃけ、実験している時は上のような思考回路ではないでしょうか?普段から自分が長い文章通りに思考していない場合は、スライドになった途端に仰々しい内容を書いても自分すら意味が分からないのです。
発表者がスライドのメモを読んでいるだけになって発表をすると、当然のことですが、聞いている方には伝わりません。
そこで、
発表資料を作成する際は自分の頭の中で説明したい内容(思考回路)をベースにスライドを作成し、足りない部分を文章や図を使って補足するやり方をお勧めします。
以下にスライドの例を載せます。
目的を説明するスライドとしては、よく見るスライドではないでしょうか?
ですが、聞く側は発表者が話している最中にスライドの文字を読まなければなりません。あまりに、本のように長い文章が書いてあるとスライドに意識が集中し、発表者の話はノイズになってしまいます。
また、上記スライドは発表者の頭の中とスライドの内容が一致していないので、発表者自身も一瞬でこのスライドの内容を把握するのは難しいです。研究内容を把握できているのは本人が実際に実験を行なっていることもありますが、各々の段階を文脈として理解できているためだと思っています。断片的な結果や実験を提示されても情報に繋がりが見えないので、提示された側は自分の知識を総動員して提示された情報を読み解く作業をしなければなりません。
そのため、
発表者にもオーディエンスにも文脈を伝えてあげることで、理解しやすくすることができる訳です。この文脈こそが、実際に頭の中で考えている思考回路を頭の外に出すときに役に立つ概念となります。
また、スライドにする際は、本当に重要な単語以外は図やグラフなどの一瞬で見て理解できる媒体に変換することをお勧めします。テキストを読むコストがその分だけ下がるので、概念を一瞬で理解し、伝えたい単語に意識を集中させることができるのです。
以上を踏まえると先程の図は
上記のようになります。正直企画書などのようなお洒落さはありませんが、目的に至るまでの文脈が提示されていることによって、目的の理解度が上がり、一瞬で何から何に改善しようとしていることが伝わります。各々の手法などの詳細は別ページにまとめるか、口頭で説明しても問題ないでしょう。目的を伝えるスライドでは何故そのようなことをするのか?何のためにそれをするのか?新規性は何か?などが伝われば良いのです。
目的だけをシンプルに書いただけですと、その背景が伝わらず、有用性が理解されないで、このくらいが丁度良いのではないでしょうか。
まあ、本稿の文章が多くなってしまっているのは皮肉な話ですが笑
3. スライド内位置情報を教える
伝わりやすいスライドを心がけると文章量が減り、図が増えるためスライドの枚数が増えるという欠点が生まれます。そのため、一枚一枚は分かりやすいスライドでも、全体としてはどんな内容であったのかが、見えにくくなります。特にAIなどのSW系の研究では実機を見せる段階もないため、ひたすら概念やモデルの説明となり、最後の方のページまで行くと過去の文脈との繋がりが見えにくくなってきます。
そんな時にお勧めなのが、フローマップです。
上図の左にあるのが、超簡易的なフローマップです。提案手法についての説明の階層が増える場合でも、今どの部分の説明をしているのかを瞬時に把握することができます。
聞いている人が、「あれ、これってどの部分のことだっけ?」と思ったとしても左のフローマップを見れば一目瞭然なので、発表内容に集中しながら全体を把握することができます。また、前と次のページのタイトルも表示されているので、予習復習も可能です。
4. 新聞のように、見出しと枠組みで見やすくする
グラフや写真などを活用し、できるだけ文章を減らしたとしても、研究資料ですので、ある程度文章を記載する必要が出てきます。見やすさなどの様々なテクニックは他の参考文献を参照することを推奨しますが、私がお勧めするのは新聞の見出しです。ご存知の通り、新聞には大量の文章が印字されていますが、読者の視線を誘導するように見出しが配置されています。例え、図などで見やすいスライドができたとしても、まとまりがないスライドでは理解するのが難しくなります。ただでさえ研究内容は意味不明ですからね。
先程のスライドでも既に使用していましたが、図形ツールなどを使って、同じ内容ごとに枠組をすることで、視認性が圧倒的に上がります。また、タイトル(見出し)を枠ごとに配置することで、枠ごとの意味を理解しやすくなります。ただ、配色はなるべく2色程度に留めておきましょう。様々な色が含まれると情報量が多くなり、逆に見にくくなってしまいます。
5. グラフや実験結果はこれでもかと言うくらい詳細に提示する
これまでは、理解してもらうために図や枠などを使って見やすさの工夫を行なってきましたが、実験結果やグラフを載せるスライドでは、必要な情報を全て載せましょう。
このスライドが一番大事なページですので、改善や質問をしてもらうためにはカッコつけずに情報を提供することをお勧めします。
上記はシンプルなグラフですが、最低限、グラフに記載してある全ての単語、もしくは説明に必要になる成分は説明することが求められます。グラフを実際に説明する際に助けとなるのが、先程の枠組です。説明したいグラフ部分に枠をつけることによって、そのグラフのどの部分が説明に重要なのかが口頭のみで説明するよりもグンと分かりやすくなります。
正直、発表者自身はグラフの意味を理解できていますが、初めてみた人はこの実験結果部分がどう見ていいのか一番意味が分からないでしょう。なので、初めて自分が実験結果を読み取った時を思い出して、どこを説明すればこのグラフを読み取ることができるのかを考える必要があります。
大量の情報を一気に見せると混乱しますので、一部ずつ文脈を意識して提示するなど方法は様々ありますが、こちらは研究次第みたいなところもありますので、発表の前に第三者に一度、発表資料を見てもらうことをお勧めします。
6. プレゼン作成を楽しむ
最後は胡散臭いタイトルですが、「楽しむ」に尽きます。
私は昔絵を描くことが好きでしたので、感覚としてはそれに似ていますね。正直、作成中は楽しんで作っていました。「この図、gifにして動かしたら見やすいし、カッコよくね?」とか「この写真背景としてデカく配置したらインパクトあるな」とか、考えてましたね。
このようにいろんなボタンを興味本位で押したりしてみたりすることで、新しい発見があります。自分の場合はPowerPointにCGキャラクター素材が追加されていることを知り、驚愕でした。最近ではCanvaなども面白いツールです。
スタイリッシュなスライドを作りたいときはプロのスライドを真似しましょう。Slidecoreでは無料でカッコいい資料を入手することができるのでかなりお勧めですよ。また、図やアイコンでは度々、無料で入手することができるFlaticonを使っています。
いかがでしたでしょうか?
理系院生とか言っておきながら無難な内容になったかとは思いますが、今思い返してみると、上記の事柄を気にしてプレゼン資料を作っていた気がします。また、何か思い出したらnoteに書いていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
おそらく、研究室の後輩達も新しいスライドの作成方法を身につけてくると思いますので、楽しみで仕方がありません笑
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