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ハウス分割の変遷

ホロスコープ占星術には『ハウス』がある。『ハウス』は地上を特徴付ける子午線や地平線を基準として黄道上に12の区分を作成する。少し詩的な表現をするなら、ハウスは地上から天上である黄道に掛ける梯子のようなものだ。

このハウスの区分を黄道上に作ることを『ハウス分割』という。このハウス分割の方法は時代によって変遷を重ねている。

一番最初に出現したハウス分割の方法については様々な研究があったけれども、私は中国占術の六壬神課の研究から、最も遡ることのできるハウス分割法にはある程度の見当がついたと考えている。その方法は、平安時代に陰陽師として有名な安倍晴明が子孫のために残した六壬神課の解説書である『占事略决』の最初に出てくるこの文言でしめされる。

常以月将加占時視日辰陰陽以立四課

ボールドでしめした6文字が、その最も遡ることができる古代のハウス分割方法の解説となっている。読み下すと「常ニ月将ヲ以テ占時ニ加エル」となる。これでもよく判らないだろうから、占星術の用語を加えて説明してみると、以下のようになる。

太陽が位置する黄道十二宮であるサン・サインを占う時刻がしめすハウスに置いてホールサイン・システムによるハウス分割を行うことで、ホロスコープである六壬天地盤を作成する。

中国占術における、六壬神課、七政四餘、紫微斗数などがハウスと黄道十二宮であるサインの区切りが一致しているホールサイン・システム(Whole Sign System)を採用しているので、古代の占星術がホールサイン・システムによるハウス分割を行っていたのはまず間違いないだろう。

しかし占事略决のハウス分割方法は、緯度の影響を考慮しておらずASCを含むサインを上昇宮とするのではなくて、MCを含むサインを官禄宮である10室とするようなハウス分割となっていることは注意しておく必要があるだろう。これはASCの計算がMCの計算と比べて段違いに困難であったことと関係しているのかもしれない。

ASCを1室のハウスの起点であるカスプとしたいというモーメンタムは強烈であったようで、古典的名著である『キリスト教占星術』では、ASCを1室のハウス・カスプとする等幅ハウス分割が採用されている。しかしこの方法ではMCが10室にあるとは限らないということになる。

ASCを1室の、MCを10室のハウス・カスプとしたいというモーメンタムは、現代のクォドラント型のハウス分割法を生み出した。クォドラント型のハウス分割法では、アンギュラーと呼ばれる1、4、7、10室のハウス・カスプがそれぞれASC、IC、DSC、MCと一致しており、その中間のハウス・カスプの計算方法は多種多様なものとなっている。

空間的に分割を行う方法で典型的なCampanus法と時間を使って分割を行う方法で典型的なPlacidus法を解説した動画を作成した。

しかしクォドラント型のハウス分割法では『狭められた宮』、つまり1つのサインに複数のハウス・カスプが存在するという別の問題が発生する。

以下は中国占術を専門とする門外漢の暴論ではあるが、

ASC、IC、DSC、MCは感受点として扱い、ハウス分割は『常以月将加占時』で良いのではないだろうか。

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