【短編小説(?)】 『タイムリミット』 vol.2
突然ですが皆さん、ご自身はあと何年生きると思いますか?
周りからは「若い」と言われているけど、それは果たして「時間がたっぷりある」という事なんでしょうか。
平均寿命というものが存在しますが、決してそれはあくまで平均。「その年齢までは生きる保証」ではないのです。
もしあなたが神様から「あと1年であなたは死にます。」と言われたらどうします?
これは、もし生まれる前に誰かから、「あなたは◯歳で死にます」と言われてから生まれてくる世界があったら・・・という物語です。
*登場人物
私・・・17歳の可もなく不可もない女子高生。75歳で亡くなると生まれる前に知った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日も私たちの世界ではこんな事がありました。今日は聞いた話です。でもこの世界では良くある事かも知れません。
私には5つ上の兄がいます。高卒で今は22歳の普通のサラリーマンです。
そんな兄が今日、仕事を終えて職場仲間と合コンに行ったそうです。上司に誘われたそうですが、兄自身は割と乗り気だったようです。20代前半での合コンなんて目的は1つしか、、、いや、何も言わなかった事にしましょう。
合コンは男女3人同士で行われました。6人の中で兄は一番年下だったそう。周りはみんな兄より3つ以上離れた「アラサー」の人たち。
その中に1人、女性陣の中では一番若い25歳の方がいたんですって。しかも、兄の好きな女優にちょっと似ている美人さんだったそう。職業は銀行員と何の変哲もありませんが、上司からは「一番若いのはかなりの肉食系らしい」と前もって言われるくらいのビ、、、いや、なんでもありません。とにかく、そんな女性が兄の合コンにいたそうです。
まあ兄は現段階で結婚願望があるわけでもないし、この合コンの本来の目的は「上司が本命の子を射止めたい」ための人数合わせに行ったようなものらしくてちょっと女性とお話したり、チャンスがあれば・・・程度に考えていたんだろうと私は推測しています。
どうやらこの会は滞りなく進み、上司も本命と2人で二軒目に行く的な雰囲気になっていたそうで、兄もよしよし上手くいったと思っていたようです。だがそこで例の女性が兄に話かけてきたんだと。「このあと、2人でどうですか、、、?」だって。今も昔もこの決まり文句はあんまり変わらないのかねえ、それ以外に言い方があるかって言ったらないかも知れないけれど。兄は学生時代そんなに恋愛してたイメージはなく、私がいうのもなんだが、直近で付き合ってた元カノは冴えない感じの子だったな。うん、これ以上は悪口になるからやめておこう。
即ち、兄はラッキーとでも思ってその女性と2人で二軒目に行き、案の定終電に乗らず、ホテルというザ・王道の流れに持っていく事に成功したんですって。どいつもこいつも三大欲求がアンバランスな奴ばかりだ。私も大人になればそうなるのか、、、いや、なりたくはないな。
あとは夜の営みをすれば全て終了、充実した合コンでしたとなるはずですが、問題はそこで発生したようです。
「え、、?つ、つけ、ないの、、、、、?」
この兄の一言で健全な男子諸君や大人の方は分かったでしょう?
要はそういうことです、そこまでは兄も望んでいません。「もしも」の事があったら大変です、22歳のサラリーマンではまだ到底背負う事のできない責任です。
当然、兄は拒否しました。するとその女が狂ったように兄に迫って来たそう。
「私はこのままがいいの!続けて!!続けなさいよ!!!」
そこまで来れば逆なんとかってやつですね。危険ですし、黙っていたら何されるか分かりません。兄は転げ落ちるようにベッドから出て、急いで服を着ました。女はしばらくベッドで暴れていたそうですが、次第に我に返って落ち着きを取り戻し、兄に謝罪し泣きついて来たという。
あとから兄がその女と話したところによると、これまで幾度となく合コンに参加し、男性を捕まえてはこのような展開に持っていっているらしい。どうりで上司があんな情報を掴んでいたのか。ただ、今回はちょっとやりすぎてしまったと言っていたそうだ。
しかし、どうしてそんな事しているのかと兄が聞くと、既に私服に戻っていた女はただ兄を見つめて
「私には時間がない、あと5年よ。」
そう言ってお金だけ置いて出て行ってしまったんですって。
「なあ、もしお前があと5年後に死ぬって分かっていたら無理矢理にでも結婚しようとするか?」
時刻は午前2時をまわっていた。兄はすぐにタクシーで家に帰って来た。
寝ている私は突然起こされて散々話を聞かされていたのだ。
「そうだなあ、もし結婚して子供を産んだとしても、すぐ会えなくなるし、家族とか親戚とか迷惑がかかる人も出てくるからしないと思う。」
「それが一人っ子だったら?あの人は親戚に子供はいないそうだ。」
「、、、」
私は答えに詰まった。
その人の家庭環境やこれまで生きてきた背景が何と無くだが見えてくる。
きっと相当プレッシャーかけられてるんだ、、、
どうだろう、私がその立場だったら同じようにしているのかな。寿命を知って生まれれば望まない女性像を描く必要があるのか。
そういえば、私も1つ気になっていた事がある。
「お兄ちゃん。」
「、、、ん、どうした?」
「お兄ちゃんの寿命っていつなの、、、」
兄は部屋の扉に手をかけた。
「さあ、いつになるのかな。」