『15のコント達#15 GONGON儒艮のジュウゴの呪禁』コント⑪「浮気彼氏からの脱出」

藍茶:脱出解人(ぬけだしかいと)。カップルの男。
桃寧:百謎解江(ももなぞときえ)。カップルの女。

舞台中央、机1台椅子2脚。2人板付き。(上手側の椅子に藍茶、下手側の椅子に桃寧、着席)

■明転

モネ「私たちが付き合い始めて、今日でちょうど5年か。」

アチャ「2019年10月1日。今でもハッキリと覚えているよ。」

モネ「私も。ハッキリ覚えている。私はその日、友だちと2人で吉祥寺に脱出ゲームをしに行く予定だった。でもその友だちが体調悪くして来られなくなって。チケットはもう買っちゃってたから私ひとりで行くことになって。」

アチャ「時を同じくして僕も、脱出ゲームをしに吉祥寺へ行っていた。」

モネ「そして私たちは同じ時間帯のチケットを買っていたから、一緒に脱出ゲームに挑戦することになった。」

アチャ「お互い最初は人見知りで、距離感もあったけれど。」

モネ「一緒にクリアを目指して謎を解いていく内にドンドンその距離は縮まって。」

アチャ「ゲームクリアした瞬間、思わずハイタッチして。」

モネ「そしてそのまま流れで連絡先を交換して。」

アチャ「2人で予定を合わせて脱出ゲームに行くようになって。」

モネ「脱出ゲームデートを繰り返していく内に、正式に付き合うことになって。」

アチャ「それから5年…か。」

モネ「脱出ゲーム、謎解きが引き合わせた私たち2人。」

アチャ「うん。」

モネ「そんな謎解きが得意な私に…よく浮気が隠し通せると思ったわねぇ!!!」

□CDトラック 「緊迫感のある音楽」再生

アチャ「浮気?さっきから一体何を言ってるんだ、君は?僕は浮気なんかしてないって!」

モネ「貴方のスマートフォン。」

アチャ「え?!」

モネ「さっき貴方がトイレに行っている間、こっそり調べさせてもらったの。そしたら出てきたわ。私以外の女と密会している証拠のLINEがね!!!」

アチャ「ば、バカな!?そんなの嘘だ!!!だって僕のスマホにはロックがかかっている!!!6桁のパスコードを入力しなければ中身は調べられないはず!!!」

モネ「私の名前は百謎解江(ももなぞときえ)!趣味は『謎解き』『脱出ゲーム』!!!」

アチャ「はッ!!!」

モネ「私の手にかかれば、そんな6桁のパスコードの突破なんて赤子の手を捻るより容易いことよ!!!誕生日、記念日、身長、体重、実家の住所etc.、今まで貴方と過ごしてきた中で得た数々の情報がすべてヒントになっているのだから!!!」

アチャ「く、くっそぉぉぉッ!!!」

モネ「よぉ~く覚えておきなさい。謎解きマニアの女と付き合うなら、バレない浮気は絶対に不可能だということを!!!」

アチャ「ぐ、ぐはあああああああッ!!!(藍茶、なんか吹っ飛ぶ感じの動き。)」

□CDトラック F.O.

モネ「残念だったわ。でも、貴方が出題してくれた最後の謎。なかなか楽しめたわ...サヨナラ。」

桃寧、藍茶に背を向け下手袖にはけようとする。

アチャ「ふっ。ふふふふふ…ははははは…あーっはっはっはっはっはっは!!!」

モネ「(振り返って)な、何よ!?急に笑い出して!!?」

アチャ「自己紹介が遅れました。僕の名前は脱出解人(ぬけだしかいと)!趣味は『謎解き』『脱出ゲーム』!!!」

□CDトラック 「緊迫感のある音楽」再生

モネ「そ、それが何だって言うのよ!!?」

アチャ「解江(ときえ)ちゃん、さっき君は自分のことをこう言ったね?謎解きマニア、と。」

モネ「そうよ!だからそれが何だって、」

アチャ「あっはっはっはっはっは!!!」

モネ「何がおかしいのよ!!!」

アチャ「いやいやゴメンゴメン、謎解きマニアが聞いて呆れるなと思ってさ。」

モネ「何ですって!!?」

アチャ「君は今まで数々の脱出ゲームに挑戦してきたはずだろ?そして何度も何度も経験してきたはずじゃないか?」

モネ「何度も経験?…は!!!まさか!!!」

アチャ「コングラチュレイショ~ン!!!脱出成功~!!!そんな言葉、安直に信じて良いのかな?」

モネ「私は…何かを見落としている!!?」

アチャ「前々から君が僕の浮気を疑っていること、僕も薄々勘づいていたんだよ。そしてそんな僕が君の前にホンモノのスマホを放置して行くとでも?」

モネ「まさか!!!あのスマホは…フェイク!!?」

アチャ「ご名答。」

モネ「じゃあ、ホンモノのスマホは一体どこに!!?」

アチャ「思い出すんだ!今までのことを!全ては初めから繋がっていたのさ!!!」

□CDトラック 「緊迫感のある音楽」C.O.

モネ「全ては…初めから繋がっていた!!?」

□CDトラック 「浮気彼氏からの脱出ナレーション」再生

ナレ「(緊迫感のある音楽をBGMにコント中の今までの台詞が混ざり合って流れてくる)今日でちょうど5年…2019年10月1日…友だちと2人で吉祥寺…」

桃寧、ナレーションが流れている間脳内が覚醒していくような表情と動き。

SE「トラック終わりで何かを閃いたような効果音」

モネ「そうか!!!わかった!!!」

桃寧、藍茶に近づいていき目の前で立ち止まる。

モネ「いや普通にそれがマジスマホで普通に浮気してんだろ!!!」

桃寧、藍茶をビンタする。

アチャ「痛(いって)ぇぇぇーーーーー!!!!!!」

モネ「なんかトゥルーエンドあるっぽい感じ出してたけど、どう考えても普通にそれがマジスマホでガッツリどっさり浮気してんだろ!!!」

アチャ「…はい。すみません。」

モネ「調子乗んなよ!!!」

アチャ「ごめんなさい。」

モネ「じゃあもう本当にこれっきりだから。さよなら。」

桃寧、舞台下手袖にはけてゆく。

アチャ「あ!解江ちゃん!待って!…行っちゃった…。(舞台中央に行き正面を向いて)脱出ゲームならトゥルーエンドに辿り着けるのに、現実の恋ではなかなかトゥルーエンドには辿り着けないな。」

桃寧、高速で下手袖から出てきて、

モネ「それ浮気したお前が言っていい台詞じゃねぇから!!!」

アチャ「すんません。」

■暗転