『15のコント達#15 GONGON儒艮のジュウゴの呪禁』コント⑬「呪いの藁人形」

藍茶:押付迫造(おしつけはくぞう)。パワハラ部長。
桃寧:浦見益郎(うらみますろう)。パワハラに苦しむ部下。

舞台上道具なし。2人板付き。(下手に桃寧、上手に藍茶)

■明転

アチャ「全く、お前は何度言ったらわかるんだ?あぁん!?」

モネ「…申し訳ありません。」

アチャ「あ?声が小せぇな?なんだ?文句でもあんのか?」

モネ「いや、だって今回の件に関しては部長の確認不足が原因で、」

アチャ「はぁ!?てめぇ、俺の所為だって言いたいのか!?」

モネ「だってそうじゃ、」

藍茶、桃寧を殴る仕草。

モネ「うぐッ!!!」

桃寧倒れる。

アチャ「大袈裟なんだよ!被害者面しやがって!とにかく今回の件は全てお前に責任がある!!!わかったか!!!」

■暗転

藍茶、舞台下手袖にはける。桃寧は舞台上に残って中央に板付き。

■舞台中央サス照明、明転

モネ「くっそォ!!!あのパワハラ部長め!!!アイツの確認不足が原因で生じた損害を全部僕の所為にしやがって!!!アイツの所為で僕は減給!!!アイツは何のお咎めも無し!!!ふざけるな!!!…呪ってやる!!!あのパワハラ部長、押付迫造!!!呪ってやる…!!!

それから僕はあるモノを作り始めた。それは、そう(後ろから藁人形を取り出して)『呪いの藁人形』だ。古典的な呪い方ではあるが、それ故に効果も期待出来る。僕は人形により多くのより濃い怨念を込め、呪いの効果をより高める為、素材である藁を探すところから始めた。1本1本。アイツのあの憎たらしい顔を思い浮かべて。そして、アイツへの恨みつらみを思い浮かべながら、血が滲むほどに歯を食いしばり、丁寧に丁寧に藁人形を作っていった。その間も会社内でのアイツから僕へのパワハラ、嫌がらせは収まることはなかった。

でもそれも気にならなくなった。何故ならアイツが僕に酷い仕打ちをすればするほど、この藁人形に込められた怨念は強くなり、最終的にヤツを苦しめる呪いの力は強くなるんだから!!!バカめ!!!そうやって嬉しそうに僕をイジメていろ!!!それが全て自分に返ってくることを知らずにな!!!はははははは!!!はーっはっはっはっはっはっは!!!

そして、材料を集め始めてから10ヶ月と10日程経った頃、呪いの藁人形は完成した。最後の仕上げに、アイツのデスクの上に落ちていたアイツの髪の毛を編み込んで。 その夜、草木も眠る丑三つ時、僕は家から少し離れた公園にやって来た。おあつらえ向きの樹を見つけて、藁人形と五寸釘、金槌を用意する。さあ!!!呪いの儀式の始まりだ!!!」

桃寧、藁人形に五寸釘を当て、金槌で打ち込もうと振りかぶる。

モネ「(振りかぶった手が止まったまま)…………可哀相で出来なーーーーーーい!!!1本1本、藁から探して、十月十日もかけて丹精込めて作った我が子のような可愛い可愛い藁人形ちゃんに五寸釘を打ち込むことなんて、可哀相過ぎて出来なーーーーーーーい!!!!!!(金槌と五寸釘を捨てて藁人形を抱きしめて)ゴメンねー!!!藁太郎!!!藁太郎に痛いことしようとしてゴメンねー!!!悪いお父ちゃんの僕を許しておくれー!!!(藁人形の頭を撫でながら)よしよ~し、藁太郎~。ゴメンな。うん。でももう部長への恨みとか呪いとかどうでもいいや。今ようやく気づけたよ。藁太郎、お前に愛情を注ぐことで僕の中のストレスは自然と解消されていってたんだ。お前という友が居てくれるなら、これからもどんな理不尽なパワハラにも耐えられる気がするよ。だから、これからも一緒に仲良く暮らそうな、藁太郎!」

■暗転F.O.
□CDトラック 「藁太郎の声」再生

ナレ「益郎。ありがとう。君の恨み…僕ガ必ズ、晴ラシテあげルからネ…。」

暗転中に桃寧は舞台下手袖にはける。藍茶は舞台上に板付き。

■明転F.I.(若干暗め)

アチャ「ったく、浦見のヤツ!今日も生意気な態度取ってきやがってよぉ!!!ふざけんじゃねぇぞ!!!最近じゃどんだけいびってもイジメても、なんかスカした面してやがるしよぉ!!!ああぁぁぁぁムカつくぜ!!!!いびりもイジメももっともっとエスカレートしてやんねぇとなぁ!!!お前が悪いんだぜ?浦見ぃ?お前が言うこと聞かねぇから、俺がお前をしつけてやってんだ!!!ぎゃははははははは!!!」

□CDトラック 「ドアチャイムの音」再生
SE「ピンポーン」

アチャ「ん?こんな時間に誰だ?」

藍茶、舞台下手袖にはける。

アチャ「(下手袖から飛び出して来て腰を抜かして)うわあああああああ!!!」

人間大の藁人形(中身は桃寧)が下手袖からのっそりのっそり登場。

アチャ「な、なんだ!!?てめぇは一体何者だあああぁあぁッ!!!」

藁人間「ボクハ、藁太郎ダヨ。」

アチャ「ワラタロウ!?」

藁人間「オ前ハ、ボクノ大切ナ人ヲ タクサン タクサン 傷ツケタ。ダカラボク オ前ノコト 絶対許サナイ…。」

アチャ「さ、さっきからずっと何を言ってるんだ!!?」

藁人間「益郎ガ受ケタ、痛ミ、苦シミ、オ前モ味ワエ!!!」

藁人間、めちゃくちゃ大きい五寸釘を取り出す。

アチャ「お、おい…お前…何する気だ…。」

藁人間、腰を抜かしている藍茶の上で特大五寸釘を振りかぶる。

アチャ「やめろ!!!やめてくれ!!!頼む!!!」

藁人間、特大五寸釘を振り降ろす。

■暗転
□CDトラック 「特大五寸釘が突き刺さる音」再生

アチャ「ぎゃああああぁあぁぁあァああぁぁアアぁァあああァァァぁぁーーーーーーッ!!!!」

〈終〉