『15のコント達#15 GONGON儒艮のジュウゴの呪禁』コント⑥「ゲートボールの試合」
藍茶:長門珠子(ながとたまこ)。芸人の母。年金で暮らしている。
桃寧:長門球太(ながときゅうた)。お笑い芸人。東京で活動している。
舞台上、机1台、椅子2脚。2人板付き。
■明転
モネ「久しぶりに実家返ってきたけど、お袋が元気そうで良かったよ。」
アチャ「球太も元気そうで良かったよ。」
モネ「ゴメンなお袋。いい歳して親孝行もせずに、未だに売れない芸人やって夢追いかけてて。」
アチャ「いいよ。アンタが決めたことなんだから、悔いの無いようにやんな。」
モネ「ありがとう。俺、明日の夜に東京戻るからさ。明日の昼2人でどっか行こうか?」
アチャ「あー、ゴメンね。明日はちょっと予定があるのよ。」
モネ「あ、そうなんだ。何があんの?」
アチャ「ゲートボールの試合。」
モネ「あーそんなのやってるんだ!いいじゃん、健康にも良さそうで。」
アチャ「うん。もう10回目くらいになるんだけど、なかなか勝てなくて。」
モネ「結構ストイックにやってんだな。」
アチャ「エントリー費もバカにならないしねぇ。」
モネ「ん?エントリー費?え?お金払って出てんの?」
アチャ「そうだよ。」
モネ「え!?どういうこと!?」
アチャ「だから、フリーのゲートボーラーがエントリー費払って試合に出るの。」
モネ「フリーのゲートボーラー?!」
アチャ「そして上位2人までが上の試合に出られるの。」
モネ「なんか俺の実家の町内で、東京の若手お笑いライブみたいなことやってるヤツが居る!!!」
アチャ「何を言ってるんだい?」
モネ「え?え?そのエントリー費は返ってこないの?」
アチャ「お客さん呼べたら多少戻ってくるよ。」
モネ「東京の若手お笑いライブと一緒だ!!!バックあるんだ!!!え?で、さっき『上の試合』って言ってた?」
アチャ「言ったわよ。」
モネ「それはどういう試合なの?」
アチャ「エントリー費も払わなくていいし、有名なゲートボーラーさんと一緒に試合出来るの。」
モネ「東京の若手お笑いライブと一緒だ!!!」
アチャ「上の試合で優勝したら、大きな会場のスペシャル試合にも出られるのよ。」
モネ「大きい会場?」
アチャ「ゲートボール小グラウンド。」
モネ「ゲイショウだ!!!俺の地元に『ゲイショウ』があった!!!」
アチャ「東京にも『ゲーショウ』があるのかい?」
モネ「あるんだよ!偶然にも!え?ってか『小』グラウンドなのに大きい会場なの!!?」
アチャ「下の試合は4畳半くらいのグラウンドだから。」
モネ「よくそんな狭いところでゲートボール出来るな!!?ってまぁ東京の若手お笑いライブも『そんなとこでやってんの!?』みたいなとこでやってるもんな…。ちなみに、それを主催している人はどういう人なの?」
アチャ「美濃木林さんって人だよ。」
モネ「ミノキバヤシ?どっかで聞いたことあるような…。」
アチャ「3年前に突然この町へやって来て、ゲートボール界に革命を起こしたんだよ。」
モネ「3年前…ミノキバヤシ…。はっ!!!思い出した!!!」
アチャ「なんだい?アンタ、美濃木林さんを知ってんのかい?」
モネ「知ってる!!!その人、芸人から取るエントリー料が法外で問題になって東京を追われた、フリーの元・お笑いライブ主催者だ!!!」
アチャ「そうなのかい!!?」
モネ「あんにゃろう!こんな田舎へ逃げ隠れて、年金暮らしのお年寄り相手にまた同じようなやり方で稼ごうとしてたのかよ!!!」
アチャ「そう言えば、美濃木林さん、最近やたらと高級な時計してたりとか高級車を購入したとか噂があったわね。」
モネ「それ全部、お袋たちのエントリー費で巻き上げた金で買ってるぞきっと!!!」
アチャ「確かに、美濃木林さんのことをあまりよく思ってないゲートボーラーも少なくないわ。」
モネ「じゃあなんでお袋はそんなゲートボールの試合に出るんだよ?」
アチャ「...出てるメンバーが良いから。」
モネ「それと同じ理由であくどい主催のライブに出続けている芸人を何人見てきたことか!!!」
アチャ「で、でも美濃木林さんがやってることは犯罪とかじゃないんだろ?だって東京でも捕まらなかったんだから!」
モネ「捕まるかも知れない!!!」
アチャ「え!!?」
モネ「わかんないけど!ちゃんと、正式に調べてもらったら、何かしらの法に引っかかっていることが判明して、捕まる可能性もあるかも知れない!!!」
アチャ「そうなのかい!!?」
モネ「わかんないけれど!!!」
アチャ「そうなのかい…。」
モネ「お袋、そんな怪しげなゲートボールの試合出るのやめてさ、明日は俺と買い物にでも行こうよ。」
アチャ「…球太、ゴメン。やっぱり私はゲートボールの試合に出る。」
モネ「なんでだよ!!?」
アチャ「ここで辞めるわけにはいかないのよ!!!」
モネ「お袋!!?」
アチャ「負けっぱなしで1度も上の試合に出られずに…ゲイショウに立たずに辞めることなんか出来ないのよ!!!」
モネ「お袋が…売れてない若手芸人と同じ目をしている!!!」
■暗転