(お蔵入りコント)『親父ギャグ売り~対決~』
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『親父ギャグ売り~対決~』
アチャ:砂井波亜子(すないぱあこ)。指ピストルが撃てる女スナイパー。
モネ:稿井笑太(わらいしょうた)。指ピストルが撃てる親父ギャグ大好き青年。波亜子の息子。
舞台上道具なし。1人板付き。(舞台中央にモネ)
□CDトラック 「親父ギャグ売り⑪ナレーション1」再生
ナレ「(波亜子の声)5、4、3、2、1。さよなら、先生。」
■舞台中央サス照明、明転
モネ「(語り)僕の名前は稿井笑太。今から二年前のある夜、僕は或る夢を視た。人気(ひとけ)のない森の中で対面する二人の男女。男は僕の父、売れない小説家だった稿井笑介。女の方は一体誰だったのだろう。赤髪の女の唇が『さよなら、先生』と動いた後、父はその場に倒れ、僕は目を覚ました。夢だったんだけれど、なぜか僕はすぐに『本当に父が絶命した』と悟った。そして翌日、警察から『父の遺体が発見された』と連絡が入る。正直、涙も出なかった。生まれて間もなく親戚のもとに預けられた僕に、父との想い出はほとんど無い。棺に入った父の顔を視ても『ああ、確かに自分と顔が似ているな。』くらいにしか思わなかった。」
アチャ「(影マイク・おじさんの声)えー、どうも一応この物語の主人公である駄洒錬太郎(だじゃれんたろう)です!もう少しシリアスなパートが続きますので、こうしてちょいちょい天の声親父ギャグを挟んで場を和ませようと思います!シリアスシリアス、明日の尻は尻明日(しりあす)!明後日の尻は尻明後日(しりあさって)!明後日!明後日!さては南京玉すだれッ!」
モネ「父が亡くなってからも僕の生活は特に変わらなかった。そもそも二年前には既に親戚のもとを離れて一人暮らしをしていた。父には遺産こそ無かったけれども、借金も無くプラマイゼロ。」
アチャ「(影マイク・おじさんの声)プラマイゼロ!ゼラマイプロ!『ゼラマイ』って何?『全日本ランドセルマイスター』の略?!じゃあゼラマイプロっていうのは『全日本ランドセルマイスター』のプロってことなのぉ!!?」
モネ「だから父の死は本当に僕の生活に何の影響も与えない。そのはずだった。しかし、父の死から二年が経ったある日、僕は路上で運命的な出逢いを果たす。そう、出逢ってしまった。あの人物、駄洒錬太郎さんに。」
アチャ「(影マイク・おじさんの声)あたす!?運命の出逢いって、あたす!?あたす?!あタスマニアンデビルぅ!?」
モネ「錬太郎さんと父は古い知り合いで、僕の出生の秘密を僕に教えてくれた。僕の本当の母親はあの日夢に出て来た赤髪の女。父が悪魔との契約でこの世界に生み出した、自身の小説の登場人物・砂井波亜子。その事実を知った瞬間、僕は全身の神経が研ぎ澄まされた感覚に陥り、そして自分の置かれている現状を全て把握した。実の母、波亜子が僕の命を狙っている。自らを生み出し、傷つけた父・笑介への復讐の完成の為に、その父との最大の想い出であり、負の遺産である僕を消そうとしている…。」
■照明、サスから全体明転へ
アチャ(波亜子の衣装)、舞台下手袖から登場。モネ、舞台上手の方に移動しアチャと対面する。
アチャ「その表情…どうやらアンタは全てを理解してるみたいっちゃね。」
モネ「あぁ。母さん。」
アチャ「母さんだなんて呼ばないでくれっちゃ!...今のアンタはもう息子じゃない、うちの最後の標的(ターゲット)っちゃ!」
モネ「何故、今なんだ?僕を消そうと思ったらいくらでも機会があったはずじゃ?」
アチャ「アンタが能力に目覚める日を待っていたっちゃ。」
モネ「能力…まさか指ピストルの!?」
アチャ「そうっちゃ!いくらターゲットとは言えど、指ピストルの能力を使えないアンタを殺(や)るのはフェアじゃない気がしたっちゃ!」
モネ「かあ…いや、波亜子さん。僕たちは本当に闘わなきゃいけないの?」
アチャ「…。」
モネ「父さんは最低のクズ男だったと思う。波亜子さんがどれだけあの男に傷つけられたか…その苦しみも全部じゃないけれど、僕には理解出来る。だから波亜子さんが犯した沢山の罪も、僕は…すべてを咎める気にはなれない。そして僕にはやっぱり、自分の母のことは…撃てない。」
アチャ「…。」
モネ「ねぇ波亜子さん?こんな事、もうやめにしようよ!どんな形であっても、どんな罪を背負っていても、僕と貴女は世界でたった二人だけの血の繋がった親子じゃないか!殺し合わずに、人目に触れないどこか静かな森の中で、一緒に生きていこうよ!」
アチャ「…その目。」
モネ「え?」
アチャ「その、現実逃避をしてバカみたいな夢を語る、濁っているのにキラキラした目。アンタの父親にそっくりっちゃ。」
モネ「波亜子さん?」
アチャ「そのキラキラした目にうちが何度騙されたことか…。どうせアンタもアイツみたいにうちのことを裏切るに決まってるっちゃ!!!」
モネ「そんな事ない!僕は絶対に父さんみたいな過ちは…!!!」
アチャ「信じられないっちゃ!!!」
アチャ、モネに向かって指ピストルを構える。
モネ「母さん…。」
アチャ「だから、母さんって呼ぶなって言ってるっちゃ。」
モネ「…もう、無理なんだね。」
アチャ「そうっちゃ。」
モネ「争いは避けられないんだね。」
アチャ「そうっちゃ。」
モネ「わかったよ…だったらせめて僕の手で…!!!」
モネもアチャに向かって指ピストルを構える。
モネ「全てを終わらせてやる!!!」
アチャ「我が最大の失敗作、笑太よ!!!かかってこいっちゃ!!!」
□CDトラック 「銃撃戦リズム」再生
アチャ「バンバンバン♪ ババンバン♪ 指ピストル~で ババンバン♪」
モネ「バンバンバン♪ ババンバン♪ 銃撃戦~だ ババンバン♪」
アチャ「実際の 銃撃戦は はちゃめちゃエグくてグロいから♪」
モネ「せめてもの 演出で 殺し合い~をPOPに魅せます♪」
アチャ「バンバンバン♪ ババンバン♪ 今私の右脚血みどろです♪」
モネ「バンバンバン♪ ババンバン♪ 今僕の左目グログロぐっちょんちょん♪」
ナレ「バンバンバン♪ ババンバン♪ バンバンバラバラ♪ ババンバン♪…」
■暗転F.O.
□CDトラック 「銃撃戦リズム」F.O.
□CDトラック 「雨の音」再生
■明転F.I.(若干暗めor赤っぽい照明)
舞台下手にアチャが膝をついている。モネは左腕をだらりと垂らした状態で、右手をピストルの構えで立っている。
□CDトラック 「雨の音」F.O.
アチャ「…何してるっちゃ。早く止めを刺すっちゃ。」
モネ「出来ないよ…かあさ、」
アチャ「甘ったれるなっちゃ!!!」
モネ「…!!?」
アチャ「アンタの父親は、その甘さの所為で、いろんな人たちを不幸にしていったっちゃ!アンタが本当に父親を許さないんだったら、この哀しい物語を終わらせたいんだったら、その甘えを捨てなきゃならないっちゃ!!!」
モネ「かあさん…」
アチャ「気にしなくていいっちゃ。そもそもうちはこの世界に居るべきではない存在っちゃ。」
モネ「かあさん…」
アチャ「撃つっちゃ、笑太。」
モネ「かあさん…」
アチャ「撃て!!笑太ァァァ!!!」
モネ「かあさぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!!!」
モネ、指ピストルを撃ち右手を上げる。
□CDトラック 「スローモーションの銃声」再生
SE「エコーのかかった銃声」
アチャ「笑太…生まれてきてくれて、(笑顔になって)ありがとうっちゃ。」
SE「銃声」
アチャ、舞台上に倒れ伏す。
□CDトラック 「雨の音」再生
モネ「う、、、ぅううぅぅぅぅぅ...うわぁぁぁぁああああああッ!!!」
□CDトラック 「雨の音」音量を上げる
■暗転F.O.
□CDトラック 「雨の音」C.O.
アチャ「(影マイク・おじさんの声)親父ギャグ売りぃ~!!!駄洒錬太郎物語ぃぃぃ~!!!第11話ぁ~!!!まさかのどちゃクソバッドエンドぉ~!!!バッドエンドも、たまにはえぇんどってか!!!次回はいよいよ最終回やで!!!」
〈終〉