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熊本市新庁舎建て替え問題における財政的懸念と市民の声

熊本市の新庁舎建て替えを巡る財政問題について考察してみたい。

数年前にUターンした身として、この問題の進め方には疑問を感じている。大西市長は「6年以上に及ぶ熟議」を理由に、住民投票に否定的な姿勢を示しているが、実際の検討過程を見ると不透明な部分が多い。

事業費増加の背景と現状

当初、概算事業費は470億円とされていたが、現在は616億円+αまで膨れ上がっている。この背景には、ここ数年での資材単価や労務単価の全国的な30〜40%の急激な上昇がある。平成30年頃の概算では300億〜400億円程度だったものが、大幅に増加している。さらに、NTT跡地という私有地購入費用も加わり、総事業費を押し上げている。

財政負担の実態

令和5年3月に発表された熊本市の財政中期見通しでは、470億円を前提とした将来負担比率が試算されている。合併推進債を活用する場合で130.5%、活用しない場合で134.3%となる見込みだ。しかし、実際の事業費が約150億円増加することを考えると、この数字は大幅に上振れする可能性が高い。

市の説明では合併推進債を活用した場合の実質的な財政負担は294億円とされているが、これも当初の470億円ベースの試算だ。616億円+αとなった場合、実質負担額は500億円近くまで膨らむ可能性がある。70万人の人口で単純計算すると、市民一人当たり約7万円、5人家族なら35万円もの負担となる。

市民から提起される主な疑問点

建て替えを前提とした議論が先行し、他の可能性についての検討が不十分なまま計画が進められているのではないか。また、市役所DXや時差出勤などの働き方改革による必要面積への影響も、十分に考慮されているのだろうか。市のホームページ上では、もっともらしくFAQに掲載されているが、調べれば調べるほど疑問点が残る。

今後に向けて

合併推進債の活用期限を理由に建て替えを急ぐのではなく、財政規律の観点から慎重な議論が必要ではないだろうか。現時点では、熟議の具体的な内容も、増額の詳細な根拠も丁寧に説明し、他の政令指定都市の建替え事例と比較するなどして、比較材料を提示し説明することでより納得感が得られるはずである。

このような状況では、市民が賛否を判断するのは難しいと言わざるを得ない。

今後の熊本市の財政運営に大きな影響を与える事業だけに、より丁寧な説明と市民との対話が求められる。


参考資料

#熊本市 #熊本市長 #熊本市庁舎 #熊本市庁舎建て替え

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