UX Shizuoka「HCD基礎とオブザベーション ワークショップ」2012年04月14日(土)
4月14日に静岡で行われた、
「UX Shizuoka」に参加してきました。
会場となるCCC静岡クリエイターセンターは、
校舎をリフォームしたクリエイター支援センターで、
ところどころに、校舎のなごりがありなつかしい。
UX Shizuokaスタート
■挨拶
常葉学園大学の安武先生より、UX Shizuoka開催のご挨拶
■スケジュール
13:00 講義
14:15 課題説明・観察スタート(3名)
15:00 シートの清書
15:30 カードソート
16:15 仮説ペルソナ・デザイン画・コンセプトの作成
17:15 プレゼンテーションスタート(1チーム5分)
17:45 プレゼン終了・講評
18:00 終了
講義
▼浅野智先生のご挨拶
UX Shizuoka の初回なので、
まずはUXのブートキャンプ的なオブザベーションを実施します。
今日は、ざっぁーとHCDを俯瞰して、
全体像を理解することが目的です(メンタルモデルの形成)
HCDの全体像を俯瞰するためのワークショップを行います、
アウトプットを重視するワークショップもありますが、
今回はプロセス重視です、
アウトプットのクオリティにはこだわらないが、
必ず時間通りに行ってもらいます。
▼自己紹介
執筆書籍
情報デザインの教室
所属している学会など。
・日本デザイン学会 情報デザイン部会
・ヒューマンインタフェース学会
・人間中心設計推進機構
主催している研究会
・情報デザインフォーラム
・新横浜ユーザビリティ研究会
・Web UX研究会
※いろんな箇所から情報を得ることが大事。
▼はじめに
ここ4~5年間ぐらいでペルソナ/シナリオ法という
マーケティングやデザインの手法が注目されてきた。
→ペルソナ法が流行ったためにHCDが認知されてきた。
ペルソナ単体で実施すると上手くいかないことがある、
HCDの中で行うことが大事。
▼人間中心設計の背景
・21世紀になって、家電にマイコンが入ってきた。
→20世紀の道具は見れば使い方がわかったが、
21世紀の道具は見ても使い方がわからない。
・タッチディスプレイの普及により、無感触のインタフェースの時代になってきている。
・万人に使えるために機能をどんどん追加していく(多機能主義)
みんな勘違いすること「機能が増えたほうが便利になる」
→実際はそんなには使わず、使いにくいデザインになる。
→ノーマンが「誰のためのデザイン?」で、ユーザビリティを提唱した。
▼人間中心設計
・人間とインタラクション(対話的操作)を行う機械 / システムの開発にあたり、
使う人間の立場や視点に立って設計を行うこと。
1999年に国際規格のISO 13407として制定された。
・ISO 13407
→欧州での関税障壁の問題があり、騒動があった。
→ISO 13407は人間工学をベースにした欧州発の国際規格、
日本の企業もJIS規格として対応した。
→アメリカではノーマンらが認知工学をベースにしたユーザ中心設計が、
個人ベースで普及した。
▼HCDプロセス
・人間中心設計の必要性の特定
・利用の状況の把握と明示
・ユーザと組織の要求事項の明示
・設計による解決案の作成
・要求事項に対する設計の評価
※優秀なデザイナーさんはユーザーのことなんて考えないことが多い。
(そうゆう人にはプロトタイプを作ってもらい、実ユーザーでテストしてもらう)
※プロセスはどこから始めてもいいし、逆方向にしてもいい。
▼ISO 9214-210
・2011年の改編(モノからコトへ)
UB → UX
ISO 13407 → 使えないものを使えるようにする
ISO 9241-210 → ユーザーにより良い体験を(UX)
・4章にて「全体的なユーザーエクスペリエンスに取り組む設計」と明確化された。
▼UXとは
ユーザーが製品やサービスの購入、利用、所有などの
一連の体験を通じて感じることができる
「気持ちよく使えた」「嬉しかった」「面白かった」といった、
「ユーザビリティ」よりもさらに大きな概念
▼UX白書
UX白書ではUXを期間で区切り、考え方を整理している。
※大事なのは累積的UX → 長期利用品質
▼ユーザー体験の指向的行動
・目標指向的行動(GOB:Goal-Oriented Behavior)
ゴールを目指すのが楽しい
・プロセス指向的行動(POB:Process-Oriented Behavior)
ゴールを目指しているプロセスが楽しい
・状態指向的行動(SOB:State-Oriented Behavior)
その場で立ち止まることが楽しい
▼ユーザー経験とは
良いユーザー経験には、ユーザビリティがベースにあるという考え方が人間中心設計。
▼ユーザー体験(UX)とは
ノーマンのアフォーダンス。
ノーマンは最初は多機能主義を批判していたが、
「複雑さと共に暮らす」で、多機能でも良いデザインが出来ると考えた。
▼スマートフォンの時代
マサイ族の70%がスマートフォンを持っている
▼モバイルファースト
1. サイト開発をモバイル端末向けから始める
2. 画面サイズや接続スピードなどの制約が多い
3. よりフォーカスしたコンテンツ作り(目的志向)
4. 利用の文脈に応じて使えるように情報を作る
※Webの人は考え方を切り替えないといけない時代になってきた。
※「なんでもできる」から「やりたいことをすぐに出来る」へ
※日本のWeb制作者は12万人、アプリ制作者は65万人。
▼どうやって設計するの?
理想科学はすべてのプリンターを会社に置いて使っている
そのなかでRICHIが一番使われるらしい
→RICHOのプリンターは1画面にすべての機能を入れている。
▼海外では
韓国では家電やサービスのスマート・ホーム化が進んでいる
例:LG電子
Kun-pyo Lee氏が各部門をスマートフォン中心に連携し、
スマート・ホームを実現。
参考リンク
例:サムスン バーチャルスーパー
韓国は忙しい人が多く、買い物に行く暇もない。
デジタルサイネージの写真を携帯で撮ると、
自宅に帰る頃にはその製品が届いている。
http://www.youtube.com/watch?v=oPM4Ui6Sjfk&feature
▼ユーザー調査
フィールドワーク
オブザベーション
インタビュー
※トライアンギュレーション(三角測量)を心がける
▼質的調査の手法
・現地調査
参与観察
オブザベーション
エスノグラフィックインタビュー
・会場調査
アクティングアウト
デプスインタビュー
※一番良いのは参与観察、一番だめなのはデプスインタビュー(人に聞くこと)
例:飲み会の場所を探すときに、ネットで探すか、現地の人の言うことを聞くか。
(普段いつもやっていることなのに、仕事だとやらないw)
▼インタビューのポイント
・ユーザーは自分が何に困っているかわからないし、言語化もできない。
だから観察する。
・インタビューは一番最悪な方法www (人は嘘をつく)
▼なぜ非構造化インタビューをするのか
マーケティングの大きな誤り
・アンケート(定量調査)をとれば真実が分かる。
・生活者は自らの思考プロセスと行動を容易に説明することが出来る。
・生活者を取り巻く文化や社会は、個々に独立した事象として
調査することが可能である。
※スマートフォンはユーザーの利用状況(文脈)にあってないと使えない、
ユーザーの文脈にあったデザインをしないといけないが、
ユーザーの文脈をインタビューのみで理解することは難しい。
※ペルソナを作る時に「インタビューしろ!」とよく言われるが、
ユーザーは嘘をつくので、それはちょっと違う。
▼(行動観察)エスノグラフィ
・小泉八雲
→島根県松江に在住しながら日本の文化を海外へ紹介した。
・イザベラ・バード
→朝鮮紀行
・シカゴ学派のスラム街の都市エスノグラフィ
・暴走族のエスノグラフィー(佐藤 郁哉さん)
最初は少年院でインタビューしたが、みんな嘘をつくので、
エスノグラフィを行った。
▼プロトタイピング
あえてラフにモックを作って、なんどもやり直す。
RICHO GRも最初は段ボールのモックだった。
▼ユーザー評価手法
・エキスパートレビュー(ヒューリスティック評価)
・認知的ウォークスルー法
・ユーザビリティテスト(プロトコル分析)
・長期観察
▼プロトコル分析
行動データと発話データを統合して分析
→非常に効果がある。
→行動データでエラー個所、発話で改善のヒントを得る。
▼まとめ
・HCDプロセスはソフトウェア開発やWeb開発に効果がある
・手戻りが少なくなり、今までなかったユーザーニーズが見えてくる。
・新人教育に良い
・ただし、HCDを導入したからといって上司やクライアントに評価されることはないし、
コストも出ない
・成果は上がるのだから、さっさとやったほうがいい。
・調査は大変だが、一回やれば知見が蓄積される。
オブザベーション ワークショップ
■14:15
課題説明・観察スタート
参加者をA〜Eの5チームにチーム分け、
僕はCチームで、勝又さん、高田さん、斉藤さん、國持さんとの5人チーム。
ゼリーを食べるところを観察し、
それを分析して、新しいパッケージをデザインします
5人チームのうち、3人ゼリーを食べる人を決めますが、
あんまりゼリーを食べることの少ない、
斉藤さん、國持さん、勝又さんに食べていただき、
残りの1人がモデレータ、
残りの3人が記述者になりました。
記述者は3人いるので、
「行動データと発話データをざっくり記載する人」
「行動データだけしっかり記載する人」
「発話データだけしっかり記載する人」
と分担して作業を進めます。
人前でモノを食べるって緊張しますよねー。
各チームには、
常葉学園の生徒さんが、
ドキュメンテーションスタッフとして、
チームの進行状況を可視化していきます。
■15:00
シートの清書
ざっくりと記載した観察シートを、
確認しながら、1枚のシートに清書していきます、
行動や発話に問題点が潜んでいる可能性があるため、
シートには作業ステップ・行動・発話を出来るだけ細かく記載します。
この段階で、
気づいた問題点や課題についても、
チームでブレストしたり、
シートに記載したりします。
教室の外の壁では、
着々とリアルタイムドキュメンテーションが作成されています。
安武先生のご指導中
■15:30
カードソート
清書したシートを見ながら、
「作業ステップ」「改善案」「問題点」「様々な事象」に分けて、
壁の模造紙にカードソートを行って行きます。
最初は、清書したシートの「作業ステップ」をそのままカード化していましたが、
浅野先生より「作業ステップは3つぐらいにざっくりとわける」とご指導をいただき、
(1)食べる準備
(2)食べる
(3)ゴミをすてる
という3ステップでカードソートを修正。
■16:15
仮説ペルソナ・デザイン画・コンセプトの作成
カードソートしつつ、改善案を考えますが、
時間もないので、
絵が上手いひとがペルソナを作成。
ペルソナを確認
みんなでアイデア検討
この時点で、
「フタを綺麗に取りたい、机を汚したくない」
「綺麗に食べたい」
「ゴミを捨てるときも汚したくない」
という3つの問題にまとまり、
フタを取るのではなく、
フタを捻ってあける→フタが皿として置ける
というアイデアが固まり、
いそいで、可視化していきます。
ここのチームはなにやら、
浅野先生の特別講義になっている。
■17:15
プレゼンテーションスタート(1チーム5分)
時間になったので、
Aチームからプレゼン。
チームのプレゼンの後には、
ドキュメンテーション担当者からのフィードバックが。
結構クリティカルにフィードバックを返してくれてます(笑)
Bチーム
Cチーム(自分たちのグループ)
▼浅野先生のコメント
・観察から飛んだアイデアになってしまうのはNG
・仮想ペルソナは自分と違うものにしないとダメ、
あえて、離れた属性に設定することもある。
自分と近いと失敗することがある。
・ダーティプロトタイプで作成する。
→あえてざっくりと書く(絵心があっても)
絵がうまいとごまかされてしまう。
・問題解決にばかりポイントを絞ると、
魅力的でない商品になることがある
→魅力=UX
▼ドキュメンテーションスタッフからのコメント
→iPadで録画していたのに、それを活用していない。
→ペルソナの元になった女子がアイデアだしに参加していなかった。
Dチーム
Eチーム
最後に、
ワークショップ全体のドキュメンテーションチームからの講評
■18:00
終了
終了時刻を15分ほどオーバーしていたので、
いそいで撤収
懇親会
懇親会は駅近くの「ひょうたんや」
静岡おでん
静岡おでんといえば黒はんぺん
安武先生、お疲れさまでした。
お疲れさまでしたー。
二次会
二次会は静岡を代表するB級グルメの静岡おでんを食べる為に、
おでん街の「愛ちゃん」へ
Maxで10人しか入らず、
2組に分かれることに・・・
初回のUX Shizuokaはすごく楽しいワークショップでした、
次回は5月26日の予定ということなので、
スケジュール次第でまた参加したいですね。
明日は、
のんびりしつつ、
静岡グルメを堪能する予定です。
関連リンク
情報デザイン研究室: UX静岡 HCD概論とオブザベーションワークショップ
情報デザイン研究室: 怪しい路地好き(静岡青葉おでん街)
やまのさかだち。: UX Shizuoka『HCD基礎とオブザベーションワークショップ』
emptyhouse: UX Shizuokaに参加してきました。
当日のツイート: [UX Shizuoka] HCD基礎とオブザベーション ワークショップ